【介護】運動+栄養+通いの場、フレイル予防がいよいよ本格化(国政情報)

<概要>

●介護費用が増え続ける中、心身が弱る「フレイル」の予防が課題に

●2020年度から、75歳以上の後期高齢者を対象にしたフレイル健診が始まる

●介護予防では運動に重点が置かれていたが、フレイル予防では栄養状態や社会参加も重要

●政府は「健康寿命延伸プラン」で、通いの場への参加率や健康支援型配食サービスの数値目標を掲げる

●先進的な自治体では、行政が民間を巻き込みながら、通いの場をきめ細かく支援している

●栄養士が高齢者を戸別訪問したり、一人暮らしの高齢者向けにコンビニから情報発信するなどの工夫も

<チェックポイント>

●介護保険の現状と介護予防の取り組み

●高齢者の社会参加と「通いの場」の拡充

●栄養面からのフレイル対策

<掲載事例>

●東京都、兵庫県

●東京都世田谷区、愛知県豊明市、三重県津市

▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
増え続ける介護費用、フレイル予防が重要に
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●介護保険制度の見直しで、自己負担を増やす議論に

・介護保険制度は3年ごとに見直しが行われており、次回2021年の制度改正に向けて、自己負担を増やす議論が始まっている。

・2019年度の介護費用は予算ベースで11.7兆円と、制度開始の2000年に比べて3倍に膨らんでいる。

・自己負担の増加は必要な介護サービスの利用控えにつながる恐れもあり、介護の予防、さらに前段階の「フレイル予防」が重要になる。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191028/k10012153921000.html

●フレイルは健康な状態と介護が必要な状態の中間

・フレイルとは、加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、心身の脆弱性が出現した状態であるが、
一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態。

・体重の減少、疲れやすい、歩行速度の低下、握力の低下、身体活動量の低下のうち3つ以上が当てはまると「フレイル」と判断される。

・フレイルになると病気や転倒骨折のリスクが高まり、入院をきっかけにフレイルから要介護になってしまう。

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
いよいよ国もフレイル対策に本腰
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●来年から始まる国のフレイル検診

・厚生労働省が2020年度から、75歳以上の後期高齢者を対象にした「フレイル健診」を導入する。

・フレイル健診は生活習慣や社会的な活動状況なども調べ、より多面的に心身の衰えの原因を探る。

・従来の介護予防は、主に運動機能の回復に重点を置いていたが、フレイル予防では栄養状態や社会参加も重要になってくる。

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20191118-OYT1T50295/

●高齢者の社会参加を促す「通いの場」の拡充

・サロンなど「通いの場」に3年以上参加すると、フレイルの抑制効果が高い。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000529365.pdf

・運動だけをするよりも、文化活動やボランティア・地域活動など複数の活動をする方が、フレイルになりにくい。

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/002_03_00.pdf

・「通いの場」の数と参加率は増加傾向にあり、現在91,059か所で参加率が4.9%

・介護保険で支援していないスポーツや生涯学習、ボランティア活動なども「通いの場」として認識する必要がある。

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000539466.pdf
(1〜2ページ)

・2019年5月に政府が示した「健康寿命延伸プラン」では、
「2020年度末までに介護予防に資する、通いの場への参加率を6%に」と数値目標を明記。

・「通いの場」を大幅に拡充していくため、介護保険制度の保険者機能強化推進交付金を活用する。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000514142.pdf
(5ページ)

●食事摂取基準にもフレイル予防が盛り込まれる

・「食事摂取基準」は栄養素の望ましい量を定めたもので、5年に一度改定される。

・フレイル予防のため、65歳以上のお年寄りが1日にとるたんぱく質の目標量を、2020年4月から引き上げる。

・厚労省はフレイル予防推進のために新年度予算案に3600万円を計上。
管理栄養士への研修や、食事を例示するパンフレットなどを作る予定。

https://www.asahi.com/articles/ASM3Q6WZZM3QUBQU01R.html

・2019年5月に政府が示した「健康寿命延伸プラン」では、
「健康支援型配食サービスを2022年度までに25%の市区町村で展開」と数値目標を明記。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000514142.pdf
(6ページ)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「通いの場」に関する自治体の取り組み
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●住民が立ち上げる地域デイサービスを、行政がきめ細かく支援(東京都世田谷区)

・週1回、ミニデイ形式の定期的な「通いの場」を地域住民やNPO法人等が運営。

・幼児連れのお母さんや学生なども参加する多世代交流や、男性だけのグループ、要介護になっても通い続けられるグループなども。

・運営リーダー研修や会場確保の仲介、職員による巡回相談や団体間の交流イベントなど、補助金以外にも行政がきめ細かく支援。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000524827.pdf

