【少子化】妊婦健診の自治体間格差(事例研究)

<概要>

●妊婦健診助成の自治体間格差は最大6万円

●妊婦健診の検査項目は拡大している

●公費負担制度を活用しても自己負担が生じる現状

●妊婦健診14回を超えた場合の対応も自治体間で異なる

●早産のリスク軽減につながる妊婦歯科検診は国の制度が無いが、独自に無料実施する自治体も

<チェックポイント>

●公費負担の上限は十分か

●妊婦健診14回を超えた場合の対応

●無料の妊婦歯科検診の実施について

<掲載事例>

●石川県輪島市、大阪府大東市、茨城県つくばみらい市、福島県二本松市

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妊婦健診助成の自治体間格差は最大6万円
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・妊婦健診の公費助成額は市町村によって異なり、全国平均は2018年4月時点で10万5734円。厚生労働省が調査。

・都道府県別の平均額ベスト3は石川県・福島県・岐阜県で、ワースト3は神奈川県・東京都・山梨県。
平均額が最も低い神奈川県は7万1417円で、最も高い石川県の13万7813円より6万6396円も少ない。

・市町村の公費負担額は、27.3%が9万円台、次いで26.4%が10万円台。公費負担額が無制限の市町村も68ある。

・国が望ましいとしている14回以上を公費負担の対象としている自治体は100%

・前回の2016年の調査と比べて、産婦人科診療ガイドライン2017において推奨レベルAとされる検査項目を実施する割合は95.9%から100%に増加。
また、望ましい基準に定める検査項目を全て実施する割合は64.8%から75.1%に増加している。

2018年調査
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000176691_00001.html

2016年調査
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/kouhihutan_h27.pdf

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妊婦健診の公費負担制度の課題
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●公費負担の範囲

・妊娠確定前の診療は対象外の自治体が多く、医療機関を移った際、初回診査を妊婦健診としていない場合は、公費負担制度の対象外となることがある。

http://www.city.kobe.lg.jp/child/maternity/QA2-hojoken.pdf

・たまひよnet「先輩ママデータ」の調査よると、妊婦健診の助成制度を活用後の自己負担額はトータルで約58,000円とのこと。

https://venture-finance.jp/archives/20527

●公費負担となる回数

・妊娠週数が40週を越え予定日を過ぎても出産が始まらない場合は、週に1回~2回の妊婦健診。

・14回を超えた場合の対応は自治体によって異なる。2019年調査では実施されていないが、2016年調査では妊婦健診の上限回数の調査を行っている。

・無制限の自治体が18、15回~18回の自治体が62。

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/kouhihutan_h27.pdf

http://www.city.kahoku.ishikawa.jp/www/01/101/001/003/index_11564.html

・アンケート調査でも、14回の妊婦健診を超えてしまい、15回目以降は自費で大変だったという声も。

https://feature.cozre.jp/77676

●妊婦歯科健診

・妊娠中は、口腔清掃の困難さや嗜好の変化・ホルモンバランスの変化等によって、むし歯や歯周病が進みやすい。

・歯周病は、早産や低体重児出生と関連するとの報告。

・妊婦のうち、保健センター等において集団歯科健診を受診した者は約7.5%、クーポン券等を配布されて歯科診療所等で個別健診を受診した者は約23.6%

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000516570.pdf
(9ページ)

・妊産婦の歯科健診は市町村独自の努力等で実施されており、実施は進んでいない状況。

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000488879.pdf

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自治体の取り組み事例
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●石川県輪島市(15回目以降の妊婦健診)

・15回目以降の妊婦健診に助成。妊婦一般健康診査14回目の受診票を使い終わり、出産予定日を過ぎて妊婦健診を受診した妊婦が対象。

・助成額は1回につき上限額5,730円で、限度は3回まで。

・市立輪島病院での妊婦健診は産婦人科窓口に備え付けの妊婦一般健診受診票に記入すれば、費用の支払いは不要。それ以外の医療機関の場合は償還払い。

https://www.city.wajima.ishikawa.jp/docs/2013032300046/

●大阪府大東市(15回目以降の妊婦健診、妊婦歯科検診)

・多胎妊娠の場合は15回目と16回目(各5,200円)の受診券を交付。

・指定医療機関で妊婦歯科検診を1回無料で受診可能。受診券を発行し、償還払いは行っていない。

http://www.city.daito.lg.jp/kurashi/ninshin_shussan/ninshinshitara/1301565405114.html

●茨城県つくばみらい市(15回目以降の妊婦健診)

・受診券を16回目まで交付。17回目以降も償還払いの対象。

https://www.city.tsukubamirai.lg.jp/viewer/info.html?id=292

●福島県二本松市(妊婦歯科検診)

・妊婦歯科検診の受診券を交付。指定の医療機関で健診を受ける。

http://www.city.nihonmatsu.lg.jp/page/page001292.html

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チェックポイント詳細
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・妊婦健診の公費負担制度は自治体によって異なる。公費負担の条件はどの程度か。また、周辺自治体と比較してどうか。

・現状の公費負担制度では、妊婦健診にかかる自己負担はどの程度になると認識しているか。
公費負担を拡充して妊婦の自己負担を軽減することが、安心して子供を産める環境につながるのではないか。

・妊婦健診の回数は何回を上限にしているか。
一般的には14回で足りるとされるが、予定日を過ぎた妊婦が15回目以降も安心して健診を受けられるようにすべきではないか。

・妊娠中は歯周病などが進みやすく、また歯周病によって早産などのリスクも高くなる。自治体独自に無料の妊婦歯科検診を実施してはどうか。

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さらなる調査のためのリンク集
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妊婦健診は受けないといけないの?
http://w-health.jp/fetation/prenatal_care/

三重県医師会;産婦健康診査事業実施マニュアル
http://www.mie.med.or.jp/hp/doctor/boshi/pdf/index2.pdf

ネットを信じ込む妊産婦と医師の情報差の実態
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191002-00305677-toyo-bus_all&p=2

妊婦歯科健診の状況と受診率向上の課題について
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/161794.pdf

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