【労働】制度は世界一!なのに進まない男性の育休取得(社会・技術動向)

<概要>

●育児休業の取得率は女性が80%に対して男性は6%

●国は育休給付金を引き上げ、手取り額を休業前と同等にする方針

●育休の取得率は男性公務員が12.4%、男性地方公務員は5.6%

●一部の自治体は、育休給付金の給付率や期間を独自に上乗せ

●子育て支援に取り組む企業を入札で加点する自治体も

●ユニセフ調査では日本の育休制度は世界一だが、男性の取得率が低い

●今後は周りの雰囲気と、育休の中身が課題に

<チェックポイント>

●自治体と企業の育休取得率

●自治体における男性育休の推進

●民間企業における男性育休の支援

<掲載事例>

●奈良県、福岡県、三重県、佐賀県

●東京都江戸川区

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ついに育休中の所得補償が100%に
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●育休給付金が引き上げの方向

・育児休業の取得率は女性が80%に対して男性は6%で、育休中の収入源が低迷の背景と言われる。

・国は2020年3月末に策定する少子化社会対策大綱に、育休給付金の所得補償を「実質10割」と明記する方向。

・給付率を休業前の賃金の80%に引き上げ、所得税や社会保険料免除と合わせて手取りを休業前と同等に。

・労使が折半する雇用保険と国庫負担が財源のため、雇用保険料の引き上げが必要となる見込み。

https://www.sankei.com/life/news/200208/lif2002080034-n1.html

●現在の育児休業制度

・現在、育児休業の開始から半年間は休業前の賃金の67%が給付され、その後半年間は50%が給付される。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h31_r1/shouchou/20190926_shiryou_s_2_1.pdf 
(5ページ)

・夫婦で半年ずつ取得すれば、67%の割り増し給付が最長で1年2ヶ月続けて受けられる。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h26_6.pdf (2ページ)

・保育園に入所できない場合は、育児休業の期間を最長2年まで延長できる。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h29_05.pdf

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進まない地方自治体の男性職員の育休取得
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・国は、男性の国家公務員の育児休業に関し、原則として1カ月以上の取得を促す方針を固めた。

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/191030/mca1910300500002-n1.htm

・子どもが生まれた部下に管理職がどのような支援をしたか、国家公務員の人事評価に反映させる方向。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019122500893&g=pol

・育休の取得率は男性公務員が12.4%、民間企業の男性社員は6.2%に対して、男性地方公務員は5.6%

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019122400813&g=pol

・地方議員の育休取得率は4%で、育休の規定がある地方議会は5%だけ。

https://www.at-s.com/news/article/politics/national/722461.html

・2020年1月には総務大臣が地方自治体の首長に、男性の育休取得を促す書簡を送付。

https://mainichi.jp/articles/20200124/k00/00m/010/139000c

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男性の育休取得を推進する自治体の工夫
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●最長3歳まで育休給付金と同等額を補助(東京都江戸川区)

・国の制度で最長とされる2歳を超えて育休を延長した場合、賃金の50%分を補助金として支給。

・企業側には育休取得者の代わりに雇用する従業員の確保にかかる求人広告費の半分などを助成。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54988610Z20C20A1L83000/

●半年以降も給付率67%となるように補助金で上乗せ(奈良県)

・国の制度では育休取得から半年後には給付率が67%から50%に下がるが、
下がった分を支援するために賃金を支払った事業者には、県が賃金の17%分を補助。

http://www.pref.nara.jp/secure/119817/ikukyu%20qanda20190607.pdf
(2ページ)

●子育て応援宣言をした企業を入札で加点して優遇(福岡県)

・従業員の仕事と子育ての両立を支援する具体的な取組みを宣言した企業を登録する制度を2003年に開始。

・宣言企業を入札で加点する仕組みにして、2020年1月で7000社を突破。

・宣言企業の育休取得率は女性が96.6%、男性が9.8%で全国平均よりも高い。

http://www.pref.fukuoka.lg.jp/press-release/kosodate7000.html

●知事が「男性育休100%宣言」で県職員の取得促進(三重県)

・育児休業と、妻の出産後に5日間まで取れる育児参加休暇を合わせて100%取得を目指す。

・県内民間企業の男性従業員の育児休業取得率も4.4%と低いため、育休宣言への賛同を呼びかける。

https://www.chunichi.co.jp/article/mie/20200124/CK2020012402000054.html

●出産前の「マイナス1歳」の父親に育児や家事を啓発(佐賀県)

・妻の妊娠期(マイナス1歳期)から、夫婦ともに家事・育児に携わる関係性を構築。

・女性のみ参加は不可の「夫婦を楽しむセミナー」で料理やベビーマッサージ等を学ぶ。

https://fjq.jp/saga-ikukaji/

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課題は周りの雰囲気と、育休の中身
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・ユニセフの調査では、「日本の男性の育休制度は世界1位だが、取得率が低い理由は人手不足と職場の雰囲気」と分析。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46032330T10C19A6CR0000/

・小泉環境大臣が育休を宣言した際にも、世論は賛否両論。

https://www.businessinsider.jp/post-205804

・異例の「無期限育休」を取得する奈良県三宅町長など、首長の育休取得も徐々に広がっている。

https://www.asahi.com/articles/ASMBY65M2MBYPOMB00F.html

・民間企業の調査では、将来子どもがほしい20~40代独身男性の78.1%が育休取得を希望。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000383.000006313.html

・「育休中の男性の3人に1人は1日あたりの家事育児時間が2時間以下」という調査もあり、今後は育休の中身が議論に。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000019831.html

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チェックポイント詳細
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●自治体と企業の育休取得率

・自治体職員の育休取得率は、男女それぞれ何%か。

・自治体内または県内の企業の育休取得率は、男女それぞれ何%か。

・全国平均より低い場合、どのような理由が考えられるか。

●自治体における男性育休の推進

・首長や幹部が率先して育児・介護休業を取得してはどうか。

・部下の育休取得を上司の人事評価に加える考えはあるか。

・育児休暇と合わせて「男性育休100%宣言」を行ってはどうか。

・育休の穴埋めができる組織的な仕組みが必要ではないか。

●民間企業における男性育休の支援

・育休取得など子育て支援に積極的な企業を入札で加点してはどうか。

・育休給付金の給付率や期間を、自治体独自で上乗せできないか。

・出産前から男性に対して家事や育児を啓発してはどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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育児休業制度とは(厚生労働省イクメンプロジェクト)
https://ikumen-project.mhlw.go.jp/employee/system/

育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h28_11_02.pdf

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