【まちづくり】少子化で統廃合が進む学校の跡地利用(1)まちづくりの拠点整備(事例研究)

<概要>

●14歳以下の人口は、数も割合も減少中

●公立小中学校の数は、10年で10%減少

●都心部では生徒数が微増し、高層ビル内に新校舎も

●学校跡地を再開発拠点にする取り組み

●まちのシンボルとして学校跡地を活用する事例

<チェックポイント>

●子どもの人口予測と学校の統廃合

●学校跡地の新たな活用方法

<掲載事例>

●大阪府大阪市、福岡県福岡市

●東京都中央区、東京都豊島区、千葉県鋸南町

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少子化の進行で学校の統廃合が相次ぐ
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●14歳以下の人口は、数も割合も減少中

・内閣府の少子化社会対策白書によると、2020年の出生数は84万835人となり過去最少、合計特殊出生率は1.33で前年より0.03ポイント低下した。

・0~14歳の人口は2021年に1478万人だったが、2065年には898万人まで約40%減少すると予測されている。

・全体の人口に対する0~14歳の比率も2021年は11.8%だったが、2065年には10.2%まで低下すると予測されている。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2022/r04webgaiyoh/html/gb1_s1.html

●公立小中学校の数は過去10年で10%減少

・児童・生徒数は、1989年~2019年の30年間で約32%、直近の2009年~2019年の10年間で約10%減少している。

・公立小中学校数は、1989年~2019年の30年間で約18%、直近の2009年~2019年の10年間で約10%減少している。

・自治体内に1つの小学校と1つの中学校しかない市町村は233(13.3%)に上る。

https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20200618-mext_syoto02-000007975_3.pdf
(1ページ)

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都心部では生徒数が微増し、高層ビル内に新校舎も
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・東京都中央区は、区立城東小学校の建て替えを周辺との再開発事業と一緒に行うことで、超高層ビル内に新たな学校を設置した。

・2022年9月から使用開始予定で、6クラス計169人が新校舎を使用する予定。

・45階建ての「東京ミッドタウン八重洲」の低層階1~4階部分に入居し、体育館は2階、プールは3階、校庭は4階で開閉式屋根を備えている。

https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/education/59312/

・中央区は、東京2020大会後に定住人口が増加すると推計しており、学校施設の整備・改修を進めている。

・限られた敷地でも校庭面積を確保できるよう、屋上などの空間を有効活用するとともに、ビオトープなど自然体験ができる場を整備する。

https://www.city.chuo.lg.jp/kosodate/kyouikuiinkai/keikaku/_user_gsisetu_time_2021.files/kobetukeikaku.pdf
(1、3ページ)

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学校跡地を再開発拠点にする取り組み
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●ターミナル駅近くの学校跡地を高層タワーに再開発(大阪府大阪市)

・大阪府大阪市の曽根崎小は、統合により大阪北小学校となり、さらに2007年に扇町小学校と統合したため跡地が発生していた。

https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000267190.html

・大阪梅田の交通至便な立地を活かして、(仮称)梅田曽根崎計画として、民間ゼネコンによる開発事業が計画された。

https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000411/411451/1-1.pdf

・高さは梅田地区最高の191m・地上56階建てで、低層部分にはオープンモール型商業施設や交流広場・文化施設などを整備する。

・高層部分には共同住宅とホテルが設置され、大阪の国際観光力の強化と、梅田地区の都市機能の強化に繋げる。

・歴史ある旧曽根崎小学校の面影を感じる外観デザインを取り入れ、小学校の記念碑などが再設置される。

https://toshoken.com/news/13333

●学校跡地で市街地再開発事業と一緒に新庁舎整備(東京都豊島区)

・豊島区は、1997年の学校適正化第一次整備計画により小中学校の統合を進め、小学校6カ所、中学校5ヵ所の跡地が発生した。

・庁舎建て替えの際に、再開発事業による庁舎床の確保と現庁舎地の資産活用が見込める、学校跡地の活用プランを選定した。

https://www.city.toshima.lg.jp/063/kuse/shisaku/shisaku/kekaku/021014/documents/seibisuisinkeikaku_zenbun.pdf
(12~13ページ)

・豊島区新庁舎は、地上49階の再開発ビルのうち1階と3~9階を使用している。

・再開発ビルには、庁舎・店舗・事務所・駐車場の他に、共同住宅として432戸を整備したマンションになっている。

・10階には屋上庭園に森を配置し、ビル全体としてもアーキテクトの英知を結集した木材をふんだんに使用した外観とし、環境に配慮したものになった。

https://www.city.toshima.lg.jp/063/shinchosha/index.html

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まちのシンボルとして学校跡地を活用する事例
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●官民協働型のスタートアップ支援施設としてリニューアル(福岡県福岡市)

・福岡市は2019年、統合によって廃校となった旧大名小学校跡地に、企業のスタートアップを支援する「Fukuoka Growth Next」をリニューアルオープン。

・カフェと福岡市雇用労働相談センターはリニューアル前同様に設置され、加えてシェアオフィスやイベントスペース等を整備。

https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/59331/1/284.pdf?20200714145326
(1ページ)

・福岡市や地元企業による運営委員会を設置し、官民が連携した運営をしている。

・大手企業を含めた多くのスポンサーを獲得しており、入居を希望するスタートアップ企業にとっても魅力となっている。

https://growth-next.com/about

●宿泊やイベントもできる道の駅として再生(千葉県鋸南町)

・鋸南町は2015年、廃校となった保田小学校跡地を道の駅として整備、物販・飲食だけでなく宿泊施設としても利用できる。

・高速道路の鋸南保田インターから近く、まちのギャラリー・まちのコンシェルジュ・イベント広場・こども広場なども設置し、まちの顔になっている。

https://hotasho.jp/

・指定管理者による運営で、テナントと合わせた売り上げは年間5億円程度で推移している。

https://www.town.kyonan.chiba.jp/uploaded/attachment/4267.pdf

・鋸南町は、さらに隣地を整備する計画を打ち出しており、子どもたちが遊べる公園や農業体験の場などを2023年までに整備する。

https://www.town.kyonan.chiba.jp/uploaded/attachment/2456.pdf

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チェックポイント詳細
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●子どもの人口予測と学校の統廃合

・人口の予想に合わせて教育施設の整備計画を立てているか。

・小中学校の適正配置・統廃合を行っているか。

・廃校による地域活動への影響を考慮しているか。

●学校跡地の新たな活用方法

・跡地利用で行政需要を満たしたり、地域の活性化につなげられないか。

・跡地利用の計画を立てる際に、学校の歴史や足跡を残すことは含まれているか。

・校舎や校庭をそのまま活用しながら、新たなニーズに対応することはできないか。

・再開発などの行政手法を活用をしてはどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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少子化社会対策白書(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/index.html

農山漁村を元気にする廃校再生・保田小学校(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2206/regeneration01.html

少子化時代の土地有効活用、学校跡地の再開発に注目(健美家)
https://www.kenbiya.com/ar/ns/region/all/4111.html

【まちづくり】所有者不明土地法が改正、地域のための有効利用が進められる(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/6811/

【公共施設】総合管理計画の次は施設の長寿命化と統廃合(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5253/

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