【総務】自治体の職場におけるハラスメントを防ぐ条例やマニュアル(政策アイディア)

<概要>

●自治体のハラスメント対策の取り組みは道半ば

●人事院は、職場の勤務環境改善の一環としてハラスメント対策

●他の関係省庁でも、ハラスメント対策を検討

●ハラスメントを防止する条例を定めた自治体

●指針やマニュアルを策定して防止に努める事例

<チェックポイント>

●ハラスメントに関する調査・相談

●具体的なハラスメント対策

●特別職によるハラスメントに踏み込む

<掲載事例>

●大阪府

●神奈川県大和市、宮城県多賀城市、岐阜県可児市

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自治体のハラスメント対策の取り組みは道半ば
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●総務省は、地方公共団体におけるハラスメント対策について調査

・2021年の調査では、都道府県や指定都市では全団体で措置が講じられている一方、市区町村においては必要な措置が講じられていない団体がいまだに多く見られる。

・市区町村において、措置義務を全て履行しているのは、パワハラが66.7%、セクハラが70.7%、妊娠出産等に関するハラスメントが57.1%であった。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000791214.pdf
(4ページ)

●労働組合は、ハラスメントへの取り組みのガイドラインを作成

・労働組合の連合は、2019年に成立した「ハラスメント対策関連法」を受けて、職場に活かす取り組みガイドラインを作成した。

・ハラスメントの定義や、事業主・労働者の責務を定め、防止措置を提起している。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/gender/data/harassment/rengo_guideline_202003.pdf?64

・全日本自治団体労働組合は、職場でのパワハラ対策が事業主の義務になったことを受け、良好な職場を目指す予防・解決マニュアルを策定した。

・職場のパワハラ6類型の判断基準を例示し、パワハラの防止・事前対策に取り組めるよう、ガイドラインを条文で例示している。

・対応・解決に向けて、相談や証拠の確保、事実関係の確認など、適切な対応方法について指導している。

https://www.jichiro.gr.jp/doc/pawahara/pawaharakanrenshiryou-manual.pdf
(3ページ)

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関係省庁によるハラスメント対策
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●人事院は、職場の勤務環境改善の一環としてハラスメント対策

・人事院は、公務員の勤務環境の整備を進めており、ハラスメントの防止に努めている。

・人事院規則に定める、セクハラ、パワハラ、妊娠・出産・育児または介護に関するハラスメントについて解説し、動画やリーフレットを作成。

・ハラスメントに対する秘密厳守の相談機関として、各府省の苦情相談員・各府省の人事当局・人事院の苦情相談とこころの健康相談を紹介している。

https://www.jinji.go.jp/sekuhara/toppage.html

・毎年12月4日~10日までを「国家公務員ハラスメント予防週間」と定め、防止対策を推進している。

・公務職場で起き得るパワハラを動画で紹介するとともに、全国でハラスメント防止講演会を実施している。

https://www.jinji.go.jp/sekuhara/homu3.html

●他の関係省庁でも、ハラスメント対策を検討

・内閣府に設置されている男女共同参画局は、毎年、男女共同参画白書を発行している。

・雇用分野における各種ハラスメントの防止、女性に対する暴力となるセクハラの防止、メディア分野におけるセクハラ対策など、ハラスメント対策が講じられている。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/index.html

・法務省は、「女性の人権ホットライン」を設置し、職場でのいじめやセクハラ、パートナーからの暴力、ストーカーなどの相談に対応している。

https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken108.html

・厚生労働省は、「NOハラスメント あかるい職場応援団」ポータルサイトを設置し、ハラスメントを受けた側・管理職側・発生した場合の人事担当の対応について、それぞれ解説している。

・パワハラ対策導入マニュアル、研修資料、テキスト、ポスター、社内アンケート例などをダウンロードできる。

https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

・総合労働相談コーナー、法テラス、みんなの人権110番、ハラスメント悩み相談室、その他公務員・教員の相談先などを紹介している。

https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/inquiry-counter

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ハラスメントを防止する条例を定めた自治体
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●住民から議員・立候補者らに対する「票ハラ」を防ぐ条例(大阪府)

・大阪府議会は2023年2月、地方議員らの政治活動や選挙運動に対するハラスメントを防ぐため「大阪府内の地方議会における府民の政治参画の推進に関する条例」を可決。

・議員や立候補者らが投票の見返りに有権者から不当な要求を受ける「票ハラスメント」を防ぐのが狙いで、全国では福岡県議会に続いて2例目。

・府議や議会事務局職員らを対象に研修を実施し、弁護士ら専門家による相談窓口を設置する。

・ハラスメントをした人には必要に応じて議長が注意喚起をし、さらに再発防止勧告、調査結果の公表といった措置を定めている。

https://mainichi.jp/articles/20230222/k00/00m/010/290000c

・大阪府内の全ての地方議会から票ハラを無くすことを目的としているため、市町村議会からの意見を聴取した。

・政治家によるハラスメントも対象にすべき、議員の家族に対するハラスメントも対象にすべき、首長の扱いを明確にすべき、などの意見が寄せられた。

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/43255/00444641/ikensyoukai.pdf

