【交通】独禁特例法や運輸連合、生き残りを賭けたバスの取り組み(社会・技術動向)

<概要>

●バス事業者の倒産や休廃業は過去最多、路線バスの減便も

●独占禁止法の特例によるバス会社の「共同経営」が始まる

●北海道は「運輸連合」で交通事業者間の運営一元化を促す

●ワクチンバスやオフィスバスで稼働していない車両を活用

●一方で、他社の撤退後は自治体バスが穴埋めを求められる

<チェックポイント>

●地元バス事業者の実態

●共同経営や運輸連合の可能性

●稼働していないバス車両の活用

<掲載事例>

●熊本県、北海道

●熊本県熊本市、京都府京都市

●群馬県前橋市

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バス事業者の倒産や休廃業、路線バスの減便も
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・2020年度の観光バス事業者の倒産は11件、休廃業・解散は24件で、年度末を待たずに過去最多を更新。

・事業者の9割超が減収で6割が赤字、年末年始の自粛と二度目の緊急事態宣言で先行きも厳しい。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000246.000043465.html

・貸切バスの利益で路線バスを運行していた事業者も、スキーバスが激減して路線バスの減便に追い込まれた。

・コミュニティーバスとしての運行をと自治体に掛け合ったが、「民間事業だ」と遠ざけられた。

https://www.asahi.com/articles/ASP2J6WWFP1TUTIL05F.html

・政府は、社会機能を維持するため、事業者に感染対策を徹底して運行を続けるよう求めつつ「単純な赤字補填はしない」としている。

・事業者からは「せめて生活路線の減収分は補ってほしい」「一部だけでも補填してもらわないと路線を廃止せざるを得ない」との声も。

https://www.sankeibiz.jp/business/news/210204/bsd2102040600001-n1.htm

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独占禁止法の特例によるバス会社の「共同経営」
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・2020年11月に独占禁止法の特例法が施行され、バス会社の合併や共同経営(カルテル)が認められるように。

・共同経営計画を国土交通大臣に提出して認可されれば、複数の会社で定額乗り放題や共同運行、共同ダイヤなどが可能。

https://www.cas.go.jp/jp/houan/200303/siryou2.pdf

・2021年3月2日、熊本県内の民間バス5社が全国で初めて「共同経営計画」の認可を国土交通省に申請。

・熊本市内で重複運行している4区間の調整運行を軸に年間3000万円の収支改善効果を見込む。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021030201171&g=eco

・群馬県前橋市でもバス事業者6社が共同経営に乗り出し、2021年7月にも国交省に申請する方針。

・前橋市が調整役となり、重複路線で等間隔の運行となるようダイヤを効率化する。

https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/265713

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事業者の連合体で公共交通を一元管理する「運輸連合」
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●北海道は「運輸連合」で交通事業者間の連携を促す

・北海道は2021年2月10日、交通・物流連携会議にて「交通政策総合指針」のうち2021〜2025年度を対象とする「重点戦略」案を了承。

・人流・物流に関わる事業者が相互に連携した「北海道型の運輸連合」のあり方について検討を進める。

http://news.butsuryujin.org/topics/4700.html

・重点戦略のポイントと、シームレス交通戦略の中に、地域交通の維持・確保のため「運輸連合」の検討を進めることを明記。

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/renkei2siryou3.pdf

●ドイツにおける運輸連合の先進事例

・北海道が参考にしているドイツの運輸連合は、地域内の事業者が連合体を組織し、公共交通の運営を一元的に管理するもの。

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/H30_1_koutuubuturyuu_01siryou1.pdf
(4ページ相当)

・重複路線を整理し、鉄道とバスなど乗り継ぎに配慮して一元的にダイヤを策定する。

・運賃体系を事業者間で統一し、運賃は各事業者の負担コストや輸送実績に応じて配分。

・路線図など情報提供や、広報宣伝を一元化することで、公共交通全体へのシフトを促す。

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/H300522siryou2.pdf

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利用者の減少をしのぐ官民の取り組み
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●ワクチンバスやオフィスバスで車両を活用

・栃木県では医療用バスを改造したワクチン接種車両が誕生、車内は抗菌加工で冷蔵庫用の電源や検温カメラも装備されている。

https://www.sankei.com/life/news/210219/lif2102190053-n1.html

・千葉県や鹿児島県でも観光バス会社が、ワクチン接種用と経過観察用にリフト付きバスを提供。

https://www.chibanippo.co.jp/news/local/766276

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC022A70S1A300C2000000/

・神奈川県では平日の朝と晩に1往復、パソコンで仕事をしながら通勤できるオフィスバスが運行。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210215/k10012867961000.html

・石川県では、温浴施設や病院を巡回する無料バスを走らせ、停留所を置く協賛企業から運営資金を集める。

https://www.chunichi.co.jp/article/200549

●他社の撤退後を自治体バスが穴埋め

・京都市山科区では1997年の地下鉄東西線の開業により市バスが撤退し、それ以降は民間バスが地域住民の足となっていた。

・2020年12月に民間バスが減便したため、京都市は市バスと民間バスの共同運行に向け協議を開始。

https://www.kbs-kyoto.co.jp/contents/news/2021/02/n20210224_108660.htm

・コロナで赤字ローカル線の維持が困難になったJR西日本は、バスやLRTへの転換を関係自治体と協議する考え。

https://www.sankei.com/west/news/210218/wst2102180020-n1.html

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チェックポイント詳細
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●地元バス事業者の実態

・地元のバス事業者の倒産や休廃業、経営状況はどうか。

・路線バスの減便などは行われたか。

・自治体のバス事業の経営状況はどうか。

・民間の減便や撤退の穴埋めを自治体としてどうするか。

●共同経営や運輸連合の可能性

・バス事業者間で重複路線の整理やダイヤの効率化を始めているか。

・共同経営や運輸連合が議題に上っているか。

・自治体として協議の場を作り、更なる連携を促すべきではないか。

●稼働していないバス車両の活用

・ワクチン接種用にバス車両を活用してはどうか。

・通勤や市内巡回に観光バスの車両を活用できないか。

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さらなる調査のためのリンク集
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ドイツ運輸連合調査報告書(日本都市センター)
http://www.toshi.or.jp/app-def/wp/wp-content/uploads/2020/04/report186_6-1.pdf

バス・タクシー・レンタカー事業に関する補助について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr3_000029.html

【地域交通】地域公共交通活性化再生法が改正!あらゆる手段で地域の足を守る(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5725/

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