【産業】コロナ禍で落ち込んだ製造業を支援(1)中小企業振興条例と基本計画(事例研究)

<概要>

●ものづくり産業の売上・設備投資・就業者数は減少傾向

●経済産業省は厚生労働省・文部科学省などと連携して様々な施策を展開

●中小企業基盤整備機構では、ものづくり企業が集まる展示会への出店を支援

●幅広い支援メニューを提供する自治体の事例

●ものづくり基本条例のパイオニア自治体

<チェックポイント>

●自治体における、ものづくり産業の現状

●ものづくり産業に対する支援策

<掲載事例>

●高知県

●静岡県静岡市

●東京都墨田区、大阪府八尾市

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ものづくり産業の売上・設備投資・就業者数は減少傾向
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・2021年版ものづくり白書によると、2020年以降の設備投資は減少傾向にあり、今後3年間の売り上げ見通しも減少が予測されている。

・サプライチェーンの強靭化が求められると同時に、カーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが急速に進展。

・製造業の生き残りに向けて上記の3点(レジリエンス・グリーン・デジタル)を、ニューノーマルとして取り組みを進める。

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2021/pdf/gaiyo.pdf
(1~4ページ)

・国内の製造業就業者数は、2002年と2020年を比較すると1割以上減少しており、特に若年就業者は3割以上減少している。

・デジタル技術を「活用している」とした企業は54.0%に上り、7割以上の企業が従業員に「デジタル技術を活かすための能力を身につける」ことを求めている。

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2021/pdf/gaiyo.pdf
(28~31ページ)

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経済産業省によるものづくり振興策
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●厚生労働省・文部科学省などと連携して様々な施策を展開

・経済産業省は、理化学研究所・科学技術振興機構・情報通信研究機構・産業技術総合研究所などの各種研究機関を活用し、基盤技術の開発を支援。

・ものづくり労働者の確保のため、厚生労働省とは就労支援・職業訓練の施策を実施、文部科学省とは人材育成・新卒就業支援などを実施。

・既存の産業だけでなく、戦略分野(自動走行、ロボット等)での産業育成に注力。

・文部科学省とともに、学校教育におけるものづくり教育を充実するため、理数教育の強化・高度技術人材の育成・技術者に対する生涯学習などを支援。

https://www.meti.go.jp/press/2021/05/20210528002/20210528002-12.pdf
(258~285ページ)

●中小企業基盤整備機構では、ものづくり企業が集まる展示会へ出店支援

・中小企業基盤整備機構は、経営基盤強化や販路開拓などの経営相談を行っており、全国的なネットワークを持っている。

・新価値創造展という日本最大級の中小企業・ベンチャー展示会を開催し、販路拡大に向けたマッチングを行っている。

・「東京インターナショナルギフトショー」「FOODEX JAPAN」に、中小企業総合展としてブースを確保し、全国から選りすぐりの企業に出展してもらっている。

https://www.smrj.go.jp/event/index.html

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幅広い支援メニューを提供する自治体の事例
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●起業から事業承継、有利な税制措置までアドバイス(高知県)

・高知県商工労働部は、ものづくり企業のあらゆる事業活動に活かせる補助制度を包括的に案内している。

・(公財)高知県産業振興センターは、県の施策を実施する実働部隊として相談事業等を実施。

・産業振興センター内にある「ものづくり地産地消・外商センター」では、展示会等への出展機会を提供したり、製品の販路マッチング等を行っている。

https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/151401/files/2020042000217/file_202110262155654_1.pdf

https://joho-kochi.or.jp/mono/index.html

●ものづくり産業振興基本計画を毎年検証(静岡県静岡市)

・「箸から造船まで」と言われるほど幅広い種類の製造業がある静岡市は、ものづくり産業振興条例を2011年に制定。

・条例に基づき、「ものづくり産業振興基本計画」を策定し、毎年実施状況の報告をしている。

・6つの方針(企業誘致・販路開拓・技術開発・中小企業・人材育成・伝統工芸)について、成果指標を示して結果と評価を公表している。

https://www.city.shizuoka.lg.jp/000_004191.html

https://www.city.shizuoka.lg.jp/000887635.pdf

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中小企業振興条例のパイオニア自治体
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●1979年に日本初の中小企業振興基本条例を制定(東京都墨田区)

・墨田区モデル(条例制定・地域企業の状況調査・振興会議の設置)は、今でも有効性が高いと認められ、多くの自治体で採用されている。

・区内企業検索システムや産業会館など、利用者に使いやすい施設・制度を設計している。

・ものづくりでイノベーションを起こすことを目指し、「新ものづくり創出拠点」を10か所設置し、クリエイターの開発機会を創出している。

https://www.city.sumida.lg.jp/kuseijoho/sumida_kihon/ku_kakusyukeikaku/sangyou_masterplan.files/stayfab.pdf
(46~63ページ)

https://www.city.sumida.lg.jp/sangyo_jigyosya/sangyo/monodukuri_sien/sin_monodukuri/shinmonokyotenitiran.html

●条例制定により、中小企業と行政が一体感を持って目的を共有(大阪府八尾市)

・八尾市の中小企業地域経済振興基本条例では、中小企業と市民生活が深く関わっており、中小企業振興が市全体のメリットとなることを明記。

https://www.city.yao.osaka.jp/0000014414.html

・産業政策課を「魅力創造部」に位置づけ、市民と中小企業と行政の信頼感の醸成を図っている。

・中小製造業等からのヒアリングを基に、ものづくり支援メニューを幅広く展開している。

・八尾ものづくりnetポータルサイトで、企業情報、各種表彰企業、企業誘致などの発信を行っている。

https://www.yao-mono.jp/

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チェックポイント詳細
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●自治体における、ものづくり産業の現状

・自治体内の製造業事業者の情報の収集はできているか。

・地場のものづくり産業の強みなどは分析しているか。

・技術やアイデア、特産品、文化、芸術など特出した製品を見落としていないか。

・商工会議所、商工会など産業団体との連携は取れているか。

●ものづくり産業に対する支援策

・ものづくり産業を支援する体制や政策はあるか。

・地元の製造業者同士で、販路の拡大や、開発に向けたアイデアを共有する場はあるか。

・体系的に製造業を支援するために、産業振興基本条例や基本計画を策定してはどうか。

・(仮)ものづくり支援センターのような、専門家による組織を設置してはどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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ものづくり基盤技術の振興施策(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2021/pdf/all.pdf

ものづくり/情報/流通・サービス 政策一覧(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service.html

新価値創造展2021(中小企業基盤整備機構)
https://shinkachi-portal.smrj.go.jp/shinkachi2021/

【経済】地域密着型産業の立ち上げを支援するローカル10,000プロジェクト(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/6052/

【中小企業支援】中小企業・小規模事業者に関係する予算・税制改正のポイント(政策立案データベース)
https://policy-making.com/db/4641/

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