<概要>
●「同性婚を認めないのは憲法14条に違反する差別」との地裁判決
●世界では欧米中心に30カ国、国内世論では65%が同性婚を容認
●裁判では、同性カップルが結婚の法的利益を受けられないことが違憲とされた
●自治体では同性カップルを認める「パートナーシップ制度」が広がる
●同性カップルの自治体職員に、法律婚と同等の福利厚生を認める事例
<チェックポイント>
●性的少数者に対する取り組み
●同性パートナーに対する取り組み
●自治体職員の休暇や福利厚生
<掲載事例>
●東京都渋谷区、東京都国立市、東京都豊島区
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「同性婚を認めないのは憲法違反」との地裁判決
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●札幌地裁が同性婚について初の判断
・2021年3月17日、札幌地裁は「同性婚を認めないのは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」との初判断を示した。
・裁判長は判決理由で「同性カップルに婚姻で生じる法的効果の一部すら与えないのは立法府の裁量権を超え差別に当たる」と指摘。
・一方で、立法措置を国が怠ったかについては、「国家賠償法上、違法とは言えない」と原告側の賠償請求を棄却した。
https://this.kiji.is/744742716853256192?c=39546741839462401
●同性婚の容認が国内外の潮流になるか
・メディアや有識者は賛否両論で、「同性婚には社会の幅広い同意が不可欠、伝統や国民感情を含めて慎重に議論すべき」との社説も。
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210319-OYT1T50281/
・しかし、社会の同意や国民感情の面では、「同性婚を認めるべき」が65%と6年前の調査より大幅に増加。
https://www.asahi.com/articles/ASP3P7DSCP3MUZPS003.html
・同性婚は欧米を中心に世界30カ国で法的に認められており、G7(先進7カ国)の中で唯一日本だけが認めていない。
・他方で、アジアでは台湾だけが同性婚を法制化していて、中東やアフリカ、ロシアなどでは禁止されている。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031700908
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同性婚訴訟の争点と、違憲判決のポイント
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●同性婚訴訟の争点
・「結婚は両性の合意のみに基づいて成立」という憲法24条は、同性婚を禁止しているのか?認めるべきとしているのか?
・異性婚はできるのに同性婚ができない現状は、「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反した差別なのか?
・現状が憲法違反である場合、違憲状態を放置している国に賠償責任があるか?
https://www.huffingtonpost.jp/entry/same-sex-marriage-law-suits-japan_jp_604dc07cc5b636ed337b10ca
●違憲判決のポイント
・結婚によって夫婦関係や親族関係が生まれ、相続や税制優遇など様々な法律上の利益が受けられる。
・自分の意思では変えられない性的指向によって、同性カップルがその利益を受けられないのは、憲法14条違反の差別に当たる。
・同性婚を想定していない憲法24条違反ではないが、憲法24条は同性カップルへの法的保護を否定する理由にはならない。
・国内外で同性婚を容認する声が高まってきたのは最近なので、国が法改正をしていないことは違法ではなく、賠償責任はない。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6051715cc5b6f2f91a2d567e
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自治体や企業で広がるパートナーシップ制度
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・同性のカップルを「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体が増えている。
・2020年9月時点でパートナーシップ制度を導入したのは全国59自治体で、合計1301組のカップルが自治体から証明書などの発行を受けた。
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00860/
・しかし、パートナーシップ制度では扶養手当や健康保険などの不平等は埋まらず、パートナーの病状説明や相続も受けられない。
https://www.asahi.com/articles/ASP3H5R1LP3HIIPE01F.html
・また、パートナーシップ制度を導入している自治体でも、災害時や避難所における対応は未整備。
・企業では11%が性的少数者に配慮する取り組みを行っており、そのうち16%が同性パートナーに慶弔休暇を適用している。
https://www.mhlw.go.jp/content/000625161.pdf
(219、221ページ)
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同性パートナーや性的少数者を支援する自治体の取り組み
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●公正証書によるパートナーシップ制度(東京都渋谷区)
・「違いを力に変える街」を掲げる東京都渋谷区は、2015年に全国で初めてパートナーシップ証明の交付を開始。
・信頼性の高い公正証書で、任意後見や共同生活の責任と義務を合意した上で、区から
パートナーシップ証明が発行される。
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/assets/detail/files/est_oowada_pdf_partnership2017c.pdf
・2020年11月からは、公正証書の費用を最大5万円まで補助。
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/koho/hodo/partnership.html
・区役所の職員は、パートナーシップ証明があれば慶弔休暇と介護休暇も取得できる。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/shibuya-official-partnership_jp_5d998095e4b099389800fff7
●条例で法律婚と同等の休暇や福利厚生を認める(東京都国立市)
・東京都国立市は、2021年4月から性的少数者や事実婚のカップルを認証するパートナーシップ制度を導入。
・職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例も改正して、特定のパートナーがいる職員に、法律婚と同等の休暇や福利厚生制度の利用を認める。
・結婚休暇のほか、出産支援休暇や育児参加休暇などの制度を適用、扶養手当や職員死亡時の死亡退職金手当も支給する。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/93578
・具体的には、「婚姻の届出をしていないが、当該職員とパートナーシップの関係にある者」を条例の「配偶者等」に含めた。
https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/69/gian_3_0008.pdf
●同性パートナーのいる区職員に7つの休暇制度(東京都豊島区)
・東京都豊島区では、2017年に職員互助会が同性パートナー職員への給付金を創設。
・2019年には男女共同参画推進条例を改正してパートナーシップ制度を実施。
・2020年4月からは同性パートナーの区職員に、慶弔休暇、出産支援休暇、育児参加休暇、子の看護休暇、介護休暇など7つの休暇を付与。
https://www.city.toshima.lg.jp/013/kuse/koho/hodo/r0204/2004031340.html
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チェックポイント詳細
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●性的少数者に対する取り組み
・自治体として性的少数者にどのような配慮や支援を行っているか。
・性的少数者への配慮や支援を計画に位置付けているか。
・災害時や避難所における配慮も必要ではないか。
●同性パートナーに対する取り組み
・同性パートナーシップ制度の導入を検討してはどうか。
・同性パートナーを法律婚と同等に扱える場面がどれだけあるか。
●自治体職員の休暇や福利厚生
・同性パートナーを有する自治体職員に法律婚と同等の福利厚生や休暇があるか。
・事実婚や同性パートナーも福利厚生では法律婚と同等に扱う条例改正を検討してはどうか。
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さらなる調査のためのリンク集
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札幌地裁の判決要旨全文
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6051715cc5b6f2f91a2d567e
2020年末時点でパートナーシップ制度を導入している自治体(NPO虹色ダイバーシティ)
https://nijiirodiversity.jp