【環境】海洋プラスチックごみはどこからやってくる?(社会・技術動向)

<概要>
●環境省の調査では、日本列島近海のプラスチック量は世界平均の27倍
●流出経路は未だ不明な点も多いが、都市部では人工芝、地方都市では農薬がマイクロプラスチックの主な原因
●2019年5月10日、有害廃棄物が国境を超えて移動することを制限する「バーゼル条約」に廃プラスチックが追加された
●EUやメキシコ市やブエノスアイレス市など、使い捨てプラスチック製品を禁止する動きが続いている
●環境省もアクションプランを策定、内陸部も含めた自治体の取り組みが求められる
<チェックポイント>
●海洋プラスチックに対する問題意識と自治体の責務
●マイクロプラスチックの海・河川への流出経路の解明
●下水道法の水質調査にマイクロプラスチックを含められないか
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日本列島近海のプラスチック量は世界平均の27倍
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●マイクロプラスチックとは
・マイクロプラスチックとは、大きさが5mm以下の微細なプラスチックごみのこと。
・海に漂うことで、マイクロプラスチックに含有あるいは吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響が懸念されている。
・2015年にドイツで開催されたG7首脳宣言では、海洋ごみが世界的な課題であることが確認されている。
●2種類あるマイクロプラスチック
・マイクロプラスチックには、一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックの2種類がある。
・一次マイクロプラスチックは洗顔料や歯磨き粉のスクラブ材等に利用されているマイクロビーズで、排水溝を通じて自然環境に流出。
・このほか、都市部では河川を通じて人工芝がマイクロプラスチックとして流出し、
例えば東京湾のうち、川崎市周辺だと採取されたマイクロプラスチックの約30%は人工芝。
・地方都市の海岸だと、田んぼの農薬散布に使うマイクロプラスチックなども多い。
・二次マイクロプラスチックは、大きなサイズのプラスチックが自然環境の中で破砕・細分化されて5mm以下になったもの。
・元のサイズが大きいため、マイクロ化する前段階での回収ができて、廃棄物管理やリサイクルなど発生抑制対策を打ちやすい。
平成31年2月 環境省「海洋プラスチックごみに関する状況」
https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/mpl1-d2.pdf
環境省「海ごみ調査報告書」
http://www.env.go.jp/water/marine_litter/pamph.html
日本周辺海域のマイクロプラスチック数は、世界の海の27倍(13ページ)
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/general_waste/20151106umigomi.files/02_MOEJAPAN.pdf
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太平洋側と日本海側で異なる日本の海洋ゴミ
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・プラスチックごみが流出する経路や製品や量など実態調査の手法は確立されておらず、環境省が周辺海域を調査するにとどまっている。
・漂着ペットボトルを製造国別に見ると、太平洋側は日本製のものが多く、東シナ海や日本海側は中国や韓国など外国製のものが多い。
・一般社団法人「ピリカ」がマイクロプラスチック浮遊量調査装置を開発し、
同社のゴミ拾いSNSピリカは福井県や横浜市、岡山県、富山県、和歌山県、泉大津市などで採用され始めている。
一般社団法人ピリカ「マイクロプラスチック等 浮遊状況データベース」
https://opendata.plastic.research.pirika.org
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世界を取り巻く海洋プラスチック問題
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・陸上から海洋に流出したプラスチックごみの発生量は東アジア、東南アジアに集中。
・1位が132万〜353万トンの中国、2位が48万〜129万トンのインドネシア、3位が28万〜75万トンのフィリピン、
4位が28万〜73万トンのベトナム、日本は2万〜6万トン(30位)と推計されている。
・生態系を含めた海洋環境への影響のほか、船舶航行への障害、観光や漁業への影響、沿岸居住環境への影響などが懸念されている。
・EUでは、2030年までにすべてのプラスチック容器包装をコスト的に見合う形でリユース・リサイクル可能にする、
分別収集と選別のガイドラインを発行するなど対応を進めると同時に、マイクロプラスチックの放出を抑制するための検討を始めている。
平成31年2月 環境省「海洋プラスチック問題の解決に向けた環境省の取り組みについて」
https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/mpl1-d3-1.pdf
平成30年8月 環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」
http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-2r3.pdf
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急速に広がる世界のアクション
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・2019年5月10日、有害廃棄物が国境を超えて移動することを制限する「バーゼル条約」に、汚れた廃プラスチックを追加する条例改正が可決。
・2021年1月からの運用開始で、これに向けて世界各国が動き出している。
・EU理事会では使い捨てプラスチック製品禁止法案を採択したり、メキシコ市は使い捨てプラスチック製品の使用を禁止、
ブエノスアイレス市は使い捨てプラスチック製ストローを禁止するほか、フランスでは環境問題を優先政策課題に設定するなど動きが活発になっている。
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今後自治体に求められるアクション
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・環境省は今年5月に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン(案)」を策定、そこには下記の取り組みが示されている。
1. 廃棄物処理制度等によるプラスチックごみの回収・適正処理の徹底
2. ポイ捨て・不法投棄・非意図的な海洋放出の防止
3. ポイ捨て・不法投棄されたごみの回収
4. 海洋に流出したプラスチックごみの回収
5. 代替素材の開発・転換等のイノベーション
・今年6月に大阪で開催されたG20大阪サミットで海洋プラスチックごみによる海洋汚染ゼロをうたった「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を受けて、
環境省は2020年度の海洋プラスチックごみ対策予算を大幅に拡充する方針を固めている。
・沿岸部の自治体はもとより、内陸部の自治体も河川を通じてマイクロプラスチックを流出させていることから、取り組みの強化が望まれる。
令和元年5月 環境省「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」
https://www.env.go.jp/press/106865.html
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チェックポイント詳細
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・海洋プラスチックごみに対する問題意識と、自治体の責務についてどう考えているか。
・都市部では学校や都市公園など行政施設の人工芝が、地方都市では田んぼの農薬散布などで使われるポリエチレン製の肥料カプセルが、
海を漂うマイクロプラスチックの要因と言われているが、自治体として一度、調査をすべきではないか。
・マイクロプラスチックは生態系への影響が大きいとされていながら、その流出経路は未だ解明されていない面もある。
前述の調査結果を元に、流出対策を講じるべきではないか。
・下水道法ではシアンやカドミウムなど有害物質をはじめ、BODや水素イオン濃度など45項目について水質調査を実施することになっている。
この中にマイクロプラスチックは含まれていないが、県などと連携しながら、国に対して調査方法の確立と下水道法の見直しを働き掛けてはどうか。
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さらなる調査のためのリンク集
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経済産業省 海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190507002/20190507002.html
環境省 海洋プラスチック問題の解決に向けた環境省の取り組みについて
https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/mpl1-d3-1.pdf
内閣官房 海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kaiyo_plastic/dai1/plan.pdf
横浜市 横浜市内の沿岸におけるマイクロプラスチックの調査
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kankyohozen/kansoku/science/shiryo/youshi.files/0092_20190304.pdf
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特別寄稿:伊藤大貴(株式会社Public dots & Company 代表・博報堂新規事業開発フェロー・前横浜市会議員)
株式会社Public dots & Companyは2019年5月15日に元地方議員、現職地方議員が中心となって立ち上げた、公共戦略コミュニケーションを支援する会社です。
パブリックマインドとビジネスマインドを有した人材を地方議員の中から発掘し、企業とマッチングすることで、プロジェクトを成功へ導きます。企業プロジェクトへの参画にご関心のある方は、info@publicdots.comまで。

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