【財政】9月決算のヒント(6)地方財政計画・予算編成上の留意事項を読み返す(政策アイディア)

<概要>

●2020年度予算の元となった「地方財政計画」と「予算編成上の留意事項」

●コロナ禍で税収が当初見込みより大きく減収

●地方財政計画のトピックは「防災・減災事業」「ICT」「森林環境譲与税」

●地域医療の確保策の一方で厚生労働省は厳しい方針

●「公共施設管理の個別計画」と「公営企業会計の経営戦略」も2020年度末までに策定

<チェックポイント>

●2020年度当初予算の税収見込みとその後の変化

●2020年度地方財政計画の主要トピック

●公立・公的病院の経営状況

●公共施設の適正な管理に向けた計画づくり

●企業会計における経営戦略の策定状況

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決算対象となる2020年度予算の全国共通トピックを確認
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●「地方財政計画」と「地方財政の見通し・予算編成上の留意事項等」

・2020年度決算の審査においては、2020年度予算を振り返る作業が不可欠。

・2020年度当初予算は、国の「地方財政計画の概要」「地方財政の見通し・予算編成上の留意事項等」を参考に編成。

https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/chizai_01_00005.html

https://www.soumu.go.jp/main_content/000665614.pdf

・上記資料には国が力を入れたい政策が明記され、全国自治体の共通トピックになっている。

●コロナ禍で税収が当初見込みより大きく減収

・2020年度地方財政計画では消費税増税もあり、2019年度より地方税は0.7兆円増の43.5 兆円の見込みであった。

・各自治体もこの傾向をもとに当初予算では税収予測をしているところが多数。決算時にはその後の変化を検証する必要がある。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000730803.pdf
(1ページ)

・全国的にはコロナ禍により大幅な減収であり、減収補てん債などの発行に追われた。

https://policy-making.com/db/6424/

・また、税金の徴収猶予に伴う猶予特例債といった、当初の地方財政計画・予算編成上の留意事項より大きく外れた事態も発生。

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/15682/00379413/r2-11-5.pdf

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「地方財政計画」に見る2020年度の共通トピック
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●2020年度地方財政計画の重点政策

・2020年度地方財政計画の概要において、1ページ単位で記述されている主要トピックは国がその年度に力を入れたい項目。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000730804.pdf
(8~15ページ)

・頻発する自然災害に対して、「緊急浚渫推進事業費の創設(9ページ)」「緊急防災・減災事業費の対象事業の拡充等(12ページ)」を実施。

・指定避難所や災害対策の拠点施設等の浸水対策(12ページ)などが列挙されており、どのような事業を実施したかの検証が必要。

・ICTインフラの整備の推進(13ページ)として、光ファイバの整備などに支援策が講じられたが、自治体で実施したかどうかを確認。

・森林環境譲与税(10ページ)は全国で200億円から400億円に倍増、各自治体で交付額や使途について確認が必要。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000730804.pdf

●地域医療の確保策の一方で厚生労働省は厳しい方針

・過疎地など経営条件の厳しい地域では、中核的な公立病院に対して特別交付税の増加につながる支援策を実施。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000730804.pdf
(15ページ)

・一方で、厚生労働省は2019年度に病院の再編統合を求めて400を超える病院名一覧を公表、2020年1月に再検証を求める通知を出した。

https://www.sankei.com/article/20190926-F35DMLCDYJMW3NLSJNZPLM5SWU/

https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/000585491.pdf

・2020年度9月を期限とされた検証はコロナ禍で延期されたが、改めて公立・公的病院の経営状況を決算で確認する必要がある。

https://policy-making.com/db/5052/

https://gemmed.ghc-j.com/?p=35874

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「予算編成上の留意事項」でさらに精査
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●公共施設の管理についての個別計画は2020年度中に策定

・「地方財政計画」で見えにくい細かな政策は、「地方財政の見通し・予算編成上の留意事項等」で精査できる。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000665614.pdf

・過去に建設された公共施設等を総合的かつ計画的に管理することは、ここ数年の全国共通のトピックであった。

・特に、2020年度末までに「個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)」を策定しなければならなかった。

・個別施設計画を元に総合管理計画を精緻化し、効果額を示した上で2021年度までに見直すことも求められた。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000665614.pdf
(16ページ)

・2018年に通知された「総合管理計画の策定指針の改定」も踏まえて、2020年度中に総合管理計画をどのように改定したか確認する必要がある。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000537860.pdf
(1、2、4ページ)

●公営企業会計の経営戦略策定も2020年度末までを推奨

・各公営企業においては、中長期的な基本計画である経営戦略を、遅くとも2020年度末までに策定することが求められた。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000665614.pdf
(47ページ)

・地方公営企業会計は上水道、病院、交通など多くの分野にまたがっており、経営状況の確認と中長期的な戦略を確認する必要がある。

https://policy-making.com/db/6135/

・特に下水道は、企業会計の適用が1650自治体のうち610自治体しかなく、482自治体が取り組み中。

・経営戦略相当の中長期経営計画を策定していない可能性もある。

https://policy-making.com/db/5249/

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チェックポイント詳細
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●2020年度当初予算の税収見込みとその後の変化

・2020年度当初予算の税収見込みはどうだったか。

・税収減や猶予特例債の新設など、その後の変化にどう対応したか。

●2020年度地方財政計画の主要トピック

・緊急浚渫推進事業費、緊急防災・減災事業費の対象事業は存在するか。

・ICTインフラの整備の推進対象事業は存在するか。

・森林環境譲与税の交付額と使途は。

●公立・公的病院の経営状況

・条件不利地域で中核的な病院を保持している場合、特別交付税の増加は。

・公立・公的病院の経営状況とコロナ禍での影響は。

●公共施設の適正な管理に向けた計画づくり

・2020年度中の公共施設の個別施設計画の策定状況と中身は。

・2021年度までに策定が推奨されている総合管理計画の見直しは。

●企業会計における経営戦略の策定状況

・2020年度の各企業会計における経営状況と、経営戦略の策定状況は。

・下水道の企業会計適用がない場合、中長期経営計画は策定されているか。

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さらなる調査のためのリンク集
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【予算】全国共通の予算フレームがわかる「地方財政対策」を読む(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5289/

【財政】必見!総務省が地方議会向けに自治体予算の論点を公表(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5336/

【財政】9月決算のヒント(4)コロナによる減収、自治体はどう対応したか?(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/6424/

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