【コロナ】第2波に備えて、今こそコロナ対策の検証と改善を!(事例研究)

<概要>

●神戸市が政令市で初めて、コロナ対応全般にわたる検証の報告書を公開

●相談業務や疫学調査を行う保健師の不足が課題

●休校中の在宅学習に必要なハードとソフトの準備

●金融相談や申請窓口の人員確保と、感染者が出た場合の対応

●群馬県や名古屋市は、クラスター対策の効果を検証

●その他、全国で次々と検証が始まっている

<チェックポイント>

●コロナ対策の事後検証

●保健・医療体制における課題

●教育・保育における課題

●窓口業務における課題

<掲載事例>

●群馬県、滋賀県、北海道、京都府、佐賀県

●兵庫県神戸市、愛知県名古屋市

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神戸市がコロナ対応の検証報告書を公表
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●政令市で初めて、コロナ対応を総合的に検証

・2020年7月7日、神戸市は政令市で初めて、コロナ対応全般にわたる検証の報告書を公開。

・検証チームは市幹部で構成し、医療体制や広報、学校園、事業者向けの支援策などテーマごとに課題と今後の備えを示した。

・報告書は市のホームページで公開し、7月31日まで市民の意見や提言を募っている。

https://mainichi.jp/articles/20200708/ddl/k28/040/171000c

●保健・医療体制における課題

・保健師が患者に情報公開の同意を求めることに疲弊しており、あらかじめ情報開示範囲を決めておくべきだった。

・電話相談に対応する保健師の確保できず、応援に入る事務職員も固定化させておく必要があった。

・患者の行動をヒアリングする積極的疫学調査については、人員も経験も不足していた。

・近隣医療機関より発熱患者の診療依頼や検査目的の紹介が急増し、中核的医療機関の外来を圧迫した。

・集団感染時には、庁内の様々な部署から保健所に何度も問い合わせがあり、業務が中断して現場が混乱した。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/2-1_2shou1setsu.pdf
(28、34、35、38、47ページ)

●学校教育や保育における課題

・4月に学校の休業を延長するかどうか、教育委員会と市長部局から情報が断片的に流れてきて、現場が混乱した。

・市長が教育委員会への要請をツイッターに流し、教育委員会の決定前に保護者から学校に問い合わせが殺到した。

・休校中は学校HPによる連絡や課題提示のみとなった学校も多く、定期的に児童生徒に電話連絡を行った学校と差が生じた。

・学習支援ツールの利用率も学校間で差があり、1~2 割とみられる ICT 環境のない家庭への対応も課題。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/2-3_2shou3setsu.pdf
(68、70、75、76ページ)

・学童保育の職員を確保するため人件費を1.5倍にしたが、年収が扶養控除の上限に達してしまうため検討が必要。

・春休みは全学年を学童保育が受け入れることになり、教員の派遣要請もほとんど行われなかった。

・こども家庭局と教育委員会の間に意思決定の仕組みがなく、合意形成に時間がかかった。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/2-4_2shou4setsu.pdf
(86〜88ページ)

●介護・福祉における課題

・感染が判明した施設利用者について、サービス提供時の行動が把握できず、利用者全員を「濃厚接触疑い」にせざるを得なかった。

・職員の業務の切り分けができていない施設は、職員全員が自宅待機となり、事業継続が不能となった。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/2-5_2shou5setsu.pdf
(94、96ページ)

●生活・経済支援における課題

・国の給付金の事務内容が明らかでない段階から、業者や機材を確保する必要があった。

・ネットカフェ利用者の支援を検討したが、市内のネットカフェの所在を確認しておらず、実態把握できなかった。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/2-6_2shou6setsu.pdf
(100、109ページ)

・融資相談窓口において、金融知識のある人材を十分に確保できず、スペースや機材の不足も課題となった。

・市独自の家賃補助やチャレンジ補助金は、準備期間が短すぎて受付対応の事業者を手配できなかった。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/2-7_2shou7setsu.pdf
(119、121ページ)

●役所や組織における課題

・在宅勤務に必要なパソコンのLTE(無線通信)端末が制限されており、拡張することができなかった。

・区役所など市民と接する部門で感染者が出た場合の対応が事前に明確に決定されていなかった。

・他の区で対応代行したものの法的根拠が曖昧で、システム上の問題から他区で対応できない業務もあった。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/2-8_2shou8setsu.pdf
(132、135ページ)

