【交通】代わりの足はEV?自動運転?高齢者の免許自主返納(社会・技術動向)

<概要>

●東京・池袋の暴走事故をきっかけに、高齢ドライバーが社会問題に

●運転免許を自主返納する高齢者は年々増加しているが、移動手段の確保が重要

●栃木県では免許を返納すればバスが終身無料になる自治体が増えている

●民間企業や商店街も、お得な特典で免許返納を後押し

●自動運転バスもいよいよ公道を運行開始

●最終的には電動車椅子と軽自動車の間のマイクロEVが日常の足になるか

<チェックポイント>

●増え続ける高齢ドライバーの現状

●自主返納を後押しする仕組み

●自動運転バスやマイクロEVの普及

<掲載事例>

●群馬県

●神奈川県横浜市

●栃木県鹿沼市、栃木県小山市、栃木県真岡市、秋田県男鹿市、秋田県上小阿仁村、茨城県境町

●三重交通、博多大丸

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社会問題となった高齢ドライバーによる交通事故
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●池袋暴走事故の高齢ドライバーが在宅起訴

・2019年4月、東京・池袋で車が暴走し、母子2人が死亡し9人が重軽傷を負う大事故が発生。

・2020年2月6日、検察は運転していた旧通産省の元幹部(88歳)を過失運転致死傷の罪で在宅起訴。

・ドライブレコーダーの記録などを分析した結果、ブレーキとアクセルの踏み間違いが事故の原因だった。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200206/k10012274941000.html

●混雑する運転免許更新時の高齢者講習

・75歳以上の高齢者が2018年に死亡事故を起こした割合は、74歳以下の約2.4倍。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46387410R20C19A6EAF000/

・70歳以上の運転免許更新時に義務付けられた「高齢者講習」の混雑が常態化し、4ヶ月待ちの教習所も。

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200127/KT200124FTI090004000.php

・群馬県警は予約なしで講習が受けられる新システムを導入し、講習の待ち時間を2ヶ月短縮。

https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/187889

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国は自動ブレーキ付きの「サポカー」普及を目指す
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・警察庁は2019年12月19日、重大な違反や事故歴のある高齢者に、免許更新時の「実車試験」を導入する方針を決定。

・自動ブレーキなどがついた安全運転サポート車(サポカー)に限定した免許も創設。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53536190Z11C19A2MM0000/

・2020年1月30日に可決した補正予算には、高齢者のサポカー購入に最大10万円の補助金が盛り込まれた。

https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000325.html

・国土交通省は2020年1月31日に道路運送車両法に基づく保安基準を改正、
2021年11月以降に販売する国産の新型車に、自動ブレーキの搭載を義務付けた。

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001326170.pdf

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免許の自主返納が増えているが、デメリットも
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・運転免許を自主返納する高齢者は年々増加しており、2018年度は約42万件。

https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/h30jisyuhennou.pdf

・免許を返納しない理由は「買い物に行く」で65.0%、「遊びに行く」が56.9%、
「荷物の運搬」が45.3%、「家族の送り迎え」が39.4%と、移動手段の確保が課題に。

https://s.response.jp/article/2018/06/13/310809.amp.html

・「運転をやめた高齢者が要介護状態に陥るリスクは、運転を続けている高齢者の約8倍になる」という、
国立長寿医療研究センターが65歳以上を対象に行った調査も。

https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no464/

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無料バスで免許を返納した高齢者の足を確保
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●免許を返納すればバスが終身無料に(栃木県鹿沼市、小山市、真岡市)

・栃木県鹿沼市は2017年8月から、65歳以上の免許返納者に対して「終身無料乗車券」の交付を開始。

・市運行のコミュニティーバス「リーバス」や予約バスが対象で、翌年には対象を配偶者に広げた。

https://www.city.kanuma.tochigi.jp/manage/contents/upload/59c371bc9a6b2.pdf

・1278人が利用しているが、市の年間費用はカード製作費のみでほぼゼロ。
市担当者は「今まで乗っていなかった人が無料で乗るようになっただけなので収益に影響はない」。

・小山市は2018年4月から、真岡市は2019年4月から終身無料化を始めた。

https://www.asahi.com/articles/ASN1N3VZLN1NUUHB008.html

●一律200円の定額運賃と、月2千円の乗り放題パスを導入(秋田県男鹿市)

