<概要>
●2020年の特殊詐欺は減少したものの、コロナ関連の手口が多かった
●コンビニ等での声かけを強化することで阻止率がアップ
●犯行グループから押収した名簿をもとに、警察が電話や戸別訪問で注意喚起
●アジトや名簿の提供禁止など、特殊詐欺を防ぐ条例の制定が進む
●録音機能付き電話や迷惑電話防止機器も有効
●被害にあってすぐに銀行へ連絡すれば、被害額が一部返還される
<チェックポイント>
●特殊詐欺対策の現状
●ポイントを絞った被害の阻止や啓発
●特殊詐欺を防ぐ条例制定
●録音機能付き電話や迷惑電話防止機器
<掲載事例>
●山形県、兵庫県、大分県、愛媛県
●神奈川県川崎市
●神奈川県横須賀市、神奈川県大和市
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2020年の特殊詐欺はコロナ禍で減少
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・2020年のオレオレ詐欺など特殊詐欺の被害件数は1万3526件(前年比19・7%減)で、被害金額は277億8千万円(同12%減)だった。
・コロナ禍で家族が自宅にいるケースが多く、詐欺の電話がかかってきても相談しやすい場面が多かったとみられる。
https://www.asahi.com/articles/ASP243DMKP23UTIL02Q.html
・給付金や補助金の支給、PCR検査やワクチンの予約などを口実にする、コロナ関連の特殊詐欺も多かった。
・高齢者の個人情報や資産状況などを聞き出そうとする「アポイントメント電話(アポ電)」も多く、全国で9万8757件確認された。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210204-OYT1T50136/
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特殊詐欺対策に力を入れている県
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●コンビニ対策等で特殊詐欺の阻止率が日本一に(山形県)
・山形県は2020年の特殊詐欺被害の阻止率が全国1位の77.1%で、被害額の減少率と検挙率も全国トップだった。
・高齢者宅の留守番電話設定促進や、詐欺の予兆電話(アポ電)発生状況のメール配信、犯人とのやりとりの動画公開などで被害が減少。
https://www.yamagata-np.jp/news/202102/19/kj_2021021900446.php
・コンビニや銀行に独自のチェックリストを配布し、コンビニ店員の声掛けによる被害阻止件数は年間50件・698万円に上った。
・今後はコンビニで1万円以上の電子マネーを購入した高齢者に、大学生がデザインした「それ、詐欺かも?」と書いた封筒を渡す。
https://www.yamagata-np.jp/news/202102/23/kj_2021022300524.php
・特殊詐欺の被害者と、特殊詐欺を見破った人をそれぞれヒアリングし、詐欺の手口や効果的な対策など地道な分析を続けている。
https://www.yamagata-np.jp/news/202102/06/kj_2021020600143.php
●犯行グループから押収した名簿をもとに電話や戸別訪問で注意喚起(兵庫県)
・兵庫県は2020年の特殊詐欺事件の認知件数と被害額が1.5倍となり、増加件数・増加額ともに全国最悪だった。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202102/0014077956.shtml
・2020年12月に県警本部の警察官ら200人規模で特殊詐欺総合対策本部を発足。
https://sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2020/12/09/32214/
・2021年2月1日には、犯行グループから押収した高齢者らの名簿を使って注意喚起をする専門のコールセンターを設置。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202102/0014048956.shtml
・さらに犯行グループの名簿をもとに警察官が高齢者宅を戸別訪問して、人海戦術で次の被害を防いでいる。
https://www.kobe-np.co.jp/news/himeji/202102/0014066015.shtml
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特殊詐欺を防ぐ条例の制定が進む
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●アジト対策と電話リスト対策を含めた条例を施行(大分県)
・大分県では「特殊詐欺等被害防止条例」が2020年4月から施行されている。
・理念や情報提供、通報や被害者支援といった一般的な内容に加えて、アジト対策と電話リスト対策が定められているのが特徴。
・建物の貸主や旅館営業者が、特殊詐欺等に利用される恐れがあることを知りながら部屋を貸すことを禁止。
・特殊詐欺等に利用される恐れがあることを知りながら名簿を提供することも禁じて、提供先を運転免許証等で確認することを求めている。
https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2075288.pdf
●全国初の罰則規定や、特殊詐欺への加担防止策を追加(愛媛県)
・愛媛県は「特殊詐欺撲滅条例案」のパブリックコメントを2021年1月に行った。
・大分県条例のアジト対策や電話リスト対策に加えて、特殊詐欺への加担防止のために必要な措置を盛り込んだ。
・特殊詐欺マニュアルや偽造身分証の携帯を禁止する他、SNSを通じた受け子の勧誘や、詐欺グループ参加の強要も禁ずる。
・アジト提供、マニュアルや偽造身分証の所持、詐欺グループへの勧誘・強要には全国初の罰則を規定。
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録音機能付き電話や迷惑電話防止機器も有効
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・神奈川県横須賀市は、70歳以上の高齢者が録音・警告機能つき電話を購入する費用の半額を補助。
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/2436/anzen/bouhan/dennwakihojo.html
・2018年10月から同様の補助制度を始めている神奈川県大和市では、特殊詐欺の認知件数が36%、被害総額が48%も減少した。
https://www.townnews.co.jp/0401/2020/02/07/517037.html
・神奈川県川崎市は、70歳以上が同居する世帯を対象に、迷惑電話防止機器2200台を2022年度までに無償で貸し出す。
https://www.townnews.co.jp/0201/2020/06/19/531022.html
・AIが通話内容を判断して、特殊詐欺の可能性が高い場合は本人や親族に通知する民間サービスも。
https://ascii.jp/elem/000/004/035/4035719/
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銀行へ連絡すれば、被害額が一部返還される
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・2008年から施行されている「振り込め詐欺救済法」により、被害者が申請すれば、被害額の一部が返還される可能性がある。
・被害者がすぐ振込先の金融機関に連絡すると、金融機関は口座を凍結し、口座の残額から被害回復分配金が支払われる仕組み。
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201108/2.html
・口座凍結後に60日以上の公告を経て口座が消滅し、その後、30日以上の公告の間に支払い申請をした被害者に残額が分配される。
https://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/kyuusai_pdf/06.pdf
(2、5、8ページ)
・公告されている口座番号は、預金保険機構のサイトで検索できる。
https://furikomesagi.dic.go.jp/index.php
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チェックポイント詳細
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●特殊詐欺対策の現状
・県内あるいは自治体内で特殊詐欺の認知件数や被害総額の推移はどうか。
・特殊詐欺対策でどのような施策を行ってきたか。
●ポイントを絞った被害の阻止や啓発
・コンビニや銀行ATMなど被害の発生場所や手口の分析は行っているか。
・被害が起こりやすい場所の事業者に声かけマニュアルを配ってはどうか。
・犯行グループから押収した名簿で、次の標的になり得る高齢者に注意喚起できないか。
●特殊詐欺を防ぐ条例制定
・特殊詐欺を防ぐための条例を制定しているか。
・アジトや電話リストの提供、詐欺グループへの勧誘を禁じてはどうか。
●録音機能付き電話や迷惑電話防止機器
・録音機能付き電話や迷惑電話防止機器はどの程度普及しているか。
・機器の貸し出しや購入補助を検討できないか。
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さらなる調査のためのリンク集
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特殊詐欺(主要手口)の地域別認知状況(警察庁)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/circumstances/
【防犯】空き巣や街頭犯罪、詐欺被害を防ぐ地域と警察の取り組み(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5287/