【雇用】コロナによる解雇を防ぐ!在籍出向を活用した「雇用シェア」とは?(社会・技術動向)

<概要>

●コロナによる解雇や雇い止めが7万5千人に

●解雇をせず他企業に在籍出向させる「雇用シェア」

●産業雇用安定センターがマッチングし、雇用調整助成金も使える

●国も新たな「産業雇用安定助成金」を追加経済対策に盛り込む

●雇用シェア促進協議会を設置し、促進応援金を支給する自治体

●兼業・副業も含めた短期的な雇用シェアを支援する自治体も

<チェックポイント>

●雇用情勢の推移

●雇用シェアに向けたマッチング

●補助金による雇用シェアの推進

<掲載事例>

●福井県、京都府、兵庫県

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コロナ禍で注目される「雇用シェア」とは
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●コロナによる解雇を防ぐ「雇用シェア」

・新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めは、2020年12月4日時点で見込みを含めて7万5千人に。

https://this.kiji.is/708926364996124672

・企業側も解雇や雇い止めをしてしまうと、経済回復後に人手不足となる恐れがあり、人件費負担を緩和しながら貴重な戦力を温存したい。

・人材を融通するための新事業を立ち上げる動きも出ており、緊急時に雇用を維持できる仕組みとして「雇用シェア」に注目が集まっている。

・航空大手のANAはグループ社員を家電量販店ノジマや高級スーパーの成城石井などに一時的に勤務させる方針。

https://www.sankei.com/economy/news/201030/ecn2010300029-n1.html

●雇用シェアで活用される「在籍出向」

・「在籍出向」とは、企業が人事交流や雇用調整などの目的で、社員をグループ会社などに出向させるための契約。

・この仕組みを、資本提携の有無や業種の枠を超えて、社員の雇用を守るために行うのが「雇用シェア」。

・人材派遣会社ではないので、社員を動かすことで企業が利益をあげてはならず、あくまで緊急避難的な措置。

https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2020/06/0601_3.html

●在籍出向、転籍出向、派遣の違い

・「在籍出向」では、出向先と出向元の間ではその従業員の在籍出向について契約を結び、従業員は両方の企業と労働契約を結ぶ。

・出向先の企業で働いていたとしても、出向元の企業と従業員の間の労働契約は消滅しない。

http://www.sangyokoyo.or.jp/important/p1ii5q0000002kwp-att/leaf_zaiseki.pdf

・「転籍出向」では出向元の企業と従業員の間の労働契約は消滅し、出向先の企業とのみ従業員は労働契約を結ぶ。

・「派遣」では派遣元の企業と派遣労働者の間で労働契約が結ばれ、派遣先の企業と派遣労働者の間では労働契約が結ばれない。

https://boxil.jp/beyond/a5515/

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国もマッチングや助成金で雇用シェアを推進
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●産業雇用安定センターが在籍出向のマッチング支援

・国と産業団体で設立した公益財団法人産業雇用安定センターは、2020年6月から「雇用を守る出向支援プログラム2020」を開始。

・新型コロナの影響により雇用の維持が困難となった業界と、人手不足に悩む業界との間で行われる、在籍型出向のマッチングを支援する。

http://www.sangyokoyo.or.jp/important/p1ii5q0000002kwp.html

・雇用の維持を目的に行う出向で、出向後は元の事業所に戻って働くことを予定している場合、雇用調整助成金が使える。

・出向労働者の賃金のうち出向元負担分か、出向前の通常賃金の1/2か、いずれか低い方の額に大企業は1/2、中小企業は2/3をかけて助成。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000682586.pdf

●在籍出向の助成金を追加経済対策に盛り込む

・政府は2020年12月8日に閣議決定する追加経済対策に、在籍出向を推進するための「産業雇用安定助成金」盛り込む。

・これまでの雇用調整助成金は対象が出向元企業だけで、額も休業助成と比べて低かった。

・新設する産業雇用安定助成金は、出向元だけでなく、従業員を受け入れやすくなるよう出向先も対象に含めて負担を軽減する。

https://mainichi.jp/articles/20201206/k00/00m/040/145000c

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雇用シェアを支援する自治体の事例
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●雇用シェア促進協議会を設置、応援金を支給(福井県)

・福井県と産業雇用安定センター福井事務所は、2020年10月8日に「雇用維持ならびに労働移動の支援に関する協定」を締結。

https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/rousei/kigyoushien/koyouijikkyoutei.html

・「雇用シェア促進協議会」を設置し、労働力過剰企業と人手不足企業との間における出向等のマッチングを促進。

・雇用シェアによる一時的な労働移動で雇用の維持を図った場合、出向元・出向先双方の事業者に1人5万円の「雇用シェア促進応援金」を支給。

https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/rousei/kigyoushien/koyoushea.html

●兼業・副業も含めた短期的な雇用シェアを支援(京都府)

・休業中や雇用の維持に不安を抱える企業と、一時的にでも人材を受入れたい企業の短期的な雇用シェアを支援するモデル事業。

http://www.pref.kyoto.jp/koyou/news/worksharing.html

・京都府のサイトに人材不足の企業が求人情報を掲載し、出向元の従業員と受け入れ企業の出会いの場となる企業説明会も開催。

・短期なので在籍出向だけでなく、「兼業・副業」といった形での雇用シェアも支援。

http://www.pref.kyoto.jp/koyou/news/documents/worksharing_r21204.pdf

●専用サイトを立ち上げ雇用シェアのマッチング(兵庫県)

・一時的に雇用の維持が難しくなった企業と、人手不足の業種を結びつける仲介事業を開始。

・専用のウェブサイトを立ち上げ、雇用の維持に悩む企業や職探しをする個人がサイトを閲覧し、求人側に直接連絡できる。

・一時的な人材の融通に伴う就業規則の変更といった各種の相談に、社会保険労務士が無料で応じる体制も整えた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62089460Q0A730C2ML0000

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チェックポイント詳細
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●雇用情勢の推移

・県内の失業率や求人倍率はどうなっているか。

・近隣の企業で大規模な人員削減が行われているか。

・非労働力人口や休業者数の推移はどうか。

●雇用シェアに向けたマッチング

・就職マッチングのために、ウェブやアプリを使った情報提供や相談は行っているか。

・地域経済産業局や産業雇用安定センターとの連携体制はどうか。

・人手不足の企業を把握し、雇用シェアの相談をしているか。

・雇用シェアを行う企業の相談に、社会保険労務士を活用してはどうか。

●補助金による雇用シェアの推進

・雇用シェアに雇用調整助成金が使えることを周知しているか。

・新設される産業雇用安定助成金を活用する準備はどうか。

・自治体独自で雇用シェアに対する助成金を設けてはどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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近畿経済産業局:コロナ禍における雇用安定に向けた連携について
https://www.kansai.meti.go.jp/2sangyokikaku/sharing.html

厚生労働省:ワークシェアリングに関する調査研究報告書
https://www.mhlw.go.jp/houdou/0104/h0426-4.html

【雇用】コロナで増える失業・休業!自治体による再就職支援の取り組み(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5934/

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