【財政】予算編成ができない!コロナによる税収減とその対策(事例研究)

<概要>

●各地でコロナにより2020〜2021年の税収が大幅に減少の見通し

●都道府県の財政調整基金は3分の1に激減

●地方交付税も財源不足で、同額の維持が焦点

●コロナ収束が不透明なため2通りの予算原案を作成する自治体

●「コロナ対策緊急シフト」の予算編成方針

●不要不急の事業を先送りしてコロナ対策の財源を捻出

<チェックポイント>

●税収減の見通し

●各種基金の残高

●来年度の予算編成方針

●財源捻出のための事業見直し

<掲載事例>

●大阪府

●神奈川県相模原市、静岡県静岡市

●大分県大分市

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各地でコロナにより税収が大幅に減少の見通し
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・全国各地でコロナにより、法人住民税をはじめとする2020年度と2021年度の税収が大幅に減る見込み。

・神奈川県は2021年度の予算編成にあたり、1100億円の財源不足を見込む危機的な状況。

・リーマン時の1000億円の財源不足は職員削減や県有地売却で乗り越えたが、今回は財源を生み出す余地がない。

・川崎市は2021年度に307億円の収支不足となる見通しで、減債基金からの新規借り入れなどで対応する予定。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64617100V01C20A0L82000/

・兵庫県は2020年度の県税収入が当初の見込みより1000億円以上減り、2021年度もさらに減る見込み。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202009/0013723011.shtml

・大阪市は2021年度の市税収入が今年度当初予算に比べ、500億円減少するとの見通し。

・大阪メトロもコロナで業績が悪化しており、市は来年度の配当を無配と予測。

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200910/mca2009100630008-n1.htm

・埼玉県新座市は2020年10月1日、市制施行以来初めての「財政非常事態宣言」を発令。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2c7d3860a73676f5add55232bcae146d59274d2b

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財政調整基金も底をつき、国の財政支援が頼り
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●都道府県の財政調整基金は3分の1に激減

・2019年度末に計1兆9160億円だった47都道府県の財政調整基金は、20年9月末に65.5%減の6601億円まで激減。

・取り崩した1兆2559億円のうち、1兆318億円がコロナ対策によるものだった。

・コロナ対策には国の地方創生臨時交付金を充てられるが、地方は交付金を活用した上で基金を取り崩している。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/62705

・コロナ基金を新設した埼玉県や、庁舎建て替え基金を転用した岐阜県も、原資は借り入れで賄っている。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/62711

●地方交付税も財源不足で、同額の維持が焦点

・総務省は2021年度予算案の概算要求で、地方交付税については今年度と同程度の16兆2000億円を要求。

・地方交付税の財源となる所得税や法人税が落ち込むことから、総務省はこれを補う2兆1000億円の特例加算を求めている。

・一方で地方の税収は2020年度より3兆6000億円減ると見込んでおり、臨時財政対策債で対応する方針。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201005/k10012648241000.html?utm_int=news-politics_contents_list-items_001

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2通りの予算案など、自治体の予算編成の工夫
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●コロナ収束が不透明なため2通りの予算原案を作成(大分県大分市)

・コロナ収束を想定した2020年度と同額の予算と、コロナ対策を優先するための緊縮予算の2通りを作成。

・2案目は不要不急の事業先送りを想定し、重点政策経費と部局裁量経費の合計額(一般財源)の10%を削減。

・一般財源1207億円のうち義務的経費750億円を除いた457億円の10%をコロナ対策に充てる。

http://www.city.oita.oita.jp/o032/shisejoho/kekakuzaise/documents/r3yoosannhennseihousinnpoint.pdf

●2021年度限定の「コロナ対策緊急シフト」を策定(神奈川県相模原市)

・市税収入の減少が見込まれるなか、事業を見直して財源の再分配を進める「コロナ対策緊急シフト」を策定。

・コロナ関連以外の新規・拡充事業は原則として一時凍結し、2021年度に策定予定の部門別計画も見送り。

・毎年定例的に実施している事業も、一時凍結や見直し・廃止を検討。

https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/019/191/10/1015.pdf

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事業見直しでコロナ対策の財源を確保する自治体
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●不要不急の事業を先送りして財源をコロナ対策にシフト(大阪府)

・コロナ対策を重点的に行うため、以下5項目の事業は原則として見直し。

①3密対策に課題があり感染リスクが高い事業
②社会経済情勢などコロナで事業実施の前提が崩れた事業
③関係機関の動向で事業実施が困難な事業
④府庁の業務改善のうち緊急を要しない事業
⑤その他スケジュール変更が可能な事業

・見直しの結果、447事業の1050億円をコロナ対策にシフト。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/38639/00000000/1_zentai_9gatsu.pdf

●庁舎移転や文化施設の整備を凍結(静岡県静岡市)

・市長の肝いり事業である清水庁舎の移転と海洋文化施設の整備を凍結。

・コロナ対策を優先することや民間事業者の参入が消極的であることが理由。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c5d6e7615846e0e040d422656fe03c77e719867f

・一時は1億円にまで減った財政調整基金も、決算剰余金の積み立てなどで47億円まで回復。

https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/803908.html

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チェックポイント詳細
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●税収減の見通し

・2020年度の税収は、当初予算からどれだけ減る見通しか。

・2021年度予算編成では、税収をいくらで見積もっているか。

●各種基金の残高

・コロナ対策で財政調整基金はどれだけ減ったか。

・コロナ基金その他の特定目的基金をどれだけ使ったか。

・基金残高を回復させる手立てをどのように考えているか。

●来年度の予算編成方針

・コロナ対策の事業費総額をいくらと見積もっているか。

・コロナの収束度合いに合わせて、複数の予算案が必要ではないか。

●財源捻出のための事業見直し

・実施が困難な事業や前提が崩れた事業は全て見直すべきではないか。

・不要不急の事業や先送り可能な事業はどれだけあるか。

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さらなる調査のためのリンク集
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【財政】コロナ対策で自治体の財政調整基金が減少!将来見通しとの兼ね合いは?(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5736/

総務省の予算概算要求
https://www.soumu.go.jp/main_content/000709069.pdf

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