【交通】ローカル鉄道を存続するか別方式にするか、再構築協議会で議論を(社会・技術動向)

<概要>

●鉄道の輸送人員は減少し、多くの事業者が赤字に

●地域鉄道に対する国の支援制度

●協議をするための新たな枠組みを創設

●鉄道の活性化・再生に向けた取り組み

●災害復興を機にBRT化による最適化を目指す事例

<チェックポイント>

●鉄道事業に対する支援の枠組み

●鉄道事業への支援策や代替案

<掲載事例>

●富山県富山市、広島県庄原市、広島県三次市、宮城県気仙沼市、岩手県陸前高田市、岩手県大船渡市、大分県日田市、福岡県添田町、福岡県東峰村

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鉄道の輸送人員は減少し、多くの事業者が赤字に
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・国土交通省は2022年2月、鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会を立ち上げた。

https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk5_000011.html

・JR西日本は、コロナ禍による影響で2020年度は2332億円、2021年度は1165億円の赤字になる見通し。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220214/k10013483021000.html

・鉄道の輸送人員は、1991年をピークに約22%減少しており、車両・トンネル・橋梁などの老朽化が進んでいる。

・2019年度、鉄軌道事業者95社のうち、74事業者が赤字になっている。

・23道県の知事が、地方の鉄道ネットワークを守る緊急提言を国土交通大臣あてに提出し、鉄道事業法における鉄道廃止等手続きの見直しなどを求めている。

https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001464074.pdf
(1、9ページ)

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国の支援策と新たな協議の枠組み
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●地域鉄道に対する国の支援制度

・国鉄改革時に、輸送密度が4,000人未満の路線は「特定地方交通線」として選定され、バス転換の対象とされた。

・国土交通省は、安全な鉄道輸送を確保するための支援や、利便性向上・利用環境改善に向けた補助制度を実施している。

・鉄道事業者に対する固定資産税の特例措置や、地方公共団体が地域鉄道に対して行う投資について財政措置を講じるなど、支援を行っている。

https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001464075.pdf
(1、14~16ページ)

・鉄道事業再構築に対して、公有民営・上下分離・事業譲渡などのプログラムも提示している。

https://www.mlit.go.jp/common/001235844.pdf

●協議をするための新たな枠組みを創設

・有識者検討会は、鉄道事業者又は自治体の要請を受け、新たな協議の場(特定線区再構築協議会)を設置することを提言にまとめた。

・協議の場は、「廃止ありき」「存続ありき」という前提を置かず、利用者目線で協議を行うこととしている。

・国は、頑張る地域に対して、合意形成に向けた支援や合意の実現に向けた支援を行う。

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001517172.pdf
(8ページ)

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鉄道の活性化・再生に向けた取り組み
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●ライトレールを成功させ、更なる改善に向けた取り組み(富山県富山市)

・富山市は2009年12月に、市内電車の環状線化とライトレール化を実施した。

・ライトレール化と合わせて、コミュニティバスの運行ルート見直し、交通系ICカード導入、イベント連携、低床車両の導入などを行った。

https://www.mlit.go.jp/common/000210071.pdf

・2020年には、富山地方鉄道(富山市)と、富山ライトレール(第三セクター)を合併し、従業員や車両運用効率の向上、サービスの充実などを図った。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44203960V20C19A4LB0000/

・富山大学は、有識者検討会の提言を受けて、JR路線の沿線自治体を対象とした新たな支援プロジェクトを開始した。

・「公共交通を軸としたコンパクトシティー政策」を進めてきた富山市と連携を深め、鉄道の再生・活性化を目指す自治体等を支援する。

・利便性の向上による正のスパイラルへ転換し、採算性だけでなく社会全体にもたらされる効果で評価をすることを目指す。

http://www3.u-toyama.ac.jp/urban/JRline-project.html

●芸備線の利用促進に向けて、沿線自治体の取り組み(広島県庄原市・広島県三次市など)

・庄原市は、芸備線・木次線利用促進協議会を設置し、利用促進への市民の参画・生活交通としての利用促進・市外からの乗客の呼び込みの施策を展開してきた。

https://www.shobara-geibi-kisuki.jp/council/

・三次市は、芸備線対策協議会を設置し、国土交通省に対して支援の要請や、サイクルトレイン、パーク&ライド、デジタルスタンプラリーなどの施策を行っている。

https://www.city.miyoshi.hiroshima.jp/teijyu_m/chiikikoutsu/geibisentaisaku.html

・芸備線沿線自治体の市議が、芸備線の存続を求めて「芸備線沿線議員連絡協議会」を設立した。

・広島県内の広島市、三次市、安芸高田市、庄原市の市議85人が名を連ね、2022年8月16日に設立総会を開催した。

https://mainichi.jp/articles/20220816/k00/00m/040/228000c

・JR西日本は、存続・廃止の前提を置かずに在り方を議論する場を設けて欲しいと表明。

・国が関与する形で協議ができるよう、有識者検討会が示した新たな協議の場を設置したい考え。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2c797db4f7b7a5d678a36e5f725edb3fa60c7e8c

