【健康】IR誘致を控えた、国と自治体のギャンブル依存症対策(政策アイデア)

<概要>

●ギャンブル等依存症対策基本法が制定される

●各省庁のギャンブル等依存症に対する施策

●大阪府は全国初のギャンブル等依存症対策基本条例を制定

●都道府県は依存症対策推進計画を策定して啓発

●啓発や改善の取り組みを支援する自治体の事例

<チェックポイント>

●ギャンブル依存症についての調査

●対策や計画を立てているか

●自治体としてできることは何か

<掲載事例>

●大阪府、埼玉県、長崎県

●神奈川県横浜市

●岡山県岡山市、北海道苫小牧市

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政府のギャンブル依存症対策
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●ギャンブル等依存症対策基本法が制定される

・2018年、国民の健全な生活の確保と、安心して暮らすことのできる社会の実現を目指し、ギャンブル等依存症基本法が制定された。

・政府は対策推進基本計画を策定する義務を負い、都道府県は対策推進計画を策定する努力義務を負う。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambletou_izonsho/dai1/sankou2.pdf

・国は、依存症対策全国拠点機関を設置・運営し、指導者の養成や研修などを行うとともに、全国の専門医療機関や相談拠点等に情報発信を行う。

・国は、民間団体や自助グループ等を支援し、相談支援や普及啓発の充実を図る。

・都道府県と指定都市は、依存症対策総合支援事業として、専門医療機関の選定・相談拠点の設置・自助グループ等への補助を行い、医療の提供・支援などを行う。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000371108.pdf
(4ページ)

●各省庁のギャンブル等依存症に対する施策

・厚生労働省は、基本法に定められた事業を実施するとともに、依存症全般に関わる対策の推進を行っている。

・2023年度予算案では以下を計上している。
1. 地域における依存症の支援体制の整備
2. 依存症民間団体の支援
3. 全国拠点機関における医療・支援体制の整備
4. 依存症に関する調査研究の実施
5. 依存症に関する普及啓発の実施
6. アルコール・薬物・ギャンブル等の民間団体支援

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001052942.pdf

・内閣府は、ギャンブル等依存症対策推進本部を運営し、基本計画を策定し、推進本部と関係者会議を設置している。

・2017年の全国調査では、ギャンブル等依存が疑われる者は約0.8%いると推計している。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambletou_izonsho/setsumeikai/dai1/siryou1.pdf
(2、11~22ページ)

・消費者庁は、ギャンブル依存症に対する注意喚起と普及啓発を行い、相談への対応マニュアルを提供し、相談窓口を紹介している。

・地方公共団体等の取り組みの紹介や、競技施行者におけるアクセス制限の取り組みを勧めている。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_012/

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全国初のギャンブル等依存症対策基本条例
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・大阪府と大阪市は、カジノを含む統合型リゾート(IR)を、2029年に夢州で開業することを目指している。

・2022年5月、ギャンブル依存症対策に取り組む条例案が議員提案されたが、議会で否決された。

・2022年10月、知事をトップにした推進本部の設置や財源確保のための基金を創設する内容を加えた条例案が提出され、賛成多数で可決された。

https://www.ktv.jp/news/feature/221026-2/

・大阪府はこれに先立つ2020年3月に「大阪府ギャンブル等依存症対策推進計画」を策定し、第2期計画を2023年3月に策定した。

https://www.pref.osaka.lg.jp/chikikansen/gambletou/

・大阪府は、ギャンブル等の問題で困っている人を対象に、回復プログラム「O-GAT」をグループで実施し、具体的な対処方法を提供していく。

https://www.pref.osaka.lg.jp/kokoronokenko/soudan3/kaihuku-g.html

・ギャンブル等の問題で困っている家族向けの依存症家族サポートプログラムを創設し、本人への対応や家族が元気になる方法を学ぶ事業を実施する。

https://www.pref.osaka.lg.jp/kokoronokenko/soudan3/kazoku-g.html

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都道府県は依存症対策推進計画を策定して啓発
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●立ち直りたい人を支援するため、夜間ミーティングを開催(長崎県)

・長崎県は、2020年にギャンブル等依存症対策推進計画を策定した。

・推進計画をもとに、ギャンブル等の問題に対する意識や行動傾向の調査を行い、結果を公表している。

https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/hukushi-hoken/izonsyou-taisaku/izonshou/g-izon/

・各種依存症への対策として、相談窓口や専門医療機関・依存症治療拠点機関を紹介している。

https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/hukushi-hoken/gosodanmadoguchi/seishinhoken-keno/izonnsyou/

・精神障害をはじめとしたこころの悩みを抱えている方々のために、各ジャンルのセルフヘルプグループをリストアップし、紹介している。

https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/hukushi-hoken/shogaisha/seishinshien/selfhelpgroup/

・ギャンブル等依存症に対しては、佐世保市中央保健福祉センターで夜間ミーティングを開催している。

・依存症の本人や家族等が一同に集い、体験を語り合い、自らの生き方を見つめ直す機会を提供している。

https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2021/04/1618826603.pdf

●セルフチェックを提案し、積極的な情報提供(埼玉県)

