<概要>
●5年以内に修繕が必要な橋やトンネルが8万カ所
●特に自治体インフラの修繕遅れが目立ち、国はメンテナンス体制を強化
●国は新技術による予防保全で維持コストを削減する方針
●自動車のカメラやセンサーで道路を点検する技術
●近接目視の規制が緩和され、ドローンを使った橋の法定点検も可能に
●市民によるスマホ通報や、職員自らの橋梁補修DIY
<チェックポイント>
●2014~18年度のインフラ老朽化点検
●メンテナンス体制の強化
●新しい技術を使ったインフラ点検
●市民や職員の力も借りたインフラ補修
<掲載事例>
●愛知県豊明市、東京都品川区、栃木県日光市、千葉県君津市、神奈川県鎌倉市、熊本県玉名市
●NTT西日本
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5年以内に修繕が必要な橋やトンネルが8万カ所
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●道路・橋・トンネルの不具合が相次ぐ
・NEXCO中日本は2020年11月4日、中央自動車道をまたぐ橋1カ所の耐震補強工事で、橋台の一部に鉄筋が不足する施工不良があったと発表。
・9月にNEXCO中日本の社員が橋台に長さ約1・6メートル、幅最大約0・7ミリのひび割れがあるのを発見したのがきっかけ。
https://mainichi.jp/articles/20201104/k00/00m/040/357000c
・東京都調布市の住宅街では2020年10月〜11月、東日本高速道路が大深度地下トンネルを掘った地区で道路が相次いで陥没。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201019/k10012670771000.html
・道路陥没は全国で年1万件ペースで起きており、発生地点の9割以上は水道管や下水道管などの埋設物が多い市町村道。
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12176-838338/
●自治体インフラの修繕遅れが目立つ
・国土交通省が2014~18年度に実施したインフラ老朽化点検で、全国の橋やトンネル8万カ所が「5年以内の修繕が必要」と判定された。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48439860Z00C19A8CR8000/
・2014年度に危険と判定された橋は2018年度までに修繕の着手が求められていたが、自治体管理の橋で2019年度末までに着手されたのは52%
・財源や人手が不足している自治体も多く、国の管理する道路に比べて自治体の遅れが目立つ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63952620X10C20A9000000/
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国はメンテナンス体制の強化とコスト削減を推進
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●国は自治体のメンテナンス体制を強化
・全国約72万の橋梁のうち7割以上が市町村道にあり、建設後50年を経過した橋梁の割合は、27%から10年後には52%と増加。
・町の約3割、村の約6割で橋梁保全業務に携わっている土木技術者が存在せず、点検実施者の約半数は研修や民間資格なし。
・国は2013年に道路法を改正し、橋とトンネルは5年に一度、近接目視による全数点検を義務化。
・2014年には国交省地方整備局と高速道路会社と自治体による、都道府県ごとの「道路メンテナンス会議」を設置。
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/torikumi.pdf
(1、2、5ページ相当)
●新技術による予防保全で維持コストを削減
・事後保全によるインフラの維持更新費は30年後に年間10.9〜12.3兆円かかるが、予防保全で長寿命化した場合は5.9~6.5兆円で済む。
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01_01.html
・財務省も支出を抑えるため、最新の技術を活用してコストの削減を図る自治体を優先的に支援すべきだと提言。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201019/k10012671451000.html
・国交省は橋やトンネルの「定期点検要領」を改定し、近接目視の代替手段としてAIなどの新技術が活用できることを明記。
https://www.sankeibiz.jp/business/news/201026/bsc2010260500004-n2.htm
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自動車やドローンを使った新しい点検方法
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●自動車のカメラやセンサーで道路を点検する技術
・愛知県豊明市では、乗合車両に振動を検知するセンサーと路面を撮影するカメラを置いて、揺れの大きさからひびや穴を判別する実験を開始。
https://www.chunichi.co.jp/article/136122
・東京都品川区では2017年から、パトロール車両で走行しながらスマートフォンで自動的に路面の凹凸を測定して早期対応。
https://www.fujitsu.com/jp/group/ftrd/company/press-releases/2017/170719.html
・2019年からは車載カメラで撮影した画像データをAIで解析し、路面損傷につながるひび割れを検知するシステムも導入。
https://www.decn.co.jp/?p=105379
・栃木県日光市では、ドライブレコーダーの映像から道路標識や照明、カーブミラーなどの点検表を自動作成。
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2006/29/news051.html
・3Dレーザースキャナーと高解像度カメラで、トンネル内壁のひび割れや剥離を検知できる車両も。
https://mainichi.jp/articles/20200629/k00/00m/040/132000c
●ドローンを使った橋の法定点検も始まる
・千葉県君津市は2019年7月から、市内の橋の法定点検に4Kカメラ搭載のドローンを使う実証実験を開始。
・専門業者に委託する法定点検と比べて点検費用は5年間で4000万~5000万円削減できて、縮減した費用を修繕費に充てる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45679020U9A600C1L71000/
・NTT西日本と東京電力や大阪ガスなどインフラ大手も、ドローンを使ったインフラ点検の技術開発で提携。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58752750R00C20A5XA0000/
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市民や職員の力も借りてインフラ補修
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●市民がスマホの写真で道路の損傷を報告(神奈川県鎌倉市)
・神奈川県鎌倉市は、スマホアプリ「LINE」を活用し、市民らが道路の損傷を手軽かつ正確に通報できるシステムの実証実験を開始。
・市民は道路の損傷を見付けたら、遠景近景の2枚の写真を撮影し、位置情報と共に送信するだけ。
・将来は台風による土砂崩れや冠水など災害情報の通報にも活用したい考え。
https://mainichi.jp/articles/20201007/k00/00m/040/085000c
●職員が身近な素材で橋を手作りメンテナンス(熊本県玉名市)
・地域の高齢化で建設業の担い手が不足する中、橋の点検後に速やかに補修をする必要があった。
・片栗粉など身近な素材を使って、職員自らが橋や道路のひび割れを補修、判定区分3〜4の橋の修繕着手率は100%
・直営による「橋梁補修DIY」により、2年間で14億3千万円のコストを削減。
https://www.mlit.go.jp/common/001282418.pdf
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チェックポイント詳細
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●2014~18年度のインフラ老朽化点検
・5年以内に修繕が必要なインフラはあったか。
・その後も予定通り点検・修繕ができているか。
●メンテナンス体制の強化
・橋梁保全の土木技術者や、研修・資格取得ずみの点検実施者は何人いるか。
・都道府県の道路メンテナンス会議で自治体内のインフラは議題になっているか。
●新しい技術を使ったインフラ点検
・自動車にカメラやセンサーを積んで道路の点検を行ってはどうか。
・ドローンを使った高所の点検を行ってはどうか。
●市民や職員の力も借りたインフラ補修
・市民がスマホで損傷箇所を通報するシステムを導入できないか。
・簡単な損傷は職員がその場で補修できる体制を検討してはどうか。
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さらなる調査のためのリンク集
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社会資本の老朽化の現状と将来(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html
道路メンテナンス年報(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/yobohozen.html
【道路】道路・河川・公園等の不具合をスマホで通報(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/4693/