●物資の備蓄や調達における課題

・流通備蓄に頼る発想で実際の備蓄が乏しく、備蓄していたサージカルマスクは使用期限切れだった。

・病院が必要とする物資の把握に時間がかかり、調達を終えた時にはすでに充足されている場合があった。

・寄付物資については、感謝状贈呈・寄贈式・資料提供・ホームページ上でのご紹介などの事務対応に課題があった。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/2-9_2shou9setsu.pdf
(142、144、145ページ)

●次なる波への備え

・ロボット化や自動化によるPCR検査能力の拡充。

・積極的疫学調査を実施する保健師の育成と確保。

・フェーズに応じた病床の確保と、3ヶ月分の医療用資機材の備蓄。

・オンライン学習に必要なハードとソフトの整備。

・学童保育の人員確保と見守りカメラなどによる負担軽減。

・介護福祉施設における、施設内感染を想定したマニュアルや体制の整備。

・融資相談の急増に備えた専門人材やスペースの確保。

・LTE端末など、職員の在宅勤務に必要な機材の拡充。

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/35434/3_3shou.pdf
(168、169、173、174、175、179ページ)

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各自治体も次々と検証を開始
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●老人ホームが大規模クラスターになった過程を検証(群馬県)

・群馬県は7月9日、68人のクラスター(集団感染)が発生した有料老人ホーム「藤和の苑」の検証結果を発表。

・初報からPCR検査の結果が出るまで、4日かかったことがクラスターの発生を防げなかった最大の要因。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61347680Z00C20A7L60000/

・対策として、初期探知の徹底・往診医との情報共有・保健所体制の整備などを挙げた。

・他にも搬送手段の充実や、原因不明の発熱3人以上でPCR検査、施設における感染症対策と指導の強化など。

https://www.pref.gunma.jp/contents/100160548.pdf

●早い段階でクラスターを押さえ込んだ対策の効果を検証(愛知県名古屋市)

・早い段階で複数のクラスター(感染者集団)が発生した経験をもとに、クラスター対策の効果を検証。

・国の指針より広範囲で患者の行動歴や健康観察対象者を調べて感染を抑えこんだ経緯をまとめる。

・感染が疑われる人の搬送や、病院の受け入れ態勢などの課題も。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60422170W0A610C2CN8000/

●その他、検証を始める自治体

・休業要請が社会経済活動に与えた影響も検証。(滋賀県)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60637200S0A620C2LKA000/

・議会からの要請で、政府より先に出した緊急事態宣言などを検証。(北海道)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/437390

・医療保健分野の対応についてワーキングチームで検証。(京都府)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60557350Z10C20A6LKA000/

・全国知事会のワーキングチームで課題を把握し、県の対応も検証。(佐賀県)

https://www.saga-s.co.jp/articles/-/536510

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チェックポイント詳細
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●コロナ対策の事後検証

・コロナ対策の過程や効果を検証を行う予定はあるか。

・第2波に向けて、感染症対策だけでも検証を行うべきではないか。

●保健・医療体制における課題

・感染者の情報開示について明確な基準があるか。

・相談業務や疫学調査など、保健師の増強が必要ではないか。

・感染拡大時に病床が速やかに確保できる体制になっているか。

・介護福祉施設内での感染を想定したマニュアルや体制はあるか。

●教育・保育における課題

・在宅学習に必要なハードとソフトの準備を進めているか。

・学童保育の人員確保をどのように行うか。

・教育委員会と市長部局の役割分担や合意形成に課題は無いか。

●窓口業務における課題

・申請受付業務の代行業者を速やかに手配する工夫はないか。

・金融相談など専門性の高い人材をどう確保するか。

・市民と接する部門で感染者が出た場合の対応は決まっているか。

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さらなる調査のためのリンク集
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新型コロナウイルス感染症対策第1次対応検証結果(神戸市)
https://www.city.kobe.lg.jp/a95474/kenshou.html

新型コロナウイルス対策検証・戦略WT(全国知事会)
http://www.nga.gr.jp/data/activity/committee_pt/shingatakoronauirusukinkyutaisakukaigi/shingatakoronauirusutaisakukensyowt/index.html

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