・埼玉県は、2022年に依存症対策推進計画を策定した。

・第1期計画は2年間とし、2024年以降は県の地域保健医療計画と合わせて6年間の次期計画を作る予定。

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0705/izonsho/sougoukeikaku.html

・ギャンブル等依存症のセルフチェック「LOST」を掲載し、相談を勧めている。

・予算や時間の制限を決めない(Limitless)、勝ち分を次につぎ込む(Once again)、人に隠す(Secret)、すぐに取り返そうとする(Take money back)のうち、
2項目以上当てはまる場合、依存症の可能性がある。

・相談窓口、治療機関、相談会、民間団体等を紹介している。

・Twitter公式アカウント「埼玉県こころの支援」において、依存症対策などの情報を随時発信している。

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0705/gyanburu-taisaku.html

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啓発や改善の取り組みを支援する自治体の事例
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●依存症関連問題に取り組む民間団体を支援(神奈川県横浜市)

・横浜市は、2021年に策定した依存症対策地域支援計画を基に、総合的に支援策を展開している。

・2019年から依存症社会資源調査や、回復支援施設・事業者へのヒアリングなど現場調査を重ねてきた。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/kokoro/izonsho/izonsyou.html

・ギャンブル依存症だけでなく、アルコール・薬物・インターネットの依存症について、それぞれリスクチェックのセルフ診断ができる。

https://cgi.city.yokohama.lg.jp/kenkou/izoncheck/

・依存症に関する問題の改善に取り組む民間団体の活動に対し、補助金を交付している。

・対象は、アルコール関連、薬物問題、ギャンブル等依存症とし、かかる指定の経費の1/2を補助している。

・2019年度の4団体7事業から始まり、2020年度は7団体11事業、2021年は7団体13事業と拡大している。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/kokoro/izonsho/shiensya/dantai/hojyokin_R4.html

●独自の依存症回復支援プログラムを実施(岡山県岡山市)

・岡山市は、webサイトにギャンブル依存症対策のページを設け、チェック項目を掲載し、ギャンブル依存症からの回復について紹介している。

・こころの健康センターでは、岡山市ギャンブル障害回復トレーニングプログラム(OCAT-G)を提供している。

・自分のギャンブル問題の整理・ギャンブル障がいの理解・ギャンブル再開防止に向けた具体的対処と今後への備えについて、ワークブックを用いて学ぶ。

https://www.city.okayama.jp/kurashi/0000004226.html

・ギャンブルの楽しみ方を改めたいと考えている本人が、1回2時間、全5回のプログラムに参加し、ギャンブルに頼らない生活について一緒に考えるプログラムになっている。

https://www.city.okayama.jp/kurashi/cmsfiles/contents/0000004/4226/tirasi.pdf

●ギャンブル等依存問題に対する予防と啓発のガイドブック(北海道苫小牧市)

・苫小牧市は、ギャンブル等依存に関する問題や予防方法について、市民に正しい理解を深めるため、問題予防・啓発ガイドを作成した。

・まずは相談することが解決の近道として、市と道の相談窓口を紹介している。

https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kenko/iryo/boshikenko/mindandbody/gamblingaddiction.html

・ガイドでは、ギャンブル等依存によって起きる問題や危険性について啓発している。

・チェックリストを掲載し、9問中4項目以上当てはまると遊びの範疇を超えて問題が生じている可能性があるとしている。

・問題が起きないように、正しい知識を持つこと、遊び方を工夫すること、遊ぶ前に確認することを紹介している。

https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/files/00049300/00049322/yobo_kehatsu_guide.pdf

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チェックポイント詳細
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●ギャンブル依存症についての調査

・地域にある自助グループや医療機関について把握しているか。

・事業者や依存症治療受診者へのヒアリングやアンケートを行ってはどうか。

・専門家などによる対策会議や現状把握が行われているか。

●対策や計画を立てているか

・ギャンブル等依存症に対して、対策推進基本計画を策定してはどうか。

・ギャンブル等依存症対策基本条例を制定してはどうか。

・ギャンブル等依存症に対する、対策推進本部や対策推進会議を設置してはどうか。

●自治体としてできることは何か

・適切な情報提供と、提供体制は整っているか。

・相談できる機関の確保や、相談体制は整っているか。

・自助グループや治療の専門機関と連携する体制を構築しているか。

・依存症からの回復プログラムを作成して提供できないか。

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さらなる調査のためのリンク集
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地方公共団体の消費者行政部局におけるギャンブル等依存症対策(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_012/pdf/caution_012_190827_0001.pdf

ギャンブル依存症ってどんな病気?(依存症対策全国センター)
https://www.ncasa-japan.jp/understand/gambling/about

IRにおけるギャンブル等依存症対策(あずさ監査法人)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/5/6/2/2/7/1/1/_/seminarizon.pdf

【健康】コロナ禍でアルコール依存が増加、民間と連携した啓発や依存症対策(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/6834/

【市民】自治体のLINE活用(1)「親子のための相談LINE」など自治体の相談事業(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/7073/

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