<概要>
●大阪市を4つの特別区に分割する「大阪都構想」
●推進派は二重行政の解消と行政のスピードアップをうたう
●反対派は大阪市の権限と予算が減ることを問題視
●政令市長会は都道府県の事務を担う「特別自治市」を目指す
●中核市など、基礎自治体への権限移譲も進む
●地方制度調査会は市町村が連携して権限移譲を受ける形を示す
<チェックポイント>
●都道府県からの権限移譲
●近隣市町村の連携
●行政区の権限強化
<掲載事例>
●大阪府大阪市、神奈川県横浜市
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大阪市を4つの特別区に分割する「大阪都構想」
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・2020年11月2日に大阪市民を対象として、「大阪都構想」の是非を問う住民投票が実施される。
・正式名称は「特別区制度」で、大阪市も「特別区制度(いわゆる大阪都構想)」と表記。
・大阪市をなくして基礎自治体として4つの特別区を設置し、大阪市が担っていた広域行政は大阪府に一元化する。
・大阪市の行政区長は市長の任命だが、特別区の区長は選挙で選ばれて予算編成や条例提案の権限を持つ。
・特別区の権限は中核市並みで、大阪府が特別区と協議しながら財政調整を行う。
・住民投票で賛成が過半数となれば、2025年元旦に大阪市を廃止して特別区を設置、大阪市に戻す手続きは無い。
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushutosuishin/page/0000492418.html
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二重行政の解消か、政令市の権限喪失か
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●推進派は「二重行政の解消」をうたう
・大阪府と大阪市は役所同士・議会同士の仲が悪く、競い合うように非効率な税金の投資を続けてきた。
・大阪市をまたぐ道路など都市インフラも、府と市の費用負担が決まらず整備が進まなかった。
・1人の市長で滞っていた問題解決を、4つの特別区に分けて4人の区長が取り組むことでスピードアップすると主張。
https://oneosaka.jp/tokoso/question.php
●反対派は大阪市の権限・予算が減ることを問題視
・財政が豊かな大阪市の税収を大阪府が吸い上げ、特別区が使い道を決められる財源が少なくなる。
・特別区は政令市の時より権限が小さくなり、水道や消防など一般市以下の権限になる分野も。
・4つの特別区に分かれるため、職員の人数や庁舎のランニングコストが増える。
・24の行政区にあった施設が統合され、身近にあった施設が使えず住民サービスが低下すると主張。
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特別自治市や中核市など、基礎自治体への権限移譲
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●政令指定都市市長会が目指す「特別自治市」
・京都市長は「特別自治市が将来あるべき姿」と、大阪都構想の住民投票を受けてコメント。
https://www.47news.jp/5365594.html
・特別自治市とは、政令指定都市に都道府県の権限と財源を全て移譲し、二重行政を解消する制度。
https://www.city.kobe.lg.jp/a89138/shise/kekaku/kikakuchosekyoku/bunken/daitoshi/index.html
・政令指定都市は1956年に暫定的にできた制度で、大都市の権限が不十分だった。
・政令指定都市市長会が2010年に初めて提唱し、地方自治法の改正など国に要望を続けている。
http://www.siteitosi.jp/necessity/city/background.html
・特別自治市は都道府県の全ての事務だけでなく、ハローワークや国道管理など国の事務も一部担う想定。
http://www.siteitosi.jp/necessity/city/pdf/h23_07_27_01.pdf
●中核市への権限移譲も進む
・1996年から中核市制度が施行され、人口30万人以上などの要件を満たす市に都道府県の事務の一部が移譲された。
・2000年からは特例市制度も始まり、人口20万人以上の市に環境行政や都市計画の権限が移譲された。
https://www.city.kishiwada.osaka.jp/soshiki/5/sekouzitokureishi-01.html
・2015年には特例市制度が廃止され、人口20万人以上の市が中核市に移行できるように。
・中核市では民生・保健所・環境・都市計画・教育などの事務を独自に処理することができる。
https://www.soumu.go.jp/cyukaku/
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政令市や地方制度調査会の最近の動き
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●特別自治市大綱をまとめ、区の権限も強化(神奈川県横浜市)
・横浜市は特別自治市の実現を強く求め、2013年には特別自治市大綱を策定。
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/bunken/daitoshi.html
・県との二重行政の解消や、不十分な税源配分の見直しを目的としている。
・ここ数年でも小中学校の学級編成や教職員数の決定、パスポート発給などの権限を横浜市に移譲。
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/bunken/daitoshi.files/0176_20200107.pdf
(5、10ページ)
・特別自治市が実現するまでの現実的な目標として、市内の行政区の機能強化も進める。
https://www.townnews.co.jp/0104/2020/05/14/526600.html
●地方制度調査会における近年の議論
・2013年の第30次地方制度調査会答申では、都道府県から政令市への権限移譲や特別自治市が検討課題に。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000245827.pdf
・2020年6月の第32次地方制度調査会答申では、人口減少に備えた市町村の広域連携が提言された。
・近隣市町村が広域連携して、都道府県から権限移譲を受ける形が考えられている。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000693733.pdf
(18ページ)
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チェックポイント詳細
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●都道府県からの権限移譲
・都道府県と権限移譲に関する協議を行っているか。
・県内で都道府県から市町村に移譲された権限は何があるか。
●近隣市町村の連携
・定住自立圏や連携中枢都市圏など、近隣市町村との連携はどうか。
・近隣市町村と連携して都道府県から権限移譲を受けられないか。
●行政区の権限強化
・区役所事務分掌条例はどうなっているか。
・行政区の権限強化を進めるべきではないか。
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さらなる調査のためのリンク集
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地方制度調査会(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/chihou_seido/singi.html
【地方分権】地方分権一括法の施行から20年、第10次分権一括法が国会で成立(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5731/