【消費者】消費者庁発足から10年、実働部隊となる地方の課題と工夫(政策アイディア)

<概要>

●消費者庁が発足から10年を迎え、全国の消費者相談は初めて100万件を超えた

●消費者行政の実働部隊は地方だが、予算は減り続け、消費生活センターの設置数も横ばい

●若者からの消費相談が減っているため、消費者庁はSNSを使った消費相談を試験実施

●高齢者の見守りネットワークと成年後見制度の利用は、自治体によって差が出ている

●ウェブ会議を使った県と小規模自治体の共同相談体制や、ネット上の通報窓口も

<チェックポイント>

●自治体の消費者行政の現状

●消費相談とインターネットの活用

●高齢者の見守りネットワークと成年後見

<掲載事例>

●広島県、東京都、静岡県

●滋賀県野洲市

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減り続ける地方消費者行政の予算
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●消費者庁の発足から10年

・消費者被害の情報集約、調査、啓発、救済などを進める「司令塔」である消費者庁が2019年9月で発足10年を迎えた。

・2018年に全国の消費生活センターなどに寄せられた相談は101万8千件に達し、同庁発足以来初めて100万件を超えた。

・一方、消費者意識調査では、消費者庁の業務の認知度は5割未満で、ホットラインの番号(188)を知る人は1割以下にとどまる。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/539852/

●地方の消費生活センターが消費者行政の実働部隊

・消費者相談は、主に地方自治体の消費生活センターや相談窓口に寄せられ、国民生活センターの「PIO-NET」にデータベース化される。

・消費生活センター等は、消費者被害にあった住民にアドバイスや事業者との斡旋を行う。

・事業者に対する消費者関連法の執行や、消費者被害を防ぐための教育・啓発も地方消費者行政の役割。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2019/white_paper_114.html#zuhyo-1-2-2-8

●予算は減り続け、相談員も前年比減

・地方消費者行政の補正も含めた最終予算は、2011年以降、長期的に減少傾向にある。

・消費生活センターの設置数は横ばいで、37%の自治体には消費生活センターが無く、相談窓口のみ設置。

・消費生活相談員の配置数も、2019年度は前年に比べて減少。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/status_investigation/2019/pdf/local_cooperation_cms203_20191016_01.pdf

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若者を守る法改正と、SNSを使った消費者相談
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●若者と高齢者を守る消費者契約法が施行

・消費者生活センターが集めた被害事例を踏まえて改正された消費者契約法が、2019年6月から施行。

・不安をあおる告知や恋愛感情に乗じたデート商法など、若者の経験不足を利用した不当な契約は取り消せることに。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/amendment/2018/pdf/amendment_2018_0001.pdf

●減り続ける若者からの消費生活相談

・50代以上の消費生活相談は増えているが、40代以下の消費生活相談は減り続けている。

https://www.caa.go.jp/future/project/project_013/pdf/project_013_190403_0003.pdf

・消費者庁は2019年3月に「若者が活用しやすい消費生活相談に関する研究会」を立ち上げ。

https://www.caa.go.jp/future/project/project_013/

・2019年12月16日から無料通信アプリ「LINE」による若者向け消費者相談を試験実施。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/future_cms201_191209_01.pdf

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高齢者の見守りネットワークと成年後見
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●設置が進まない見守りネットワーク

・2014年の法改正で、高齢者や障害者を消費者被害から守る消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)を設置できるようになった。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2019/white_paper_251.html

・病院、福祉機関、警察、司法関係、商店街・生協・農協・宅配・金融機関など民間事業者と消費者行政が情報共有。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2015/white_paper_139.html#zuhyo-4-3-10

・2019年6月施行の改正消費者契約法では、加齢による判断力の低下を利用した契約や、いわゆる霊感商法による契約も取り消し可能に。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/amendment/2018/pdf/amendment_2018_0001.pdf

・消費者庁は見守りネットワークを人口5万人以上の全ての市区町村に設置する目標を掲げるが、
2019年9月時点で、全体の2割にあたる111市町しか設置できていない。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/pdf/local_cooperation_cms203_20191016_02.pdf

●高齢者を保護する成年後見制度には地域差が

・親族に代わって市区町村長が2017年度に成年後見制度の利用を申し立てた件数は、人口当たりで比べると都道府県間で最大6倍の差がある。

・全体の43%に当たる741自治体では件数がゼロで、制度に関する職員の知識不足や、自治体側の手間・費用負担が理由にあるとみられる。

・申し立てが適切に行われていない自治体では、認知症などで判断力が不十分な高齢者が消費者被害に遭う恐れがある。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019050602000171.html

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自治体の取り組み事例
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●訪問販売員を登録制にして、事業者の営業方法を公表(滋賀県野洲市)

・消費者は訪問販売を行う事業者情報を事前に知る事ができるよう、訪問販売員を登録制に。

・消費者から苦情があった事業者には、商品等の品質・表示・営業の方法等に関する資料提出を求め、
これを拒んだ場合には苦情の内容や事業者名等の公表ができる。

・消費者から苦情があった事業者に対して、商品の品質や表示、営業の方法などについて改善を要請し、
その要請内容や事業者等からの回答などについて公表できる。

http://www.city.yasu.lg.jp/i/soshiki/shiminseikatsusoudan/kurashisasaeaijyourei/kurashisasaeaijyourei.html

●ウェブ会議システムで市町村との共同相談体制を構築(広島県)

・市町村にノートPC又はタブレット等を配備し、専用のポータルサイトとウェブ会議システムで各拠点を結ぶ。

・困難な相談案件を県の相談員と共同処理できたり、県の実施する弁護士など専門家相談を市町村窓口から利用できる。

・相談員不在でも県のバックアップ支援が受けられるということで、平日毎日相談窓口対応を打ち出した自治体も。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2016/white_paper_117.html

●不当な取引や表示を通報できるウェブサイトを運用(東京都、静岡県など)

・訪販や通販、EC事業者の不適正な取引や不当表示に関する情報を通報できるウェブサイトの運用が広がっている。

・消費生活センターの相談受付時間が日中に限られており、若者が電話で相談を控える傾向にあることが取り組みの理由。

・不当表示や誇大広告など、通報サイトからの情報を端緒に、行政処分につなげたケースも出ている。

https://www.bci.co.jp/nichiryu/article/6334

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チェックポイント詳細
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●自治体の消費者行政の現状

・消費者行政の予算額はどのように推移しているか。

・消費生活センターを設置しているか。していない場合は周辺自治体との共同設置を検討してはどうか。

・消費生活相談員の配置数はどのように推移しているか。

●消費相談とインターネットの活用

・消費相談の件数はどのように推移しているか。内容別・年代別にはどうか。

・SNSなどを利用した若者向けの消費相談窓口を開設してはどうか。

・不当表示などの通報を24時間受け付けられるウェブサイトを開設してはどうか。

・県と小規模自治体がウェブ会議を使って共同相談のできる体制を検討してはどうか。

●高齢者の見守りネットワークと成年後見

・消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)を設置しているか。していない場合は何が障害になっているか。

・成年後見の首長申し立てを行っているか。行っていない場合は何が障害になっているか。

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さらなる調査のためのリンク集
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令和元年度消費者白書(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2019/

令和元年度地方消費者行政の現況調査(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/status_investigation/2019/

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