【教育】スポーツ・文化に続き図書館・博物館も!教育委員会から首長部局への移管(政策アイディア)

<概要>

●教育委員会は首長から独立した合議制執行機関

●2007年からスポーツ・文化部門を首長部局へ移管可能に

●2019年から図書館・博物館なども移管が可能に

●教育委員会の権限が弱まる危険性

●生涯学習の移管や意見聴取など自治体の取り組み

<チェックポイント>

●文化・スポーツ部門の運営主体

●教育委員会より首長部局への移管

●予算提出時の教育委員会への意見聴取

<掲載事例>

●熊本県

●長野県須坂市、岐阜県瑞穂市

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文化・スポーツ部門を教育委員会から首長部局へ
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●教育委員会は首長から独立した合議制執行機関

・市民が選ぶ独任制の首長のほかに、長から独立した地位・権限を持つ「行政委員会」がある。

・教育委員会は、首長から独立した政治的に中立な行政委員会であり、合議制の執行機関。

・教育委員会は、教育・生涯学習・文化・スポーツ等の施策を展開する。

https://www.mext.go.jp/a_menu/chihou/05071301.htm

・教育委員会の組織や権限は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(以下、地教行法)に定義されている。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=331AC0000000162

●2007年からスポーツ・文化部門を首長部局へ移管可能に

・2007年の地方教育行政法改正で、スポーツ・文化行政について、条例の定めにより首長が事務を執行できるようになった。

・スポーツ・文化行政は地域づくりと密接な関連があり、 他の地域振興と共に首長が一元的に所管できるようにする狙い。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo1/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2013/08/27/1338909_01.pdf
(1ページ)

・特にスポーツ部門は移管が進み、例えば東京都多摩地区では、2017年時点で26市のうち11市が市長部局にスポーツ部門を所管。

https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/shisei/keikaku/bunya/shisei/sougoukyouikukaigi/h-soukyoukaigi/heisei29nendo/kikaku201800201.files/shiryo1.pdf

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図書館・博物館なども首長部局へ移管可能に
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●2019年から図書館・博物館なども移管が可能に

・2019年には、図書館・博物館・公民館などの「公立社会教育機関」も首長移管が可能となる法改正。

・内閣府は、地方自治体からの声を受け、観光・地域振興やまちづくり等に役立つ規制緩和実現と事例報告。

https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/jirei/doc/jirei_r1_2_6.pdf

・規則制定時などに意見を聞く、必要と認める場合は意見を述べる、など教育委員会が関与ができる余地も残す。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/__icsFiles/afieldfile/2019/06/28/1418411_1.pdf
(1ページ相当)

●教育委員会の権限が弱まる危険性

・スポーツ文化部門、図書館など公立社会教育施設の首長部局への移管は、教育委員会の権限を弱める危険性が指摘される。

・図書館問題研究会は「観光・地域振興の名のもとで…個人の学びが後退するのでは」との危惧から法改正反対を表明。

http://tomonken.sakura.ne.jp/tomonken/statement/chihoubunken/

・文科省は2019年法改正に伴い通知文を送り、制度の解説とともに留意事項を示す。

・「地方教育行政法に基づき、条例化や関連予算に関して教育委員会に意見をきかねばならない」と指摘。

・移管後も「社会教育に関する事務は引き続き教育委員会が管理・執行」「施設への助言・研修は教育委員会の業務」と指摘。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/10/1417797_1.pdf
(4、5ページ)

●教育委員会と首長の緊張関係が維持できるかが課題

・一般的に予算・人事を握る首長の権限は強大であり、行政委員会の独立性・中立性が弱まる場合もある。

・地方教育行政法では、教育関連の予算作成時に教育委員会の意見を聞かねばならないが、意見聴取をしているかチェックが必要。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=331AC0000000162
(第29条 教育委員会の意見聴取)

・移管以前に、博物館などを「補助執行」や「事務委任」としてすでに首長部局に管理を委ねている場合もある。

https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/teianbukai59shiryou03_1.pdf
(2ページ)

・施設の運営主体がどこであれ、首長との緊張関係や、教育委員会が社会教育に関する役割を果たせるかが重要。

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生涯学習の移管や意見聴取など自治体の取り組み
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●市長部局への移管で「生涯学習のまちづくり」をめざす(長野県須坂市)

・須坂市は、2008年という初期の段階で、教育委員会の所管だった生涯学習担当を市長部局へ移管。

・従来の個人的な学習から脱し、観光客の誘致や須坂市のブランド力を高める事業に転換したいと意義を説明。

https://www.city.suzaka.nagano.jp/contents/faq/answer.php?id=556

・「生涯学習のまちづくり」を掲げ、「生涯学習須坂学舎」による市民リーダー育成や「まちづくり出前講座」を充実。

https://www.city.suzaka.nagano.jp/contents/item.php?id=5923cdfef41e1

https://www.city.suzaka.nagano.jp/contents/item.php?id=5923ce42b0a81

●教育委員会への意見聴取を実施(岐阜県瑞穂市、熊本県)

・瑞穂市は、補正予算議案提出の前に予算案を示して「意見聴取」手続きを実施、予算案に対する教育委員会の意見を求める。

https://www.city.mizuho.lg.jp/secure/6327/H310122_11shiryo2.pdf

・熊本県では、求められた意見について教育長が教育委員会を代理して意見を申し出た後、教育委員会に報告して承認を求める。

https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/112605.pdf

・予算に関して、地方教育行政法第29条に基づく上記のような手続きをとっていない自治体も見受けられる。

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チェックポイント詳細
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●文化・スポーツ部門の運営主体

・文化・スポーツ部門の運営主体はどこか。

・特に図書館、博物館、公民館の運営主体はどこか。

●教育委員会より首長部局への移管

・文化、スポーツ部門の首長部局移管は実施されているか。

・2019年法改正された図書館や博物館、公民館の移管予定は。

・教育委員会所管であっても首長部局に「補助執行」や「委託」を実施しているか。

●予算提出時の教育委員会への意見聴取

・予算提出前に教育委員会に対して意見聴取は実施しているか。

・意見聴取時に教育委員会ではどのような議論が行われているか。

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さらなる調査のためのリンク集
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【教育】市民のための教育委員会をどう作るか(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5034/

【報酬】いま一度チェック!行政委員会の活動実態と報酬は適切か(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5281/

【文化】市民の文化教育拠点、公立図書館の評価と民間委託(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5481/

移管が基礎自治体のスポーツ行政組織におよぼす影響
https://www.waseda.jp/tokorozawa/kg/doc/50_ronbun/2018/5016A026_abs.pdf

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