【労働】働き方改革で2019年より公務員の時間外勤務にも上限(政策アイディア)

<概要>

●時間外勤務は職員の健康被害や、割増賃金による財政支出の増加をもたらす

●2019年4月からの働き方改革関連法の施行に伴い、公務員の時間外勤務にも上限

●時間外勤務管理表や一定条件に絞った資料を入手して実態を把握

●組織として目標を設定し、時間外勤務を減らす計画や指針を策定すべき

●パソコン強制終了システムと時差勤務で時間外勤務を37%削減した自治体も

<チェックポイント>

●時間外勤務の実態

●2019年4月からの働き方改革への対応

●時間外勤務を減らす取り組み

<掲載事例>

●埼玉県さいたま市、大阪府大阪市

●兵庫県三田市、滋賀県大津市

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働き方改革で時間外勤務の上限設定
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●時間外勤務は職員にも自治体・市民にもデメリット

・時間外勤務は、働く職員にとっては生産性・効率性の低下や健康被害といった被害をもたらす。

・また時間外勤務に対しては25%の割増賃金が設定されている。

https://www.sha-ho.com/806251

・さらに月60時間以上の場合は60時間を超える部分で50%の割増賃金、休日出勤はさらに割増。

・自治体・市民にとっては時間外勤務による増加するコストを支払う必要があり、財政面でもデメリット。

https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1l-02.pdf
(現在は中小企業も適用)

・2017年には総務省の調査で、地方公務員の一人当たりの時間外勤務が年158時間と民間を超えていることが発表がされた。

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO16008000S7A500C1L83000/

●働き方改革で公務員の時間外勤務にも上限

・ワークライフバランスを重視した働き方改革が提唱され、国レベルで民間も含めて時間外勤務に対しては上限が設定された。

https://www.mhlw.go.jp/content/000555909.pdf
(4ページ)

・国家公務員の場合は人事院規則により、時間外勤務は1カ月45時間かつ1年で360時間の範囲内。

・国会対応や予算折衝など繁忙期のある「他律的な業務」は、例外的に1カ月100時間かつ2~6カ月平均80時間、年720時間の範囲内。

・これにあわせて地方公務員も同様の条件を条例改正や規則改正で設定。

https://www.jinji.go.jp/kinmujikankyuuka/choukinzyougenponchie.pdf

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時間外勤務の実態を把握する方法
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●時間外の実態把握には「一定条件」に絞った資料が必要

・決算審査や、人件費が時間外手当により増額された補正予算は、「時間外勤務」の実態把握を行う大きなチャンス。

・部署ごとの時間外勤務累積数や対象職員数は決算資料や監査報告書に示されている場合が多いが、総論にとどまる危険性がある。

https://www.city.osaka.lg.jp/gyouseiiinkai/cmsfiles/contents/0000415/415102/H28ippan.pdf
(30、31ページ)

・例えば、原則禁止されている月45時間超、年360時間超といった基準にあてはまる職員数や担当部署の一覧表を入手すると実態が分かる。

●勤務実態を把握する「時間外勤務管理表」

・時間外勤務は、本来は上司による命令が必要なので、上司の命令から実施までの体制を点検する。

・特に時間外が多い部署においては、時間外勤務管理表などの資料を確認。

http://www.9tokenshi-syunoukaigi.jp/activity/result/20151222kennsyuushiryou01.pdf
(5ページ)

・週休日・休日勤務については、出勤すると時間外勤務(35%割増)となることから、別の日に休む振替休日で運用する方法もある。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_12.html

http://www.masse.or.jp/ikkrwebBrowse/material/files/200805_p15.pdf

・部署ごとの時間外目標の設定や仕事の見直しなど、計画や指針により時間外勤務を縮小する体制を作る。(兵庫県三田市の事例)

https://www.city.sanda.lg.jp/shiseijouhou/kouhou/shichou_kaiken/documents/20161219_3zikanngaikinnmusyukugenn.pdf

・民間においても好事例集があり、トップダウンでの業務改善や管理職の人事評価との連動などの工夫が存在する。

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/120703_01.pdf

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時間外勤務を減らす自治体の取り組み
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●現状分析からマンパワー確保計画を策定(埼玉県さいたま市)

・2018年に「職員のマンパワー確保取組計画~ワーク・ライフ・バランス充実のための定員管理~」を策定し、現状と課題を分析。

・時間外勤務が年間360時間未満の職員比率が2016年で77.8%だったため、推進課題として100%を目指す。

・勤怠管理の強化などの従来の取り組みに加え、サテライトオフィスやオンライン会議の導入など新規取組検討事項をあげる。

https://www.city.saitama.jp/006/005/002/p059303_d/fil/manpower.pdf
(3、5~8ページ)

●時間外勤務の縮減にかかる指針を策定(大阪府大阪市)

・2019年4月の時間外勤務の上限規制に伴い指針を改定。

・「時間外勤務はコストである」との意識のもと、時間外の縮小を所属長や管理職員が努めることを示す。

・また、業務効率化や会議等の効率的運営、ノー残業デー設定など具体的に示す。

https://www.city.osaka.lg.jp/jinji/page/0000252372.html

●パソコン強制終了システムと時差勤務で時間外勤務を37%削減(滋賀県大津市)

・5時〜22時を13パターンに区切った時差勤務を導入し、住民説明会の多い職場は夜までを通常の勤務時間に。

・パソコンの強制終了システムで勤務時間を適正に把握し、パソコン稼働時間と時間外勤務時間の乖離が激減。

・2013年から2018年にかけて時間外勤務時間が37%、時間外勤務手当も35%減少。

http://www.toshi.or.jp/app-def/wp/wp-content/uploads/2020/05/report187_09.pdf
(186〜188ページ)

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チェックポイント詳細
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●時間外勤務の実態

・人数や総時間外勤務時間数、時間外勤務者の最高時間数など部署ごとの実態は。

・月45時間超の時間外勤務者数と勤務部署など上限を超えている実態は。

・月45時間や60時間を超えて支払った割増賃金の総額は。

●2019年4月からの働き方改革への対応

・時間外勤務の上限設定など条例や規則の改正は行ったか。

・2018年度と2019年度の時間外勤務の変化はどうだったか。

●時間外勤務を減らす取り組み

・時間外勤務を減らす数値目標を設定しているか。

・時間外勤務を減らすために、どのような取り組みをしているか。

・ITやRPA(業務自動化ソフト)を使った業務の効率化はどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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【給与】率の設定に異論噴出!本給扱いの「地域手当」(政策立案メルマガ)

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【給与】2019年人事院勧告と職員給与・議員報酬の決め方(政策立案メルマガ)

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府省・地方自治体における長時間残業削減のためのプロセス改革(富士通総研)
https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/resources/case-studies/85.html

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