<概要>
●消防団員は毎年減り続け、訓練に支障も
●消防団員の年額報酬は自治体ごとにバラバラで、最大50倍の格差
●報酬を団員個人ではなく消防団が使ってしまう問題も
●2022年4月から消防団の報酬に新基準が適用される
●団員特典や通訳隊など、新たな団員を増やす消防団の取り組み
<チェックポイント>
●消防団員の現状と推移
●消防団員の報酬額と支払い方法
●消防団の運営経費
●団員を増やす新しい取り組み
<掲載事例>
●長野県辰野町、千葉県館山市、茨城県土浦市
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重要だが人数が減り続けている消防団
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●消防団は非常勤特別職の公務員
・消防団は、火災や大規模災害発生時に自宅や職場から現場へ駆けつけて消火活動・救助活動を行う、非常勤特別職の地方公務員。
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/about/role/
・全国16.7万人の消防職員からなる常備消防と共に、消防組織法に基づき市町村に設置される消防機関。
・消防職員の5倍の人数がいる動員力と、地域の住民として地元事情に精通している地域密着性が特徴。
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/about/role/
●団員が減り続け、訓練に支障も
・消防団員数は1965年の133万人から2020年には81万8千人まで激減し、現在も年1%ずつ減り続けている。
・消防団員の中で被雇用者の割合は26%から73%に増え、平日の夜と土日しか活動できない団員が大半を占める。
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r2/items/special3.pdf
・長野県辰野町の消防団は、団員にとって負担の多い消防操法大会への参加を取りやめた。
・山火事が多い地域の特性に合わせて、代わりに複数のポンプを連結させる訓練を行い、さっそく成果が出た。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200421/k10012397931000.html
・すべての活動に参加できない団員のために、火災予防・広報団員や、大規模災害のみ活動する分団などの制度もある。
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/about/kinoubetsu/
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不透明で問題視された消防団の報酬
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●消防団の報酬額は自治体ごとにバラバラ
・消防団の報酬額は自治体によって様々で、全国では年額20万円と年額4千円で最大50倍もの格差がある。
・消防庁は年額36,500円を消防団の報酬として示しているが、その金額を報酬として支払っている自治体は少ない。
・消防団1人あたり36,500円の報酬分は地方交付税に算入されているが、その全額を報酬として支払うか、他の経費に充てるかは自治体の判断。
https://www.chunichi.co.jp/article/209619
●報酬を団員個人ではなく消防団が使ってしまう問題も
・報酬は本来、市町村から団員個人に支給されるが、山形県では市町村の6割で、報酬を消防分団や班が管理し使っていた。
・自治体は「最終的に個人に渡っていると認識」とするが、確認するシステムは無い。
https://www.yamagata-np.jp/news/202010/31/kj_2020103100683.php
・福岡県では消防団が団員から報酬を徴収して、自主訓練や地域イベント警備の経費に充てていた。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/452179/
・岡山県では、訓練参加や災害出動が一度も無い「幽霊団員」の分も報酬が支払われていることが発覚。
https://www.sankei.com/west/news/180513/wst1805130038-n1.html
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2022年4月から消防団の報酬に新基準
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●消防団員の処遇改善に向けた国の動き
・国会では2013年に、消防団の加入促進と処遇改善のため「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が成立。
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/about/laws/
・2021年4月13日、消防庁は「消防団員の処遇等に関する検討会」の中間報告を公表。
・出動手当を見直し、1日7,000円〜8,000円程度の出動報酬と、年額36,500円の年額報酬を支給するよう提言。
・報酬は団員個人に直接支給し、団員個人の経費と消防団の運営経費は区別して、市町村でそれぞれ予算措置するよう記された。
・実際に報酬が高い消防団や、報酬を引き上げた消防団では、団員の減少率が低く抑えられている。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000745093.pdf
(2ページ目、29ページ)
●消防庁の通知で2022年4月から新基準を実施
・ 中間報告を受けて4月13日、消防庁が自治体に向けて「消防団員の報酬等の基準の策定等について」を通知。
・36,500円の年額報酬と1日8,000円の出動報酬を標準とし、活動記録に基づいて市町村から団員個人に直接支給する。
・出動報酬の他に、団員の出動に係る費用弁償については必要額を措置する。
・2022年3月末までに消防団と協議し、必要な条例改正と予算措置を実施するよう求めている。
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-80/05/sankou1.pdf
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新たな団員を増やす消防団の取り組み
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●消防団員に地元のサポート企業から特典(千葉県館山市)
・千葉県館山市は2021年4月から、消防団員と家族が、サポート企業から様々なサービスを受けられるようにする取り組みを開始。
・地域の若者が消防団に入団しやすい環境づくりと、サポート企業の利用者が増えることが目的。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9f115c6447a154c632f6dd7679b94bf3e27a4adb
・消防団員カードを協力事業所で提示することで、購入金額の10%割引、ワンドリンク無料など、さまざま特典が受けられる。
https://www.city.tateyama.chiba.jp/anzen/page100160.html
●「通訳隊」を発足し、災害時に外国人を支援(茨城県土浦市)
・茨城県土浦市の消防団は2021年4月17日、大規模災害時に避難所で外国人を支援する「通訳隊」を発足。
・外国人や日本人の市民7人が入団し、英語・中国語・スペイン語・タイ語で避難所で困っている外国人住民の通訳を行う。
・災害時に専門で活動する「機能別消防団」の一つとして設けられた。
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16186574159643
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チェックポイント詳細
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●消防団員の現状と推移
・消防団員の人数はどのように推移しているか。
・消防団員の減少率や平均年齢はどのように推移しているか。
・消防団員の中で被雇用者の割合はどのように推移しているか。
●消防団員の報酬額と支払い方法
・消防団員の報酬や出動手当は、近隣の自治体と比べてどうか。
・交付税措置されている36,500円より少ない場合、理由はなぜか。
・報酬や手当を増額する議論はあるか。
・報酬や手当は団員個人の口座に直接振り込んでいるか。
・活動実績の無い「幽霊団員」の分まで報酬を支払っていないか。
●消防団の運営経費
・消防団の運営経費として、何にいくら支払っているか。
・団員個人の報酬を消防団が徴収している実態は無いか。
・地域イベント警備など消防団の活動実態に合わせた予算が必要ではないか。
●団員を増やす新しい取り組み
・地域の協力企業を集めて、団員に特典を設けてはどうか。
・大規模災害や広報、通訳など機能別消防団を検討してはどうか。
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さらなる調査のためのリンク集
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令和2年版消防白書(消防庁)
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r2/56707.html
消防団市区町村別報酬一覧表(消防庁)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000659111.pdf
【防災】災害対応にジェンダー視点の重要性、女性参加で防災能力を向上(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/6180/
【防災】地域防災力の中核としての消防団(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5012/