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災害復興を機にBRT化による最適化を目指す事例
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●東日本大震災で被害を受けた路線をBRTに(宮城県気仙沼市、岩手県陸前高田市、岩手県大船渡市)

・JR東日本は、東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙沼線・大船渡線の復旧にあたり、スピーディに安全で便利な高速輸送サービスを提供できるよう、BRTの運行を開始した。

https://www.jreast.co.jp/railway/train/brt/

・BRTとは「バス・ラピッド・トランジット」のことで「バス高速輸送システム」と訳され、線路敷を活用して専用道を整備しバス路線を設置する方式のことをいう。

・気仙沼線の区間は、震災から約1年半後の2012年8月に、鉄道駅と同じ場所にBRT駅を設置し、街の復興に合わせて駅の場所の変更や追加を行ってきた。

・大船渡駅では、気仙沼線BRT・大船渡線BRT・大船渡線(鉄道)が乗り入れ、段差を極力なくしたレイアウトで乗り換えも便利になっている。

https://www.toretabi.jp/railway_info/entry-5175.html

・大船渡市は、地域公共交通計画を策定し、ソフト・ハードの両面から公共交通等の指針を示し、既存の輸送資源を最大限活用してサービス確保を図ることを目標とした。

・鉄道・BRT・路線バス・タクシー等が連携し、ダイヤの調整・乗り継ぎの改善・新たな運賃体系の構築・観光振興などの取り組みを行う。

https://www.city.ofunato.iwate.jp/uploaded/attachment/31217.pdf

●豪雨災害によって被災した鉄道をBRTで再開業へ(大分県日田市、福岡県添田町、福岡県東峰村)

・日田彦山線復旧会議は、2017年の九州北部豪雨災害で壊滅的な被害を受けたJR日田彦山線の復旧についてBRTを導入することを決定した。

https://www.city.hita.oita.jp/material/files/group/9/hukkyuusinntyoku_R3_3.pdf
(31ページ)

・JR九州は、添田~夜明間の日田彦山線BRTを、2023年夏から運航開始するとしている。

・営業距離は約40㎞で、このうち彦山駅~宝珠山駅の約14㎞は専用道、それ以外は一般道を走行する。

https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1412709.html

・駅の数は鉄道時代の12駅から一気に25駅増加し、全37駅となる。

・自治体や関係機関と連携し、学校や病院など生活に密着したエリアに駅を新設することで利便性の向上が期待されている。

https://trafficnews.jp/post/120146

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チェックポイント詳細
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●鉄道事業に対する支援の枠組み

・地元の鉄道の輸送密度について把握しているか。

・自治体として地域鉄道に対し支援を行っているか。

・鉄道事業者は、ローカル鉄道の利便性向上・利用環境向上の取組のため、国の支援制度を活用しているか。

・ローカル鉄道を支援する、沿線自治体議員の議員連盟を立ち上げてはどうか。

・大学や専門機関に、現状の分析や改善提案を依頼してはどうか。

・特定線区再構築協議会を設置して、関係機関と改善や善後策の協議を行ってはどうか。

●鉄道事業への支援策や代替案

・国の支援制度や再構築のプログラム、再建の成功事例などについて、情報収集・分析しているか。

・存続に向けて、利用者の拡大や利便性の向上、コスト削減などに取り組んでいるか。

・路線バス等による代替は可能か。

・線路敷を活用して専用道を作るBRTを検討してはどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001492230.pdf

地域鉄道・ローカル線を巡る最近の動向(国土交通省)
https://www.city.osaki.miyagi.jp/material/files/group/11/localdoukou_1_shiryou3.pdf

ローカル鉄道「特定線区」の全詳細。地域モビリティ検討会「提言」を読み解く(旅行総合研究所)
https://tabiris.com/archives/mobility202207/

【交通】まもなく西九州新幹線が開業、沿線各駅の駅前開発状況(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/6875/

【地域交通】地域公共交通活性化再生法が改正!あらゆる手段で地域の足を守る(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5725/

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