【教育】部活動指導員制度から5年、教員の負担軽減にむけた自治体の取り組み(政策アイディア)

<概要>

●2017年から導入された部活動指導員

●条件は厳しいが報酬は少ない部活動指導員

●地域のスポーツクラブと部活動の連携

●民間の人材活用を進める自治体の取り組み

<チェックポイント>

●教員の部活動の負担軽減

●児童生徒のための部活動支援

●部活動を指導できる人材の確保

<掲載事例>

●山梨県

●愛知県名古屋市

●岐阜県岐阜市、東京都日野市

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部活動指導員と外部指導者で部活動を支援
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●2017年から導入された部活動指導員

・運動部活動の顧問のうち、競技経験のない者が中学校で約46%、高等学校で約41%となっており、教員の負担となっている。

・2017年に、中学校・高等学校等において、部活動の指導・大会への引率等を行うことを職務とする部活動指導員が導入された。

・部活動指導員は、会計年度任用職員(学校職員)となるので、研修の実施が必要となる。

・部活動指導員が顧問として技術的な指導を行い、担当教諭と協力・情報交換を行いながら連携を図る。

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/013_index/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/17/1386194_04.pdf

●部活動指導員と従来の外部指導者との違い

・2015年時点で、運動部活動に外部指導者を活用した中学校の割合は約74%

・外部指導者は法律上の立場が定まっておらず、事故等に対する責任の所在が不明確であることから、大会等に生徒たちを引率できない。

・外部指導者は顧問の教諭と連携・協力しながら、部活動のコーチ等として技術的な指導を行う。

・謝礼や研修についての規定は、自治体によってバラバラとなっている。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/12/22/1399789_5.pdf
(1・79ページ)

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条件は厳しいが報酬は少ない部活動指導員
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・部活動指導員は学校職員となるため、各自治体で設定する募集条件が厳しい場合が多く、なり手不足が発生している。

・報酬は国費だけでなく自治体も負担しており、各自治体の財政状況に影響される。

・報酬は1時間あたり1,500~2,000円程度、勤務は1日2~3時間程度、週1~2日程度であることが多く、年間計画の作成や安全対策などの職責を考えると収入が少ない。

・平日の夕方の指導などを考えると、退職した元教員などの年配者の採用が多くなり、若い競技経験者が少ない。

https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20190831-00140590

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地域のスポーツクラブと部活動の連携
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●広域スポーツセンターが地域のスポーツを支援(山梨県)

・山梨県では、広域スポーツセンターが総合型地域スポーツクラブの設立・運営を支援している。

・県内を5つのエリアに分けて各地域のクラブを紹介し、子どもから高齢者まで世代を超えてスポーツに親しむことを推奨している。

・学校から部活動をなくすことが目的ではなく、部活指導者との連携を図ることで、これまで以上に長い視野で指導を行うことを目指す。

https://www.sports.pref.yamanashi.jp/club/221/

・スポーツ指導者バンクに指導者を登録し、総合型スポーツクラブなど地域のスポーツ団体に紹介・派遣を行っている。

https://www.sports.pref.yamanashi.jp/bank/96/

●土日の部活動を地域のクラブへ(岐阜県岐阜市)

・岐阜市教育委員会は2021年に学校業務改革についてとりまとめ、その中で部活動の地域移行を進めていくとしている。

・2023年度「休日の部活動の段階的な地域移行」に向けて、課題の分析を行った。

・「保護者クラブ」「総合型地域スポーツクラブ」を受け皿とし、指導者に教員や部活動指導員も含めた活用を指摘している。

・中体連との関係では、合同チームでの出場の承認、大会運営にかかる教職員の負担軽減などを求め、中体連だけでなく協会や連盟への協力を求めている。

https://www.city.gifu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/927/2021-1siryou3.pdf
(9、10、18~23ページ)

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民間の人材活用を進める自治体の取り組み
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●小学校の部活動を民間委託(愛知県名古屋市)

・名古屋市では、小学4~6年生を対象とした放課後の部活動を、民間委託による「新たな運動・文化活動」として実施している。

・週3日、1日あたり1時間半以内の活動を学校内で行い、運営は受託した事業者の指導者によって行われている。

・曜日ごとに2種目から1つを選び、最大3種目に取り組むことができる。

・参加費は無料だが、市が指定する保険(年間数百円)に加入する必要がある。

https://www.city.nagoya.jp/kyoiku/page/0000129667.html

・なごや部活動人材バンクを設立し、就業として人材の募集と研修を行っている。

・指導資格がない人に対しても、児童に対する指導の仕方や安全管理の研修をすること、現場には各種目2名以上配置することなどで、門戸を広くしている。

https://jinzaibank-nagoya.jp/

●地域企業の実業団選手OBや経験者を人材バンクに登録(東京都日野市)

・日野市では、地域企業の実業団選手OBや経験者を社内で登録してもらい、スポーツ指導者人材バンクに情報提供している。

・人材バンクには、この他に体育協会のスポーツ指導者、大学生なども登録し、面談・研修の後に市民向けスポーツ指導や部活動などに派遣している。

・学校には、部活動指導員や外部指導者として要望に合わせた人材を派遣している。

・スポーツ選手のセカンドキャリアや、企業の社会貢献の観点としても期待され、企業・地域連携を目指す。

https://sports.go.jp/tag/school/post-56.html

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チェックポイント詳細
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●教員の部活動の負担軽減

・部活動における教員の従事時間や土日出勤などの実態把握はできているか。

・部活動指導員や外部指導者による教員の負担軽減を検証しているか。

・大会や遠征など引率が多い部活動に、優先的に部活指導員を配置しているか。

・外部指導者を部活動指導員に変更すべきではないか。

●児童生徒のための部活動支援

・教員不足などによって満足な活動量が得られていない部活動を把握しているか。

・初心者レベルの児童生徒と、競技の専門性を高めたい児童生徒の両方のニーズに対応しているか。

・地域のスポーツ団体と交流し、役割分担を調整できないか。

・学校単位だけでなく、地域のスポーツ団体による大会出場を認めるなど、出場要件の緩和をできないか。

●部活動を指導できる人材の確保

・人材バンクなど、地域人材の情報収集や派遣の制度はできているか。

・地元のプロスポーツチーム、実業団などとの連携や交流を行なっているか。

・地元の大学の部活動やスポーツ系学部などから派遣してもらうことはできないか。

・民間の人材派遣企業や、ジム・スポーツ教室へ委託できないか。

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さらなる調査のためのリンク集
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地域×スポーツクラブ産業研究会(名古屋部活動民営化の仕組み)(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/chiiki_sports_club/pdf/003_05_00.pdf

学校運動部活動指導者の実態に関する調査(公益財団法人日本スポーツ協会)
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/katsudousuishin/doc/R3_houkokusho.pdf
(本編)

地域文化倶楽部の創設に向けた調査研究事例集(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/chiikibunkakurabu/pdf/92856901_02.pdf

【コロナ】運動時のマスクは不要!部活動など学校における感染症対策(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/6291/

【財政】来年度予算の目玉は?ようやく出そろった各省庁の概算要求(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/5895/

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