●民間企業を巻き込んだ多様な「通いの場」で、訪問・通所サービスの給付費が2割減(愛知県豊明市)

・温泉施設で健康講座、カラオケボックスで体操教室、フィットネスクラブで体力測定、薬局で健康チェックなど、様々な民間企業と連携。

・他にも市内70ヶ所の喫茶店で見守り活動、お寺で麻雀教室、自動車販売店で体操教室など、あらゆるスペースを活用。

・講師は民間企業が派遣して、住民は会場確保と運営を行い、行政が予算と広報を担当する「まちかど運動教室」。

・「通いの場」までの送迎サービス「チョイソコ」も、民間企業がスポンサーとなって地域のタクシー会社が運行している。

・支援やサービスが多様化し、利用が分散したため、訪問・通所サービスの給付費が2割以上減った。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000524826.pdf

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
栄養に関する自治体の取り組み
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●自宅を訪問する栄養パトロールで、低栄養を早期発見(三重県津市)

・モデル地域では保健師と管理栄養士が全戸訪問して、栄養だけでなく生活状況や将来の希望などを確認。

・独自に作った栄養チェックシートの結果が心配な場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに繋ぐ。

・モデル地域以外では、保健師と管理栄養士が通いの場に出向き、通いの場に来られない高齢者は自宅を訪問している。

・地域栄養ケア会議で地域ごとの課題を検討し、住民向けの研修会や料理教室に繋げた。

https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/H30_142_3_casestudy.pdf
(34〜37ページ)

●コンビニと連携して、フレイル予防の情報発信(東京都)

・ファミリーマートと共同し、都内のコンビニエンスストア約2,400店舗を通じて、フレイル予防のための食生活に関する情報発信を行う。

・10食品群のうち商品に含まれるものを値札に表示し、足りない食品群が使われているメニューを組み合わせてもらう。

・多くの食品群を含むメニューもファミリーマートが開発して販売。

・弁当や総菜を利用する一人暮らしの高齢者が増える中、多様な食品が含まれる商品を選ぶことで、フレイルの原因となる低栄養を防ぐ。

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/10/24/21.html

●市町村向けフレイル予防プログラムを策定(兵庫県)

・専門職の確保が難しく、取り組みが進んでいない口腔と栄養に関して、フレイル対策に取り組む市町村を増やす必要がある。

・通いの場への管理栄養士、歯科衛生士等や配食事業者の関与を促進して、口腔機能と栄養状態を改善するプログラムを開発。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000525004.pdf

▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
チェックポイント詳細
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●介護保険の現状と介護予防の取り組み

・自治体内の要介護と要支援の人数は、どのように推移しているか。

・介護保険料と介護給付は、どのように推移しているか。

・介護予防でどのような取り組みをしているか。

・介護予防の効果測定を行なっているか。どのような成果が出ているか。

●高齢者の社会参加と「通いの場」の拡充

・高齢者の「通いの場」への参加人数や参加率は、どのように推移しているか。

・「通いの場」を拡充するために、研修や会場確保などの支援を行なっているか。

・民間の空きスペースを使ったり、民間企業にもメリットのある形で講座やイベントを開くなど、
行政がコーディネートして多様な「通いの場」を作ってはどうか。

●栄養面からのフレイル対策

・自治体内の高齢者の栄養状況に関する課題を把握しているか。

・保健師や栄養士が「通いの場」を巡回したり、「通いの場」に来られない高齢者を戸別訪問するなど、
アウトリーチ活動でフレイルにつながる低栄養を防ぐ取り組みを行ってはどうか。

・弁当や総菜を利用する一人暮らしの高齢者に向けた、効果的な情報発信を考えられないか。

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
さらなる調査のためのリンク集
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

介護の一歩手前「フレイル」防ごう 都内自治体で取り組み広がる(産経新聞)
https://www.sankei.com/life/news/190529/lif1905290036-n1.html

介護職員向け・フレイル予防のための食のサポートブック(東京都西多摩保健所)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/nisitama/hokeneiyou/koureisya_frailty/koureisya_supportbook.files/all.pdf

未病の改善〜健康寿命の延伸をめざして〜(神奈川県)
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/cz6/cnt/f480290/

兵庫県版フレイル予防・改善プログラム(兵庫県)
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf17/documents/hureirupuroguramu.pdf

自治体別の要介護・要支援認定者数(独立行政法人福祉医療機構)
https://www.wam.go.jp/wamappl/00youkaigo.nsf/aAreaSelect?OpenAgent

おすすめ記事