●市長・副市長のパワハラがきっかけとなった「ハラスメント防止条例」(神奈川県大和市)

・大和市議会は、2021年に任期途中で辞職した副市長をめぐるパワハラ疑惑について、調査特別委員会を設置して調査を行った。

・1年間に渡る調査の結果、「市長・副市長のパワーハラスメントと思われる傾向により、長期間にわたり職場環境が著しく悪化している」と結論づけた。

https://www.city.yamato.lg.jp/material/files/group/59/220609keika.pdf

・大和市議会は、市長に対する問責決議と、「ハラスメント防止条例」を可決した。

https://www.city.yamato.lg.jp/material/files/group/59/0412iinkaiteishutugian.pdf

・条例には、第三者によるハラスメント相談窓口や、適切な処理・解決に向けた審議を行う「大和市ハラスメント対策委員会」の設置などが盛り込まれた。

・ハラスメントの事実が確認された場合、市長・副市長・教育長・議員の公表、職員の懲戒処分といった対応措置も明記された。

https://www.townnews.co.jp/0401/2022/08/26/639431.html

・市長は問責決議に対して強く批判したため、大和市議会はさらに辞職勧告決議案を賛成多数で可決した。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/221411

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指針やマニュアルを策定して防止に努める事例
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●ハラスメント防止とコンプライアンス推進の指針(宮城県多賀城市)

・多賀城市は2020年に「多賀城市ハラスメント防止指針」を策定し、全ての職員が互いに尊重し合い、健康で安心して働く環境を目指している。

・各ハラスメントについて、定義・判断基準・ハラスメントになり得る言動を提示している。

・懲戒処分について標準例を示し、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断する。

https://www.city.tagajo.miyagi.jp/jinji/shise/shisaku/kekaku/documents/harasumentobousisisin.pdf

・同時に、コンプライアンスに関する重要な事項を取りまとめ、職員が常に意識すべき事項として、コンプライアンス推進指針を策定した。

・コンプライアンス推進の中に、ハラスメントの防止も含まれており、許されない行為であることを認識するよう求めている。

https://www.city.tagajo.miyagi.jp/jinji/shise/shisaku/kekaku/documents/konnpuraiannsusisin.pdf
(1~2、12~14ページ)

●セクハラ防止宣言と、ハラスメント予防・対応マニュアル(岐阜県可児市)

・可児市は、2011年から組織としてセクハラを許さないマニュアルを作成しており、2018年からはパワハラを含めたハラスメント全体のマニュアルに改定した。

https://www.city.kani.lg.jp/3061.htm

・可児市長は、2011年2月7日、セクシュアルハラスメント防止宣言を発し、全職員でセクハラを許さない環境を作って防止するよう呼び掛けている。

・ハラスメントが発生すると、職場での信頼関係が築けない・職場環境の悪化による士気の低下・市民の信頼喪失など、損失は大きいとしている。

https://www.city.kani.lg.jp/secure/4506/bousisengen.pdf

・ハラスメント予防・対応マニュアルでは、ハラスメントの概念や類型、社会の動向、問題点などを説明している。

・違反行為ごとの懲戒処分の種類、ハラスメントを受けた際の対処、相談体制等について解説している。

・ハラスメントになるかどうかセルフチェックできるよう、具体的な事例を挙げたシートを作成している。

https://www.city.kani.lg.jp/secure/4506/H30.3_harassmentmanual.pdf

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チェックポイント詳細
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●ハラスメントに関する調査・相談

・職員に、ハラスメントに関するアンケート・調査を行っているか。

・職員がハラスメントの相談をできる窓口を設置しているか。

・ハラスメントを相談・報告した職員の身分を守る制度は整っているか。

・必要に応じて専門家によるハラスメント対策委員会を設置できるよう、規則を整備してはどうか。

●具体的なハラスメント対策

・ハラスメントの事例等について、職員に研修や周知をしているか。

・ハラスメントを防止するための指針や方針を策定しているか。

・ハラスメントが発生した時の対処や処分などのマニュアルはできているか。

・ハラスメントを防止するための条例を制定してはどうか。

●特別職によるハラスメントに踏み込む

・議員や候補予定者等に対する「票ハラ」について、対策をとっているか。

・首長・議員など特別職が行うパワハラについて、対策をとっているか。

・首長・議員など特別職に対してハラスメント研修を行っているか。

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さらなる調査のためのリンク集
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女性・若者等に対する障壁の除去・ハラスメント防止(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000856251.pdf

公務員のハラスメントの実態とその対策(公務員情報発信ブログ)
https://p-servant.com/harassment/

【労働】カスタマーハラスメントから従業員、自治体職員を守る(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/6961/

【労働】中小企業も「パワハラ防止対策」義務化!企業・自治体のハラスメント対策(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/6460/

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