【予算】予算編成に議会・市民の意見を反映させる工夫(事例研究)

<概要>
●自治体の支出は、全て議会で決められた予算に従う
●予算編成過程の情報公開と、途中段階での意見反映が重要になる
●事業評価やレビュー、議会の決算事業評価を予算に反映する工夫
●予算要望に対する回答のネット公開や、会派予算要望のネット中継も
●予算編成過程を公開し、市民のパブリックコメントを募集する自治体も
●議会全体の意思としての「予算教書」は今後の課題
<チェックポイント>
●予算編成プロセスとその公開
●決算審査や事業評価の予算編成への反映
●議会・市民(各種団体)からの意見聴取
<掲載事例>
●東京都
●千葉県千葉市
●神奈川県茅ヶ崎市、千葉県我孫子市、兵庫県尼崎市、兵庫県川西市議会会派
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予算の法的な位置付けと編成過程
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●自治体は議会で決めた予算しか使えない
・首長と自治体職員は予算の範囲内でのみ支出を許され、予算書の「款」「項」をまたいだ流用は原則禁止。
・物品購入の契約や補助金の交付決定など支出を行う前の段階で、
それが予算書に含まれているかどうか確認する「支出負担行為」を必ず行わなければ、自治体は支出ができない。
・4月から翌年3月までの当初予算を年度途中にも実態にあわせて修正する場合は、必ず「補正予算」を組んで議決する。
・補正予算を議決する時間がない時は、首長の「専決処分」となるが、直後の議会で報告が必要。
・将来にわたる債務を負う契約を結ぶ「債務負担行為」、年度内に支出できないものを翌年に繰り越す「繰越明許費」
複数年度にわたる事業の予算総額と年度毎の予算額をあらかじめ議決する「継続費」など、単年度予算の例外もある。
●予算編成の方針とプロセスの公開
・予算編成方針(9〜10月)→担当部局が要求(10〜11月)→財務部局の調整(11月〜12月)
→市長査定(1月)→議会への提案(2月)という流れをとる自治体が多い。
・予算編成方針を公開する自治体が増えている。
・予算編成過程についても、詳細に公開する自治体も。(高松市)
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納税者・議会の声を予算編成に反映させる工夫
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●事業評価を予算編成に反映させる
・見直しを行わなければならない事業について、各局要求の前にその方向性を検討する「サマーレビュー」。(千葉市)
・決算審議で「議会による事業評価」を行い、翌年度の予算編成に反映する。
・市民が参加した事業仕分けや公開レビュー方式での意見を、翌年度の予算編成に反映する。
●議員・会派や市民・各種団体の意見を聴取する
・前年度の秋から冬にかけて予算要望書などによる意見聴取は多くの自治体で実施されている。
・要望に対する回答をネット公開している自治体や、会派の予算要望をネット中継している自治体も。
●「概算要求」や「予算案概要」の段階で情報公開する
・予算書が作成された後であると意見反映は不可能で、また一定の材料がないと事前の議論や調査・準備がしにくい。
・東京都など大規模な自治体では「概算要求」を公開し、事前調整や意見提出の機会を持つ場合がある。
・予算案概要を議会提出の1週間前に公開し、少しでも早く予算の姿を示す自治体もある。
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自治体(議会会派)の取り組み事例
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●予算編成過程を公開し、市民のパブリックコメントへ(千葉県我孫子市)
・予算を伴うすべての新規事業に関して要求段階から公開し、市民からのパブリックコメントをうける。
・要求段階、精査した段階と順次公開し、市民からの意見も掲載。
・他に、政策評価と組み合わせる形も(兵庫県尼崎市)
●マイナス型会派要望を行い、マニフェスト大賞へ(川西市議会会派)
・要求の羅列とせず、「2億円超削減を」と既存事業の廃止や縮小を求める。
・第13回マニフェスト大賞にて優秀政策提言賞を受賞。
・3月29日付会派Facebookにて平成31年度予算提案書を公開。
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議会全体の意思を予算編成にどう反映させるか
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・議員・会派の個別の予算要望だけでなく、「議会」として意見を取りまとめる「予算教書」の提言も。
(佐々木信夫著「地方議員」117ページ)
・予算編成権のないアメリカ大統領の「予算教書」を参考に、首長の予算編成権に対して議会として「教書」の形で影響を与えようとするもの。
・神戸市議会で検討された経過もあるが、議会の現状から考えると時期尚早という声が大半。
・議員・会派単位で主張するだけでなく、議論し「議会」としての合意をはかる議会改革が各地で実践。
予算教書はその一つの提案であるが、実現は今後の課題。
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チェックポイント詳細
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●予算編成プロセスとその公開
・現状の予算編成プロセスはどうなっているか。
・予算編成方針、各部局の予算要求書などは公開されているか。
●決算審査や事業評価の予算編成への反映
・決算審議をどう予算に反映させてPDCAを行っているか。
・事業評価シート、レビューなどがある場合、それをどのように予算編成へ反映させているか。
●議会・市民(各種団体)からの意見聴取
・当初予算編成に向けて議員・会派からの予算要望の仕組みづくりはできているか。
・市民(各種団体)からの意見聴取は実施しているか。その回答は公開しているか。
・新規事業や市長マニフェストに沿った事業だけでも、事前公開と意見聴取を行ってはどうか。
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さらなる調査のためのリンク集
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財政情報の開示と予算統制の関係(小西砂千夫)
https://www.jbaudit.go.jp/koryu/study/mag/pdf/j28d04.pdf
(55〜57ページ)
予算編成の透明度ランキング調査(全国市民オンブズマン連絡会議)
https://www.ombudsman.jp/rank/2012年%E3%80%80予算編成の透明度ランキング調査
予算策定段階からのわかりやすい情報開示システム(環境首都創造ネットワーク)
http://www.jnccs.net/modules/予算策定段階からのわかりやすい情報開示/#box1
議会改革の現状と課題(三重県議会研修会)
http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000075894.pdf
(10ページ)

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