【福祉】障害者虐待を防止するため、従業員への研修や責任者の設置などを義務化(社会・技術動向)

<概要>

●養護者や施設従事者による障害者への虐待が増加

●施設の人材育成と、外部からの点検が必要

●国は報酬改定で、従業員への研修と虐待防止の責任者設置を義務化

●入院中の隔離・身体的拘束についても要件を明確化

●全施設訪問や虐待防止計画など自治体の取り組み

<チェックポイント>

●2022年度報酬改定への対応

●障害者施設における虐待防止

●養護者や使用者など社会全体での虐待防止

<掲載事例>

●大阪府

●神奈川県横浜市

●千葉県富津市

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障害者虐待を防止するために
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●養護者や施設従事者による障害者への虐待が増加

・養護者による虐待と、障害者福祉施設従事者等による虐待は増加傾向にある。

https://www.mhlw.go.jp/content/12203000/000578656.pdf

・虐待の種別は、身体的・性的・心理的・放置等・経済的の5種類に分類される。

・雇用する事業主や上司など「使用者」による虐待は、微減傾向になっている。

・「使用者」による虐待は、見えづらい「経済的虐待」が最多であり、全体の約半数となっている。

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000821382.pdf
(1~5ページ)

●施設の人材育成と、外部からの点検が必要

・利用料の9割が公費でまかなわれる放課後デイサービス施設は、参入障壁が低く、施設数は2012年の3,115ヵ所から2019年に14,465ヵ所と約5倍に増加。

・行政が主導して事業所の職員へ研修を行ったり、定期的な点検を行うことが必要。

https://www.sankei.com/article/20220319-WYPA64RXD5NNJAR6WCT4D42F4I/

・行政は、虐待の発生要因を職員個人の資質とする傾向があり、人員不足や組織風土などの構造的問題ととらえている回答は2割前後にとどまっている。

・千葉県内の暴行死亡事件について、第三者委員会が調査をしたところ、人材育成や研修とともに、外部からのチェック体制の不備が指摘された。

https://www.asahi.com/articles/ASP8B77LWP86UDCB00K.html

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虐待防止の義務化など国の取り組み
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●従業員への研修と虐待防止の責任者設置

・厚生労働省は2021年度の報酬改定において、従業員への研修と虐待防止の責任者設置を、2021年度は努力義務、2022年度から義務化した。

・虐待防止委員会を設置するとともに、委員会での検討結果を従業員に周知徹底することも新たに義務化。

・身体拘束等について、委員会の設置・適正化指針の整備・定期的な研修の実施を新たに追加。

・身体拘束等に関する運営基準を満たしていない場合には、基本報酬を減算する制度を創設した。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000768753.pdf

●入院中の隔離・身体的拘束についても要件を明確化

・厚生労働省は、地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会にて、入院制度等の方向性を議論。

・これまでは、身体的拘束の要件で「多動又は不穏が顕著である場合」とあったが、この範囲や程度の具体化が検討されてきた。

・検討結果では、「検査及び処置等を行うことができない場合」とあり、これでは要件緩和となり身体的拘束が増える可能性が懸念されている。

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000913259.pdf
(52ページの②)

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障害者虐待防止に対する自治体の取り組み
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●マニュアルや事例集を作成し、サービス改善支援員が全施設を訪問(大阪府)

・大阪府は当事者・支援者・雇用先用のチラシとリーフレットを作成し、周知の拡大を行っている。

・厚生労働省のマニュアルだけでなく、大阪府独自の対応マニュアルや対応レビューシートを作成し、様々な立場の人がそれぞれ何をすべきかまとめている。

https://www.pref.osaka.lg.jp/chiikiseikatsu/shogai-chiki/gyakutaibousihou1.html

・大阪府の対応状況を毎年公表しており、2019年度では通報件数1,241件、うち事実確認の調査をしたのが1,102件、虐待と判断したのが188件だった。

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/6430/00103993/R1_gyakutai_tyosa.pdf

・大阪府は、過去に他の都道府県と比べて虐待事案発生状況が顕著だったため、府内の障害児者施設等のサービス改善について事例集を作成。

・第三者であるサービス改善支援員が全施設に訪問し、施設内虐待ゼロを目指し対話型の改善提案を行ってきた。

https://www.pref.osaka.lg.jp/chiikiseikatsu/shogai-chiki/gyakutaibousi-jirei.html

●独自マニュアルの作成と虐待防止研修(神奈川県横浜市)

・横浜市では、独自のチラシとリーフレット(当事者用と一般用)を作成。

・障害者福祉施設等従事者を対象に、管理者とサービス管理責任者向けに分けて、2日間の虐待防止研修を開催している。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/fukushi-kaigo/fukushi/annai/madoguchi/gyakutai/gyakutaiboushi.html

・養護者・施設従事者・使用者の3ケースごとに、それぞれ防止・早期発見・発生した場合の対応などについて記載し、被害の抑止と最小化を目指す。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/fukushi-kaigo/fukushi/annai/madoguchi/gyakutai/gyakutaiboushi.files/0054_20210323.pdf

●DV・虐待防止計画の策定(千葉県富津市)

・富津市は、DV防止法に基づく基本計画の策定に合わせて、児童虐待・高齢者虐待・障害者虐待への対応や施策を含んだ総合的な「DV・虐待防止計画」を作成。

・被害対象が女性・子ども・高齢者・障害者と社会的に弱い立場で発見が困難であり、社会全体で連携した取り組みが求められることから、一つの計画とした。

・2019年度から5年間の計画期間であり、その後、5年を1期として定期的に見直しを行う予定。

https://www.city.futtsu.lg.jp/0000005461.html

https://www.city.futtsu.lg.jp/cmsfiles/contents/0000005/5461/gaiyou.pdf

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チェックポイント詳細
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●2022年度報酬改定への対応

・2022年度より虐待防止に関する施設の運営基準が厳しくなるが、周知されているか。

・新基準に対応できるよう施設にアドバイスをしているか。

●障害者施設における虐待防止

・施設従業者による虐待について、相談・通報・届出の件数はどうか。

・独自のマニュアル作成や研修は行っているか。

・施設に対して、第三者によるチェックや改善提案を行ってはどうか。

・内部告発・通報を保護する体制が整っているか。

●養護者や使用者など社会全体での虐待防止

・養護者や障害者雇用を行っている企業に対して、虐待防止研修を行ってはどうか。

・障害者を含めたDV・虐待防止計画を策定してはどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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令和3年度 障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000766855.pdf

障害者虐待防止及び身体拘束等の適正化に向けた体制整備等の取組事例集(大阪府)
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1640/00423661/zireisyu.pdf

障害者虐待防止の更なる推進(京都府)
https://www.pref.kyoto.jp/shogaishien/documents/r03siryou2-7.pdf

【精神保健】精神科病院における虐待を防ぐ!通報義務と地域包括ケアの課題(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/5944/

【コロナ】障害者・子ども・高齢者、自治体のきめ細かい取り組み(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/5618/

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