【動物愛護】餌やり防止や地域猫など、犬猫の殺処分をゼロにする取り組み(政策アイディア)

<概要>

●動物愛護法の改正で、地域課題として浮上した犬・猫の殺処分

●野良犬猫の再生産につながる無責任な「餌やり」が問題化

●「野良猫」「飼い主」「餌やり」など法的な定義は困難

●飼い主のいない猫を去勢して地域で育てる「地域猫」事業

●「人と猫との共生」条例など自治体の取り組み事例

<チェックポイント>

●動物愛護関係の市民相談

●「餌やり」防止・禁止の条例、啓発活動

●地域で一代限りで育てる「地域猫」活動

<掲載事例>

●福岡県、和歌山県、長野県

●兵庫県神戸市、宮城県仙台市

●長野県松本市、長野県上田市

●公益財団法人日本動物愛護協会、福岡県獣医師会

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犬・猫の引き取りと殺処分ゼロを目指して
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・動物愛護管理法が2019年6月に改正され、飼い主の責務や適正飼養のための規制が強化。

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_r010619_39_1.pdf

・犬・猫の引き取りと殺処分は減ってきているが、市民や動物愛護団体からは「殺処分ゼロ」を求める声。

・2016年の引き取り数は11.4万頭、殺処分は5.6万頭、引き取り原因は迷子、捨て犬・猫、野良犬・猫。

https://www.env.go.jp/council/14animal/y140-45/mat02_3.pdf
(21ページ)

・環境省は、適正飼養、虐待、多頭飼育、引き取り、殺処分・譲渡などの論点を示し、地域の政策課題に浮上。

https://www.env.go.jp/council/14animal/mat02.pdf

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野良犬猫を増やす無責任な「餌やり」
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●野良犬猫の再生産につながる無責任な「餌やり」が問題化

・所有者のいない犬・猫への餌やりで野良犬・猫が再生産され、餌の放置などで生活環境も悪化。

https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=498530&comment_sub_id=0&category_id=1060

https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00364236/index.html

・無責任な餌やりは最終的には自治体への引き取り、殺処分につながってしまう。

・環境省は「殺処分を減らすために」無責任な餌やり防止対策をあげ、普及啓発していくことが重要とする。

https://www.env.go.jp/council/14animal/mat02.pdf
(12ページ)

●「餌やり」防止の啓発パンフレットやポスター

・環境省は「無責任に餌をあげるのをやめましょう」と啓発パンフレットを作成。

・「無責任に餌だけを与える行為は、本当に猫にとって幸せなことでしょうか」と問いかける。

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2810a/pdf/03.pdf

・福岡県は「ノラ猫への無責任な餌やり防止ポスター」を作成、市町村及び県保健福祉(環境)事務所を通じて配布。

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/press-release/noraneko-esayari.html

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「餌やり」防止策の法的な課題
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・飼い猫と野良猫の区別は難しく、「間違って引き取れば窃盗」「当事者同士が解決すべき問題」と自治体からの指摘が相次ぐ。

https://www.env.go.jp/council/14animal/ref50_2.pdf
(3ページ相当)

・不適切な「餌やり」をどう定義するかは立法上も大きな課題。

・「広義の飼い主」としての責務、「飼い主」以外の餌やりの禁止、餌の始末など生活環境の悪化防止など、それぞれ明確な定義は困難。

・京都市や和歌山県の条例制定の際には、法律的観点から厳しい指摘をしたパブリックコメントが寄せられている。

https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000181/181226/3-6_iken_cat_6.pdf

https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/031600/80_doubutsu/nekopabukome_d/fil/pabukomeresult.pdf

・条例化により、夜中の人目につかない時間帯での隠れた「餌やり」など把握が困難になる危険性も。

http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-510/seiei/animalfaq/cat5.html

