【情報】society5.0時代に求められるデータ活用とデジタル人材(社会・技術動向)

<概要>

●5G(通信)、AI(人工知能)、IoT(センサー情報)などテクノロジーの著しい進展が社会の姿を大きく変える

●働き方も教育もようやく脱工業化が進む

●データを基にしたデジタルマーケティングがより重要に

●公共セクターに存在しないデジタル人材を民間から登用する必要がある

<チェックポイント>

●socirty5.0に向けた自治体の方向性と、新たな自治体連携

●官民データ活用推進基本法を踏まえたデータ活用

●CDOなどデジタル人材登用の課題

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ようやく脱工業社会への舵を切る日本
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●society5.0とは

・第5期科学技術基本計画において、我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されたもの。

・人類のこれまでの歴史を振り返り、狩猟社会をsociety1.0、農耕社会をsociety2.0、工業社会をsociety3.0、情報社会をsociety4.0と位置付けた上で、
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会をsociety5.0とした。

・IoTですべての人、モノが繋がり、私たちは常時オンラインという、これまでに経験のしたことのない時代を迎える。
生体情報から移動、購買などの行動履歴など、人にまつわる情報はセンサーを通じてアップロードされ、
インターネットの方でAI(人工知能)などを活用して解析し、再び人へフィードバックすることで、
膨大なデータを産業へと発展させつつ、人々の暮らしをサポートする時代が始まる。

●あらゆるものが足りていない

・2019年3月の総務省情報流通行政局の資料によると、IoTの活用一つ取っても、予算の制約・人材不足・情報不足など「課題が山積」。

・これを受けて、総務省は地域情報化アドバイザーの支援に乗り出している。

・東京都や横浜市、大阪市など規模の大きな自治体を中心に、地方自治体にいる、データリテラシーやテクノロジーに精通した職員を他自治体へ派遣する制度がそれである。

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東京オリンピック後、一気に課題が噴出する
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●未だsociety3.0の日本

・日本の大きな課題は未だ、社会システムがsociety3.0、つまり工業社会を前提とした仕組みで回っている点にある。

・2000年初頭以降のインターネットの爆発的な普及と、IT産業の進展によってアメリカを中心に世界は情報社会(society4.0)へ移行した。
産業は垂直統合型から水平産業型へ、雇用は終身雇用からプロジェクトベースへ、プロジェクト進行は計画型からアジャイル型へ、と社会の仕組みは大きく変わった。

・日本は高度経済成長期の大きさと、その時代を支えた団塊の世代の人口の多さがあいまって、
その時代に築き上げた工業社会を前提としたあらゆる社会システムが今なお、強く生き残っており、それがsociety5.0への移行を阻害しがちである。

●働き方も教育も変わる

・就職活動は同じ時期にスタートし、社会人になれば出社時間は基本的には一律、
台風など災害が起きても頑張って会社へ出社しようとする日本人のマインドセットは、人が生産の歯車としてデザインされていた工業社会そのものである。

・現在、総務省を中心に旗を振っている「働き方改革」は情報社会へと移行できなかった日本社会への挑戦でもある。

・Society5.0への対応は教育のあり方から変えていく。
すでに文部科学省ではsociety5.0時代の人材像、学びのあり方、今後の教育政策の方向性などの議論に着手している。

・特に大きな変化としては、以下の3点が挙がっている。

(1)一斉授業一律授業から個人の進度や能力、関心に応じた学びへの転換
(2)同一学年集団での学習から学習到達度や理解度に応じた異年齢、異学年での協同学習への転換
(3)学校教室での学習から大学や企業、研究機関などを活用した多彩な学習プログラムへの転換

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加速する官民連携
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・Society5.0への移行に伴い、今後、官民連携事業が拡大していくだろう。

・中でも動きが早いのが東京都で、2019年4月に「society5.0社会実装モデルのあり方検討会」を設置し、検討会を開催している。
組み込みOSの第一人者、坂村健氏やヤフー、グーグルなどからも有識者が参加し、このほか、経団連や経済同友会、新経連などからも人材が派遣されている。

・データを基にしたデジタルマーケティングがより重要になっていく。
ビジネスセクターではいち早く取り組みが始まっているCX(カスタマーエクスペリエンス)やDX(デジタルエクスペリエンス)の設計の重要性が自治体でも認識され始める。

・問題はこうしたマーケティングに精通した人材が公共セクターには存在しない点にある。

・今後、自治体ではデータ活用の総合戦略と、それをベースにしたサービス・デザインなどに精通した人材を民間企業から登用していかなければならないだろう。

・ヤフー元社長の宮坂氏が東京都の副知事に就任したが、これは実質的に同氏が東京都のCDO(chief digital officer)を務めることを意味しており、society5.0に向けた象徴的な動きといえる。

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チェックポイント詳細
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●国が矢継ぎ早にsocirty5.0への移行を打ち出しているが、こうした大きな政策転換に対して適切な情報収拾と、自治体としての方向性は打ち出せる体制となっているか。

●従来のように自治体も横並びで国に引き上げてもらう時代が終わりを告げているが、society5.0に対応した新しい自治体連携を検討すべきではないか。

●自治体のデータ活用について今後、本腰を入れていくべきではないか。

●官民データ活用推進基本法が施行されて3年が経つが、社会の変化に対する自治体の感度は低いと言わざるを得ない。
国の方針をしっかりと捉えながら、スピード感を持って企業とも連携しながら、データマーケティングに取り組んでいくべきではないか。

●これまでCIOが上手にワークしなかったことの分析と、将来的なCDO導入に向けた課題や可能性ついて、どう考えるか。

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さらなる調査のためのリンク集
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内閣府 科学技術政策
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

総務省 society5.0時代の地方
http://www.soumu.go.jp/main_content/000606290.pdf

文部科学省 society5.0に向けた人材育成
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/06/1405844_002.pdf

富士通総研 産学連携によるsociety5.0を牽引する人材「チェンジメーカー」育成の取り組み
https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/knowledge/case-studies/98.html

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特別寄稿:伊藤大貴(株式会社Public dots & Company 代表・前横浜市会議員)
株式会社Public dots & Companyは2019年5月15日に元地方議員、現職地方議員が中心となって立ち上げた、公共戦略コミュニケーションを支援する会社です。
パブリックマインドとビジネスマインドを有した人材を地方議員の中から発掘し、企業とマッチングすることで、プロジェクトを成功へ導きます。企業プロジェクトへの参画にご関心のある方は、info@publicdots.comまで。

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