【教育】ついに教員のいじめも!増加するいじめ件数(社会・技術動向)

<概要>
●「教員によるいじめ」は処分の対象外
●いじめの認知件数は過去3年間で2.2倍に
●平成25年にいじめ防止対策推進法が成立
●スクールカウンセラーやスクール弁護士、SNSやAIの活用も始まっている
●未だに教育委員会や学校現場に残る、甘い認識とずさんな対応
<チェックポイント>
●教職員の処分規定
●いじめ認知件数の把握
●いじめ問題対策連絡協議会や調査機関の設置
●若手教職員のサポートや被害者のフォロー
●SNSを含めた相談体制
<掲載事例>
●東京都、新潟県
●滋賀県大津市、千葉県流山市、茨城県取手市
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「教員によるいじめ」は処分の対象外
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●神戸市の教員が集団で若い教員をいじめた事件が発覚
・20代の男性教員が、30代〜40代の男女4人の教員から、
激辛カレーを食べさせられたり目に塗られるなどのいじめを受け続け、学校に来られなくなった。
・加害教員はいじめの様子を動画で撮影したり、授業中に児童の前でも話していた。
・被害教員は前の校長に相談したが、対応されず黙認状態だった。
●そもそも「教員によるいじめ」は処分の対象外
・本件は「いじめ」ではなく「傷害罪」と言える事件だが、そもそも各自治体における教員の処分指針では、
体罰やセクハラは処分対象に明記されていても、いじめについては処分対象として明記されていないケースがほとんど。
・また、公務外の傷害については処分対象になっても、公務内の傷害(体罰以外)については規定されていない自治体が多い。
・暴行や暴言により「職場の秩序を乱した場合」のみ処分対象になるが、影で行われた「いじめ」が対象となるかどうかは不明。
全国の都道府県・政令指定都市の処分基準リスト
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1399900.htm
・東京都は「いじめへの加担や助長」まで処分対象に明記している。
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いじめの認知件数は過去3年間で2.2倍に
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●いじめの定義
児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う
心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、
当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの。
いじめ防止対策推進基本法 第2条
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1337278.htm
●増加するいじめの認知件数
・平成29年度414,378件、うち小学校は317,121件で中学校は80,424件。
認知した学校数の比率は小学校・中学校ともに約8割。
・平成25年いじめ防止対策推進基本法の施行から、
早期対応の観点から「けんか」や「ふざけあい」なども報告されるようになり大幅に増加。
・発見のきっかけはアンケート調査など学校の取り組みにより発見された件数が半数を占める。
中学校(29.2%)、高校(24.3%)では本人からの訴えの比率が小学校(19.7%)に比べて高い。
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現在の制度や国の動き
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●いじめ防止対策推進法
・平成23年に発生した滋賀県大津市立中学校に通っていた生徒が自殺した事件をきっかけに、平成25年に成立。
地方公共団体、学校、教職員、保護者の責務などが定められている。
●スクールカウンセラー配置
・いじめ、暴力行為などの問題行動や不登校に対応するほか、災害や事件・事故などの被害者である児童生徒等の心のケアに資するよう、
スクールカウンセラーや子どもと親の相談員等を配置して相談体制の充実を図る。
●スクール弁護士(ロイヤー)配置
・いじめ、虐待、不登校、保護者とのトラブルなど、法的なアドバイスが有効な場面に弁護士が早い段階から関わることで、
事態が深刻化する前の解決を目指す。
●SNSを活用した相談
・SNS等を活用による教育相談体制の充実を図るための教育支援体制整備事業費補助金(文部科学省)
・厚生労働省は、SNS相談を行っている団体を紹介している。
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自治体の取り組み事例
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●滋賀県大津市
・いじめ対策ポータルサイト開設
・いじめ対策担当教員配置
生徒指導に力を持つ教員をいじめ対策担当教員として市費により配置することで、未然防止や早期発見につながる取組を進める。
・事案の多くが若手教職員のクラスで発生していることから、経験不足を補うために、
過去の事例をAIが分析し、対処方法を教職員に提示するシステムの運用を開始。
●千葉県流山市
・常勤のスクールロイヤーを県内で初めて採用。
・千葉県野田市も、県弁護士会に委託して10月からスクールロイヤー4人を配置する方針。
●茨城県取手市
・第三者委員会が全員担任制・複数担任制の導入を再発防止策に盛り込む。
●新潟県
・LINEを活用した「県いじめSNS相談」の2018年度の利用実績が、電話とメールでの相談件数を大幅に上回った。
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今後の課題
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●法改正案の行方
・いじめ防止対策推進法には施行3年後の見直し規定があるが、手をつけられないまま5年が経過。
・超党派議員による改正案では、いじめを放置・隠蔽した職員の懲戒規定などが試案から削除され、被害者側や市民団体から批判も。
・一方で、「いじめ防止対策推進法ではなく、東京都のように処分規定に追加すれば十分」という意見も。
●学校現場への法の趣旨の定着
・被害者の認識に寄り添うべき自治体が、「いじめの定義が広すぎるのは法の欠陥」と主張するなど、
学校現場において法の趣旨が理解されていない。
●教育委員会や学校現場のずさんな対応
・教育委員会が設置する第三者委員会ではなく、法に基づく市長の再調査によりいじめが認定される。(神戸市)
・いじめ調査用紙の裏紙を授業で使用。(熊本市)
・学校や家庭との情報共有がされず。被害者の実名を記載したアンケートを実施。(吹田市)
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チェックポイント詳細
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●教職員の処分規定
・教員によるいじめの加担や助長について、処分の対象として明記されているか。
・教員間の暴力やいじめも、職場の秩序に関わらず処分の対象とすべきではないか。
●いじめ認知件数の把握
・学校種別の認知件数はどのように推移しているか。
・重大事態の発生件数及び対応経過はどうなっているか。
●法に基づく対応
・地方いじめ防止基本方針の策定状況と、その内容や改定はどうなっているか。
・いじめ問題対策連絡協議会は設置しているか。
・重大事態の調査又は再調査を行うための機関の設置しているか。
設置している場合、教育委員会の附属機関なのか、地方公共団体の長の附属機関なのか。
●学校現場での対応
・各教員に対して、いじめの定義、早期対応の重要性など法の趣旨をどのように徹底しているか。
・若手教職員がいじめ対応する際のサポート体制はあるか。
・スクールカウンセラーを活用した被害者へのフォロー体制はどうなっているか。
●相談体制
・SNSを活用した相談体制の確立してはどうか。
・すでにSNS相談を行なっている場合は、電話・メール・SNSの相談件数の比較。
・相談窓口の利用時間は生徒の生活実態に即していて、通年利用できるか。
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さらなる調査のためのリンク集
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スクールカウンセラー実践活動事例集(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1372335.htm
いじめ防止基本方針・いじめの防止等のための組織等の状況(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000538662.pdf
NHKクローズアップ いじめ・自殺
https://www.nhk.or.jp/gendai/digest/ijimejisatsu.html
道徳の教科化(3) いじめ キーワードは何?(西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/433537/

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