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飼い主のいない猫を「地域猫」に
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・単に「餌やり禁止」ではなく、動物愛護精神を活かす「地域猫」事業を解決策の一つとして、(公財)日本動物愛護協会が紹介。

https://jspca.or.jp/localcat.html

・「地域猫」事業は、野良猫に不妊去勢手術を施し、一代限りで町内会や市民団体など地域で協力して飼う方式。

http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/kankyo/page-c_02518.html

・環境省は飼い主のいない猫対策として、地域猫などの実践例をまとめる。

・福岡県獣医師会は、不妊手術をしてマーキングをした「あすなろ猫」活動に助成し、「野良猫以上、地域猫未満」と紹介。

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2806a/pdf/05_01.pdf
(52ページ)

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「人と猫との共生」条例など自治体の取り組み
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●「人と猫との共生」や生活環境保全を条例化(兵庫県神戸市、宮城県仙台市、和歌山県)

・「餌やり」の課題を指摘し、法のすきまを埋める形で対応策を条例化する事例がみられる。

・神戸市や仙台市では「人と猫の共生に関する条例」を制定、神戸市はガイドラインも策定。

https://www.city.kobe.lg.jp/a84140/kenko/health/hygiene/animal/nekoguideline.html

https://www.city.sendai.jp/dobutsu/kurashi/shizen/petto/hogodobutsu/oshirase/nekojyoureikoufu.html

・和歌山県では動物愛護条例に「自己の所有する猫以外の猫に対して、継続反復して給餌等を行う者の遵守事項」を定める。

https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k501RG00000583.html
(14条)

・東京都荒川区では生活環境保全の観点から「給餌による不良状態」を定義し、「生じさせてはならない」と禁止規定を設ける。

https://www.city.arakawa.tokyo.jp/reiki_int/reiki_honbun/p800RG00000417.html

●町内会、市民ボランティアで実践する地域猫(長野県松本市、長野県、長野県上田市)

・長野県松本市では町内会、ボランティア等が役割分担、責任の所在を明確にし、
地域周辺住民の理解を得て、地域で適切に飼育管理される「地域猫」の仕組みをつくる。

http://www.hars.gr.jp/taikai/12th.taikai/ippanendai/22okada/slide.pdf

・長野県HPでは「猫によるお困りごと対策」を示し、「飼い主のいない猫対策について」のコーナーで地域猫の実践を紹介。

・県主催の一般公開講座などを通じて「地域猫活動」の概念を伝える。

https://www.pref.nagano.lg.jp/shokusei/kurashi/aigo/aigo/kainushinoinaineko.html

https://www.pref.nagano.lg.jp/shokusei/kurashi/aigo/aigo/documents/0211ohirase.pdf

・長野県上田市では「地域猫活動推進プロジェクト」のクラウドファンディングを市が呼びかけて資金募集し、目標金額を達成。

https://www.city.ueda.nagano.jp/soshiki/seikan/3285.html

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チェックポイント詳細
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●動物愛護関係の市民相談

・市民からの野良犬、猫などの苦情、相談件数は。

・市民からの近隣飼育への苦情、相談件数は。

・「餌やり」による環境悪化や野良犬、猫の増加についての苦情は。

●「餌やり」防止・禁止の条例、啓発活動

・無責任な「餌やり」への苦情に対して、どのように対応しているか。

・「餌やり」防止・禁止についての啓発活動は存在するか。

・条例化や指針など「餌やり」防止の施策は存在するか。

●地域で一代限りで育てる「地域猫」活動

・自治体区域における犬・猫の引き取り件数など、野良犬・野良猫の実態は把握しているか。

・地域で育てる「地域猫」活動の実践例は存在するか。

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さらなる調査のためのリンク集
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ペットと動物に関する条例(猫に関する条例と動物への餌やり禁止条例)(地方自治研究機構)
http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/006_wildcat.htm

2.13京都市議・局宛に京都条例・法的見解を送付(全国動物ネットワーク)
https://animalnetwork.jimdofree.com/2015/02/12/2-13京都市議-局宛に京都条例-法的見解を送付/
(注 一部法的状況変化あり)

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