<概要>
●特定外来生物による生態系被害を防止する「外来生物法」の改正
●ヒアリ対策の強化
●アメリカザリガニやアカミミガメ対策の整備
●自治体の責務を新設
●自治体が取り組む外来生物対策の事例
<チェックポイント>
●生物多様性に関する実態把握
●外来生物対策への取り組み
<掲載事例>
●沖縄県
●兵庫県神戸市、熊本県熊本市
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生態系被害を防止する「外来生物法」の改正
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・2022年5月11日、国会で「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」の改正案が成立。
https://www.yomiuri.co.jp/science/20220511-OYT1T50252/
・緊急に対処が必要な外来生物(ヒアリ類を想定)が、国内へ侵入することを防止するため、検査体制を強化する。
・既に広く飼育され、野外の個体数も多い外来生物(アメリカザリガニやアカミミガメを想定)に対応する規定を整備し、一部規制を行う。
・国と自治体の責務規定を定め、防除体制の円滑化と強化を進める。
https://www.env.go.jp/press/files/jp/117569.pdf
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外来生物別の対策強化の内容
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●ヒアリ対策の強化
・ヒアリは南米に生息していたが、コンテナ貨物に紛れ込んで世界中に広がった。
・刺されると強い痛みが生じ、体質等によっては強いアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を起こす。
http://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/attention/02_general/index.html
・今回の法改正で、ヒアリに限らず特米外来生物については、防除だけでなく生息調査のための民有地立ち入りが可能に。
・「要緊急対処特定外来生物」という新しいカテゴリーを政令で定めることとし、ヒアリを含むトフシアリ属4種群とそれらの交雑種を指定。
・「要緊急対処特定外来生物」に対しては、通関後の物品・施設・土地への検査・消毒廃棄命令や、ヒアリか否か特定する作業中の物品等の移動停止が可能に。
・国が対処指針を定め、事業者に対して報告・助言・指導・勧告・命令をすることができるようになる。
https://www.env.go.jp/press/110649.html
●アメリカザリガニやアカミミガメ対策の整備
・アメリカザリガニとアカミミガメは、既に広く一般に飼育されているため、現行法で規制すると大量放出される恐れがある。
・繁殖拡大を防ぎつつ大量放出を防ぐには、特定外来生物に指定しつつ、必要な条件を付して一部の規制を適用除外にする措置が必要。
・捕獲・飼育・無償譲渡はこれまで通り規制せず、輸入・販売・放出等のみを規制できるよう、法改正で特例措置を整備した。
https://www.env.go.jp/nature/amezari_mondai.html
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/attention/akamimi.html
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自治体の責務を新設
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●各主体による防除の円滑化
・国は、地方公共団体の施策の支援、事業者・民間団体等の活動支援を行うとともに、未定着または局地的に分布する特定外来生物の被害・まん延を防止する。
・都道府県は定着した特定外来生物の被害防止を実施し、市区町村は被害防止に努める。
・事業者・国民は、国や地方公共団体の施策に協力し、外来生物を適切に取り扱うように努める。
・都道府県が防除を実施する時は、国の確認手続きが不要となり、迅速な防除が可能となった。
https://www.env.go.jp/press/110649.html
●防除の確認と認定
・国が策定した防除実施計画に沿って、地方自治体が防除を行う場合は「防除の確認」を受け、民間が防除を行う場合は国による「防除の認定」を受けることができる。
・捕獲した特定外来生物の個体を生きたまま保管・運搬することは違法となるため、事前に防除の確認・認定が必要となっている。
・防除の確認・認定を受けることで、鳥獣保護管理法に基づく捕獲許可を受けずに防除を実施したり、
防除に必要な限度内で他人の土地・水面へ職員が立ち入ることができるなど、メリットがある。
https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/qa.html
(Q5)
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自治体が取り組む外来生物対策の事例
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●希少な野生動植物種を守るための条例(沖縄県)
・沖縄県は希少動植物の宝庫であり、絶滅の恐れがある野生生物が2,014種明らかになっており、そのうち41種を県として指定して保護を行っている。
・条例により、捕獲等の禁止・譲り渡し等の禁止・個体等の所有者が適切に取り扱う義務・生息地等の保護が定められ、違反すると懲役や罰金が科せられる。
・希少野生動植物の生態系に被害を及ぼす恐れがある外来種を「指定外来種」として、9種指定している。
・条例により、野外放出等の禁止・飼育栽培等の届出義務・販売時の説明義務付けを実施し、違反すると懲役や罰金が科せられる。
・外来種に対しては、県による防除計画の策定と防除の実施について、条例で定められている。
https://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/documents/pamphlet.pdf
●市民との協働による生物多様性保全活動の推進(兵庫県神戸市)
・神戸市は2016年に「生物多様性神戸プラン」、2017年に「神戸市生物多様性の保全に関する条例」を制定し、希少野生動植物の保全と外来種による被害の防止等に取り組んでいる。
・指定外来種を野外に放つことを禁止し、ペットショップ等が販売する場合には事前に届け出た上で、適切な飼い方を購入者に書面で説明しなければならない。
・条例では、第4章を「市民等との協働による生物多様性保全等活動の推進」として、市民の積極的な参画を推進し、そのための規定整備をしている。
・市は、生物多様性保全に取り組む市民や事業者に対して、技術的な助言や情報提供を行う。
・生物多様性保全に取り組む団体等は、土地所有者等と保全活動協定を結び、市長の認定を受けることができる。
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/6195/tayoseijyoreia4.pdf
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/6195/h29jyorei7.pdf
●特定の地域・生物を対象に特化した取り組み(熊本県熊本市)
・熊本市では、くまもとの緑・生物多様性に関する取り組みとして、緑化の推進や外来生物対策に取り組んでいる。
・特定外来生物については、総論だけでなく個別の生物について詳細を紹介し、対応・対策について説明している。
https://www.city.kumamoto.jp/kankyo/hpkiji/pub/List.aspx?c_id=5&class_set_id=20&class_id=2654
・江津湖地域について個別に条例を制定し、江津湖及びその周辺地域における外来生物等による被害を防止する取り組みを行っている。
・指定外来魚の放流や、市民が釣り上げた後のリリースを禁止し、違反した場合には市からの指導を受け、悪質な場合は公表する。
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チェックポイント詳細
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●生物多様性に関する実態把握
・自治体内で、レッドリスト掲載の希少動植物を確認しているか。
・所管部署の職員は、生物多様性や外来生物への適切な知識を備えているか。
・自治体内にある動植物の保全に取り組む団体等との連携はとれているか。
・施設や土地の所有者等との連携はとれているか。
・動植物の飼育や販売を行っている業者の把握はできているか。
●外来生物対策の取り組み
・国や都道府県の情報提供・取り組みと連携した対応ができているか。
・市民や業者に対して、外来生物に対する適切な指導や広報ができているか。
・防除・駆除を行う体制は整っているか。
・条例を策定し、規制の強化や違反に対する罰則規定を定めてはどうか。
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さらなる調査のためのリンク集
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外来種対策の推進に関する政策評価(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000757340.pdf
外来種対策に関する条例(地方自治研究機構)
http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/119_alien_species.htm
生物多様性神戸プラン(神戸市)
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/6195/plan.pdf
【鳥獣対策】新世代クマが各地に出没!鳥獣被害を防ぐ国と自治体の取り組み(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/5924/
【漁業】きれいな海から豊かな海へ!下水処理で海の栄養を保つ(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/5566/