【農林水産】新たな事業の可能性、農業×発電「ソーラーシェアリング」(社会・技術動向)

<概要>

●田畑の上部空間を活用して太陽光発電施設を設置する「営農型太陽光発電」

●農作物と発電施設が太陽を共用する「ソーラーシェアリング」

●農業の適切な継続を行うことを条件に2018年には許可期間が10年に規制緩和

●栽培作物の工夫、設備建設の工夫により採算性のとれた優良事例が増加

●営農型太陽光発電を災害時の地域の非常用電源として活用する自治体

<チェックポイント>

●自治体における農業経営の現状

●自治体あるいは近隣自治体における「営農型太陽光発電」の施設実績

●「営農型太陽光発電」の研究

<掲載事例>

●静岡県

●千葉県匝瑳市

●一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟、市民エネルギーちば株式会社

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農業と発電を同時に実施する営農型太陽光発電
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●営農型太陽光発電の仕組み

・営農型太陽光発電とは、農地に支柱を立て太陽光発電設備による発電を行い、その下で営農を継続する仕組み。

https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/r_energy/attach/pdf/180515-1.pdf
(1ページ)

・太陽光を農業と発電双方に活用するため「ソーラーシェアリング」とも呼ばれ、各地で事例が増加。

https://www.sankei.com/economy/news/200819/prl2008190524-n1.html

・農林水産省とも連携する一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟も発足。

http://solar-sharing.jp

・農水省HPでも作物収入に加え、売電の収入や自家利用により、農業経営の安定化や拡大が期待されるとする。

・田畑の上部にパネルを設置する方法や、パネル下での農作業が可能な高さ、幅にする方法がある。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html

●営農品目の選定が重要

・農林水産省は「営農型太陽光取組支援ガイドブック」を2020年4月に発行。

・太陽光パネル下の農業環境の違いや高収益農業の実証結果、取り組み事例を紹介。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-51.pdf
(3、9〜13ページ)

・遮光があっても育つ品目、あるいは逆に遮光が求められる品目を設定することが採算性向上のカギとなる。

https://smartblue.jp/cropprofit/

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営農型太陽光発電を促進する規制緩和と優良事例
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●2018年さらなる促進のための規制緩和

・営農型太陽光発電の設備を設置するためには、農地の「一時転用届」と許可が必要。

https://www.city.chiba.jp/nogyo/ichiten.html

・2018年、農地放棄のための「転用」年数を一律に3年以内から、一時転用許可期間を10年以内に変更。
(撤去可能な施設など一定の条件あり)

・同時に一時転用届をしたものの、下部の農地で営農をしていないといった悪質なケースへの対応も。

https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/r_energy/180515.html

・「営農の適切な継続」の条件が定められている。
「下部農地の単収が同年の地域の平均的な単収より2割以上減少しない」「農作物の品質に著しい劣化が生じていない」

https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-15.pdf
((2)のウ)

https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/r_energy/attach/pdf/180515-7.pdf

・国は「営農型発電設備の実務用Q&A」を発行し、詳細な条件について明確化。
天災等により2割減少の場合は配慮されることを示した。

https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-25.pdf
(15ページ)

●傾斜地での作業や大型農機の使用など課題を克服する工夫

・支柱設置の際に傾斜地での作業やトラクターなど大型農機の使用に現在の設備では課題がある。

・一本足の支柱など架台設置の自由度を増す形での解決策を持つ製品も開発されている。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000051786.html

●自家発電利用など優良事例が増加

・発電した電気をFIT(固定価格買取制度)により売電して経費回収をめざす。

・自家施設で活用することで経費節減や災害時の安定を求めている事例も増加。

・ハウス内暖房への使用や揚水ポンプの利用、イネの乾燥など自家利用の事例を農水省HPで紹介。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html#02
(Case01、other Case)

・この他、未利用地を活用、荒廃農地の活用、市民農園としての利用など優良事例は多数。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-36.pdf
(事例2、4、11)

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実証試験と品目の優位性検証など自治体の取り組み
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●営農型太陽光発電を災害時の非常用電源として活用(千葉県匝瑳市)

・エネルギー問題に関心ある市民有志で設立された市民エネルギーちば(株)と地域の協議会が共同で運営。

・地区にあるすべての営農型太陽光発電設備は停電時において地域への開放ができるように設備改修する方向。

・改修費用は以前から売電収入の一部を地域支援金として還元し、基金として積み立ててきたものを活用。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html#02
(Case02)

https://www.energy-chiba.com

●高収益農業の実証試験を行い、報告書を作成(静岡県)

・2018年から2019年にかけて営農型太陽光発電に係る現地実証試験を行い、その結果を2020年に公表。
チャ、ブルーベリー、キウイフルーツと品目を選定し、効果を測定。

・チャ=茶樹の場合は晴天時の半分程度で十分ということもあり、事例も多い。
凍霜害が発生しにくいなど設備がよい結果をもたらす場合も。

・いずれの品目も収量、品質への影響がみられないなど良好な結果。

http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-310/documents/shizuoka_einou.pdf
(20ページ)

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チェックポイント詳細
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●自治体における農業経営の現状

・自治体における農業の経営実態はどうか。

・農業政策で「担い手不足」「荒廃農地」は課題になっていないか。

●自治体あるいは近隣自治体における「営農型太陽光発電」の施設実績

・「営農型太陽光発電」は自治体内、近隣自治体に存在するか。

・実績がある場合は、営農の品目は何か。

●「営農型太陽光発電」の研究

・メリット、デメリットをどうとらえるか。

・促進のための支援策を研究しているか。

・営農型太陽光発電を災害時の非常用電源として活用できないか。

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さらなる調査のためのリンク集
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【エネルギー】自治体が広める再生可能エネルギー(政策立案メルマガ)
https://policy-making.com/db/5080/

営農型太陽光発電 取組支援ガイドブック(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-50.pdf

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