<概要>
●大型公共事業の妥当性を検証する、B/C(費用便益比)
●国や都道府県は費用便益比の算定マニュアルを整備
●連続立体交差事業の費用(Cost)と便益(Benefit)
●連続立体交差事業の検証事例
<チェックポイント>
●連続立体交差事業など大型公共事業計画の予定
●便益と費用を比較する、B/Cの検証
●事業計画の策定時や執行後の検証の仕組み
<掲載事例>
●山梨県、秋田県、兵庫県、静岡県
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大型公共事業の妥当性を検証するB/C(費用便益比)
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●大型公共事業の妥当性を検証する、B/C(費用便益比)評価手法
・踏切を廃止し鉄道の高架を行う「連続立体交差事業」など大型公共事業は、事業規模が数百億円となる大きなプロジェクト。
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/road/kensetsu/gaiyo/00.html
・妥当性を検証する手法として費用(Cost)と便益(Benefit)を比較する、B/C(ビーバイシー、費用便益比)という手法が用いられる。
・費用便益比率が1以上なら公共事業は妥当とされる。
https://www.yu-cho-f.jp/research/old/pri/reserch/monthly/m-serch/finance/1997/no111/a.html
●国や都道府県は費用便益比の算定マニュアルを整備
・国は、公共事業の効果検証を行えるように費用便益費のマニュアルを策定、新規採択・再評価・事後評価といった各段階での活用を見込む。
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/497303_3677186_misc.pdf
・山梨県も費用便益分析マニュアルを制定、地域事業に即した公共事業の妥当性の検証に活用している。
https://www.pref.yamanashi.jp/kendosom/documents/hiyoubeneki_bunsekimanual.pdf
(1ページ)
・秋田県では2020年3月に「秋田県版 道路事業 費用便益分析マニュアル」を策定、県の実状を反映した新たな便益指標とその算出手法を示す。
・15の拡張された便益指標には「休日交通便益」「冬季速度低下解消便益」などがある。
https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000006742_00/akitahiyoubenneki.pdf
(5ページ)
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連続立体交差事業の費用(Cost)と便益(Benefit)
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●便益は「移動時間短縮」「走行経費減少」「交通事故減少」
・国のマニュアルによれば、便益として計算されるのは「移動時間短縮」「走行経費減少」「交通事故減少」となっている。
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/497303_3677186_misc.pdf
(1ページ)
・踏切通過交通量の計測、踏切遮断・開放時間の計測、踏切事故歴および交通量などの測定をもとに上記3つの便益を数値化する。
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/497303_3677186_misc.pdf
(3、16ページ)
・この他、独自拡張した部分で便益を盛り込む場合もあるが「その他便益」として不透明になる場合もあり、注意が必要。
・総務省は2021年3月に公共事業に係る政策評価の点検を行い、不透明な事例を批判的に紹介。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000737427.pdf
(1〜3ページ)
●費用は「連続立体交差事業費」「関連道路整備費」「関連道路の維持管理費」
・費用として「連続立体交差事業に要する事業費」「関連道路整備に要する費用」及び「関連道路の維持管理に要する費用」を計上する。
・連続立体交差事業の全体事業費は、工事費、用地費、補償費、間接経費等を計上、ただし、鉄道事業者負担費用は除かれる。
・関連道路整備費用は、工事費、用地費、補償費、間接経費等を計上する。
・道路維持管理費用は、橋梁、トンネル等の道路構造物の点検・補修にかかる費用、巡回・清掃等にかかる費用、除雪等にかかる費用等を対象。
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/497303_3677186_misc.pdf
(17ページ)
●便益と費用の比較に用いる「社会的割引率4%」の問題
・便益と費用の比較にあたり、将来価値と比べて現在価値は低いことを調整する「社会的割引率4%」が用いられる。
・10年後の10万円は現在の6.8万円という計算となり、これにより事業費が6割程度の算定となるケースもある。
・一方で、便益は完成時期との兼ね合いが課題、4%の計算では50年後の10万円は約1.4万円の価値となり、完成時期が後ろにずれればずれるほど便益は小さくなる。
https://www.fpu.ac.jp/rire/publication/column/002089.html
・「社会的割引率」はもともと2002年償還の国債の年利4%をもととしており、現在のゼロ金利時代にあわないという指摘があり、イギリスなどでは見直しを実施。
https://www.mlit.go.jp/page/content/05_200626_shiryou2.pdf
(5、8ページ)
・社会的割引率が費用便益分析をゆがめていないか検証が必要。
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連続立体交差事業の検証事例
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●連続立体交差事業の成功事例としてコンクール受賞(兵庫県)
・兵庫県は、1988〜2010年にかけてJR姫路駅付近の鉄道を高架化して周辺を整備、事業費は計画段階より増加し632億円となった。
・県は事後評価を行い、交通渋滞の緩和やまちづくりに役立ったことを報告。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks04/documents/h27j-3-jr-sanyohonsen.pdf
(連立−1)
・2012年に全国街路事業コンクールで全国街路事業促進協議会会長賞を受賞。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks10/documents/himejirenritu.pdf
●費用便益比1以上と再評価するも住民の反対や知事の姿勢で混迷(静岡県)
・静岡県は、JR沼津駅周辺の一部高架を伴う総額787億円の街路整備事業を2003年に事業採択。
・周辺状況の変化などを受け、2021年に再評価を実施し、費用便益比は1.15となった。
http://www.pref.shizuoka.jp/kensetsu/ke-030/jigyouhyouka/pub/documents/27_r3.pdf
(1、2ページ相当)
・地権者の一部が買収を拒み事業は長期化、2022年1月にようやく第一弾の事業がスタートした。
https://look.satv.co.jp/_ct/17510927
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チェックポイント詳細
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●連続立体交差事業など大型公共事業計画の予定
・自治体事業として連続立体交差事業など100億円を超える大型公共事業の計画は存在するか。
・事業計画の策定段階(調査、国の事業採択、計画など)と今後のスケジュールは。
●便益と費用を比較する、B/Cの検証
・大型公共事業に関して、便益と費用を比較する「B/C」はどのようになっているか。
・費用の妥当性、便益の各項目の妥当性についての検討は行っているか。
●事業計画の策定時や執行後の検証の仕組み
・大型公共事業の計画策定時にはどのような仕組みで妥当性を検証するのか。
・事業執行後の検証の仕組みは。
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さらなる調査のためのリンク集
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【公共事業】交付税措置に振り回されず、優先順位に基づく事業実施を(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5316/
【公共事業】土地開発公社の解散と公共事業の用地確保(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5219/