【福祉】国と地方の実務者協議がスタート!生活保護の運用上の課題(国政情報)

<概要>

●生活保護に関する国と地方の実務者協議

●生活保護の利用を妨げてきた「扶養照会」

●ケースワーカーの配置基準を満たさない自治体が7割

●自治体によって大きな差があるエアコン購入費の支給率

●生活困窮者に寄り添う自治体の総合支援

<チェックポイント>

●生活保護の人数と保護率

●生活保護の運用実態

●生活困窮者に対する総合支援

<掲載事例>

●兵庫県尼崎市、東京都中野区、神奈川県座間市、岡山県美作市

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生活保護に関する国と地方の実務者協議
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●生活保護に関する国と地方の実務者協議が開始

・2021年11月19日、生活保護制度の見直しのために、国と地方の実務者協議が開始された。

・2018年に生活保護法が改正された際に、附則で施行後5年を目途とした見直し規定が置かれていた。

・2020年12月の「新経済・財政再生計画改革工程表2020」にも、「真に必要な保護の在り方や更なる自立促進のための施策」が記載されていた。

https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/000858335.pdf

●前回2017年の実務者協議において変更された項目

・データに基づき、生活保護受給者の生活習慣病の予防等を推進する、「被保護者健康管理支援事業」を2021年1月から開始。

・「被保護者健康管理支援事業」において、「付き添い指導員」 や医師・保健師など専門職を雇用する経費を国庫負担の対象とした。

・無料低額宿泊所の最低基準など規制を強化し、単独での居住が困難な生活保護受給者に対し、 「日常生活支援住居施設」の仕組みを創設。

・生活保護受給世帯の子どもが大学等に進学した際に、新生活の立ち上げ費用として一時金を給付する「進学準備給付金」を創設。

・2018年より、医療扶助は原則として、後発医薬品による給付を行うことと した

https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/000858336.pdf

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生活保護の利用を妨げてきた「扶養照会」
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・2021年1月の予算委員会で、総理が「コロナで困窮しても、最終的には生活保護がある」と答弁して炎上した。

・厳しい資産要件や、福祉事務所が親族に連絡する「扶養照会」など、生活保護の利用を妨げる実態が批判の原因となった。

https://www.asahi.com/articles/ASP254C9CP22ULZU009.html

・厚生労働省は2月、扶養照会が不要となる基準に「10年程度の音信不通」「親族に借金」「縁が切られている」などを追加・緩和。

https://www.sankei.com/article/20210227-QAVR324QBRJKRPD7BOSWOPEOPQ/

・さらに4月1日には、照会を拒む申請者の意向を尊重するよう求める通知を自治体に出した。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/96687

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自治体における生活保護の運用課題
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●ケースワーカーの配置基準を満たさない自治体が7割

・生活保護受給者の支援にあたるケースワーカーは、社会福祉法で配置基準が定められている。

・厚労省の調査で、指定市・東京23区・県庁所在市・中核市の全国107市区のうち、配置標準を満たしていない自治体が7割だった。

・都市部では生活保護世帯80に対してケースワーカー1人の配置が標準だが、1人で平均100以上の保護世帯を担当する自治体は32にのぼる。

https://www.asahi.com/articles/ASNDJ560NNCZUUPI002.html

●自治体によって大きな差があるエアコン購入費の支給率

・高齢者や障害者、子どもがいるなどの条件を満たせば支給されるエアコン購入費も、自治体によって支給件数に大きな差がある。

・支給率が低い自治体の中には、支給の仕組みがあることを積極的に説明していないところも少なくないとみられる。

・支給率が高い兵庫県尼崎市は、新たに生活保護を利用する世帯がエアコンを持っていない場合、ケースワーカーが口頭で申し込みを促している。

https://www.asahi.com/articles/ASP7F6WGVP7FUTFL00P.html

●新庁舎に入れてもらえない生活保護担当課

・東京都内では、区役所庁舎の改修や移転に伴い、生活保護担当課が新庁舎に入れなかったという事例が、板橋区、豊島区、渋谷区で相次いでいる。

・板橋区議会には、「生活保護受給者が役所の前に並ぶのはみっともない」と窓口を別の場所に移すよう主張した議員もいた。

・中野区ではパブリックコメントにより、生活保護担当課も新庁舎に入れるようになった。

https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20211012/pol/00m/010/009000c

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生活困窮者に寄り添う自治体の総合支援
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●生活困窮者に寄り添う「断らない相談支援」(神奈川県座間市)

・神奈川県座間市は、生活困窮者の課題解決を相談員が一緒に考え、具体的なプランを作成して支援する「断らない相談支援」を実施。

https://www.city.zama.kanagawa.jp/www/contents/1554882229524/index.html

・窓口でヒアリングした内容を「つなぐシート」に書き、担当者が適切な部署まで困窮者を連れて行ってシートを渡す。

https://news.yahoo.co.jp/articles/04c4ae2cc96c68f4681afc814508afbe5696ab5a?page=1

・ハローワークや外部の就労支援団体、訪問支援団体、弁護士など「チーム座間」が、月1回の支援調整会議で情報を共有。

https://news.yahoo.co.jp/articles/56fe6cc7a1b42cdc195947eebc0d94a21e357f6e?page=3

●総合相談窓口から総合相談支援センターへ(岡山県美作市)

・2015年に生活困窮者自立支援法が施行される5年前から、総合相談係で生活困窮やDV、引きこもりなど様々な問題を支援してきた。

・様々な自立支援を行った結果、生活保護率は2012年のピーク時から6割減。

・2021年度から総合相談支援センターを設置し、縦割りではない支援、市民のSOSを拾うアウトリーチ、多機関の連携に取り組む。

http://www.city.mimasaka.lg.jp/soshiki/hoken/fukushi/sougousoudan/1626851856951.html

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チェックポイント詳細
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●生活保護の人数と保護率

・生活保護の人数と保護率の推移はどうか。

・相談・申請・保護決定の人数はどうか。

●生活保護の運用実態

・扶養照会の基準緩和にきちんと対応しているか。

・エアコン購入費の支給率は1000世帯あたり何件か。

・ケースワーカーの配置基準と実際の人数はどうか。

●生活困窮者に対する総合支援

・総合支援の窓口や部署はあるか。

・庁内の他部署にどのようにつないでいるか。

・外部の団体や専門家とどのように連携しているか。

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さらなる調査のためのリンク集
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生活保護制度の現状について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/000858337.pdf

生活保護決裁データベース
http://seihodb.jp

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