【建設】安全で良好な景観に向けて、新たな「無電柱化推進計画」を策定(社会・技術動向)

<概要>

●国は5ヵ年計画で約4,000kmの道路の無電柱化に着手

●無電柱化の推進に関する法律

●低コスト化に向けた検討が進む

●都道府県によって整備に大きな差が出ている

●実施計画や条例など自治体の取り組み

<チェックポイント>

●無電柱化について計画を立てているか

●施工が必要な場所の選定

<掲載事例>

●東京都

●京都府京都市、茨城県つくば市

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新しい「無電柱化推進計画」を策定
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●5ヵ年計画で約4,000kmの道路の無電柱化に着手

・国土交通省は高齢化や頻発する災害等に対応するため、2021年度を初年度として5ヵ年で道路の無電柱化推進計画を策定。

・新設電柱を増やさない、徹底したコスト縮減、事業のスピードアップの3つのポイントを掲げている。

・緊急輸送道路・特定道路の着手率、世界文化遺産周辺など景観保全が必要な地区数などを達成指標として設定した。

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001405488.pdf

●緊急輸送道路の安全を確保するための法改正

・2021年の通常国会において、踏切道改良促進法が改正され、9月25日から施行された。

・緊急輸送道路の沿道区域において、電柱等の工作物を設置する場合、道路管理者へ届出や勧告が定められた。

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001424409.pdf

・直轄国道の緊急輸送道路では既に、2016年から電柱の新設が禁止されている。

https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_17.html

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これまでの進捗状況と低コスト化への動き
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●無電柱化の推進に関する法律

・災害の防止・安全な交通の確保・良好な景観の形成等を目的に、2016年に「無電柱化の推進に関する法律」が制定された。

・日本の無電柱化は、欧米やアジアの主要都市と比べて著しく遅れている。

・進まない原因は、コストが高い、事業者との調整、地上機器の設置場所の調整、道路幅が狭い、などが挙げられている。

https://www.mlit.go.jp/common/001152384.pdf
(1~2ページ)

●低コスト化に向けた検討が進む

・国土交通省は、無電柱化低コスト手法の技術的検証に関する委員会を設置し、様々な手法を検討してきた。

・検証結果をまとめ、土地の特性や広さなどに応じて導入できる手法を紹介し、実施した施工例を提示している。

https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/pdf/tebiki-ver2.pdf
(施工事例は35ページ以降)

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都道府県によって整備に大きな差が出ている
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●無電柱化は都市部で整備が進んでいる

・無電柱化率は東京都がトップだが、それでも5%弱の整備率となっている。

・都市部の方が比較的整備が進んでいるが、関東でも遅れているところはあり、整備率が0.5%に満たない県もある。

https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_13_02.html

・法律ができてまだわずかなので、条例を制定している自治体は少ない。

https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/pdf/local-torikumi.pdf

●無電柱化推進条例と無電柱化計画(東京都)

・東京都は法整備を受け、2017年に無電柱化推進条例を定め、無電柱化計画を策定することとした。

・国道・都道だけでなく、区市町村道での取り組みに対して、財政的支援を明確にして促進している。

・まちづくりの諸制度の活用や、開発のタイミングに合わせた実施を提案している。

https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000052901.pdf
(31~39、42~48ページ)

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実施計画や条例など自治体の取り組み
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●先斗町の狭い通りで無電柱化に成功(京都府京都市)

・京都祇園の先斗町は、道路が狭くなおかつ電力供給量が大きい通りであり、施工が難しい場所であった。

・市の「界わい景観整備地区」に指定されており、市として景観を守り再生する必要があり、また地元の熱心な姿勢があった。

・地上機器(トランス)の設置場所が公用地だけでは足りず、民有地にも設置する必要があり交渉が難航した。

・道の狭さから小型ボックスを導入し、結果的に低コスト化を図ることができた。

https://nponpc.net/info/実際の事例をインタビュー、京都先斗町無電柱化/

・京都市は、「今後の無電柱化の進め方」実施計画を作成し、効率的で計画的な無電柱化を進めている。

・概ね10年間で、景観保全が必要な地区の70%において無電柱化に着手する。(現況は50%)

・無電柱化によって、防災拠点へのアクセス向上に向けた幹線道路の整備と、バリアフリー化を含む安全で快適な歩行空間の確保を目指す。

https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/cmsfiles/contents/0000250/250605/zissikeikaku.pdf
(1~3ページ)

●「面」で無電柱化エリアを指定した取り組み(茨城県つくば市)

・つくば市では、国の法律に先駆けて「つくば無電柱化条例」を施行した。

・多くの自治体は通りごとの「線」で計画を立てているが、つくば市では「面」で区域を指定している。

・新たに電線類を敷設する者には、照度を確保した照明の設置を義務付けている。

https://www.city.tsukuba.lg.jp/shisei/torikumi/1001966.html

・市としては、電柱を抜くのではなく、新たな電柱が増えるのを抑えるために条例が必要と考えた。

・主に電力会社との交渉がネックになるので、条例によって違反者への是正勧告や公表を定めることによって強い意志を示した。

https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2020/01/08/110469/

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チェックポイント詳細
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●無電柱化について計画を立てているか

・国の無電柱化推進計画を受けて、自治体として取り組む予定があるか。

・条例を制定して無電柱化を推進してはどうか。

・無電柱化に関する基本計画を策定してはどうか。

●施工が必要な場所の選定

・新たな開発行為の計画があれば、合わせて無電柱化をできないか。

・防災や交通安全上、電柱を撤去すべき場所はないか。

・観光や景観の観点で、無電柱化をすべき場所はないか。

・住民から無電柱化の要望がある地域はないか。

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さらなる調査のためのリンク集
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無電柱化の推進に関する取り組みのまとめ(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/chicyuka/pdf09/04.pdf

無電柱化の整備事例(国土交通省東北地方整備局)
https://www.thr.mlit.go.jp/road/sesaku/denchu/htdocs/example/index.html

建設残土と環境破壊・災害の事例(自治体問題研究会)
https://www.jichiken.jp/article/0263/

無電柱化推進計画の事例(自治体通信online)
https://www.jt-tsushin.jp/article/casestudy_undergrounding_case/

【防災】自治体と電力会社が連携協定!災害による長期停電からの早期復旧を目指して(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/5956/

【交通】踏切道改良促進法が改正、渋滞を減らす自治体の取り組み(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/6213/

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