・2020年1月1日から、市内の路線バスに一律200円の定額運賃と、1カ月2千円で乗り放題の共通乗車券を導入。

・事前に行った実証実験で、1日当たりの利用者数が140人から170人に増加したため。

https://www.sakigake.jp/news/article/20191230AK0018/

●運転経歴証明書の交付手数料を全額助成(三重県鈴鹿市)

・運転経歴証明書を提示すると、コミュニティーバスの運賃が半額に。

・65歳以上の市民が免許を自主返納した場合、運転経歴証明書の公布手数料1100円も無料に。

http://www.city.suzuka.lg.jp/cgi-bin/faq.cgi?767

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民間企業や商店街も、お得な特典で免許返納を後押し
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●運転経歴証明書を提示すると買い物がお得に(神奈川県横浜市)

・港北区役所と商店街連合会がタッグを組んで、「運転卒業者おトク事業」が2019年末からスタート。

・協力店で運転経歴証明書を見せると、惣菜やデザートのおまけや割引など「おトクなサービス」を受けられる。

https://www.townnews.co.jp/0103/2020/02/06/516457.html

●博多大丸は総菜のサービスや商品無料宅配(博多大丸)

・福岡市の博多大丸百貨店は、高齢者の運転免許返納を支援する新規事業を今春にも始める。

・返納者を対象に総菜の増量サービスなどの特典を用意するほか、一定額以上の買い物で商品を無料で宅配する。

https://mainichi.jp/articles/20200206/k00/00m/020/299000c

●運転経歴証明書を提示すると同伴者の運賃も半額に(三重交通)

・三重交通グループ4社は、免許を返納した人が運転経歴証明書を提示すれば、本人と同伴者1人のバス運賃を半額に。

・併せて免許返納者向けのセーフティーパスも値下げ。

https://www.j-cast.com/2017/02/11290000.html?p=2

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いよいよ実用化する自動運転バスと超小型EV
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●ついに公道を走り始める自動運転バス

・国土交通省は2019年11月30日から、秋田県上小阿仁村で自動運転バスの本格運行を開始。

・2017年度から全国18カ所で実証実験を実施してきたが、本格サービスに移行するのは全国で初めて。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52498430S9A121C1L01000/

・茨城県境町はソフトバンクと連携して、2020年4月から医療施設や学校などを結ぶ公道で無料の自動運転バスを運行。

・走行の管理は遠隔で行うが、緊急時には車内で周囲を監視している担当者が専用のコントローラーで運転。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200127/k10012260521000.html

●電動車椅子と軽自動車の間を埋めるマイクロEV(電気自動車)

・公共交通だけでは限界があり、最終的には高齢者が安全に運転できるマイクロEVが移動手段となる可能性。

https://bestcarweb.jp/feature/column/120301

・経済産業省は1〜2人乗りの超小型電気自動車(マイクロEV)の購入に10万円の補助金を検討。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201911/CK2019110902000258.html

・トヨタは2人乗りのマイクロEVを2020年冬に発売すると発表。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51065180W9A011C1000000/

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チェックポイント詳細
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●増え続ける高齢ドライバーの現状

・県内の高齢者が起こす交通事故の現状と、ここ数年の傾向はどうか。

・県内の高齢者の免許自主返納の件数はどうか。

・近隣の自動車教習所における、高齢者講習の待ち時間は何ヶ月か。

●自主返納を後押しする仕組み

・免許を自主返納すると受けられる特典は何かあるか。

・運転経歴証明書を提示すると公共交通が安くなる仕組みを作ってはどうか。

●自動運転バスやマイクロEVの普及

・高齢者の日常の足として、自動運転バスやマイクロEVの普及を想定した計画が必要ではないか。

・動運転バスやマイクロEVの実証実験に取り組んではどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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2019年度交通安全白書(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r01kou_haku/index_gaiyo_pdf.html

高齢者講習等の流れ(全日本指定自動車教習所協会連合会)
http://www.zensiren.or.jp/kourei/flow/flow.html

47都道府県の自主返納特典リスト(全日本指定自動車教習所協会連合会)
http://www.zensiren.or.jp/kourei/return/relist.html

自動運転の技術レベル0〜5(JAF)
http://qa.jaf.or.jp/mechanism/structure/16.htm

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