<概要>
●東日本大震災では消防団が活躍したが、252人の消防団員が亡くなって装備や情報の不足が指摘された
●消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律が施行
●団員が減少し続ける中で、市職員が昼間だけ活動する市役所消防団なども
●医療チームとの連携訓練や、災害が起こった後の実践的な発災対応型防災訓練を行う自治体も
●LINEや広域消防組合のシステムで被害状況の収集や一斉指令
<チェックポイント>
●消防団員を確保するための工夫
●実践的な訓練と装備の充実
●報酬が団員個人に渡っているか
<掲載事例>
●兵庫県神戸市
●奈良県奈良市、茨城県北茨城市、熊本県西原村、埼玉西部消防組合(所沢市、飯能市、狭山市、入間市、日高市)
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消防団の概要と消防団員の待遇
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●消防団の概要
・消防団は消防組織法で定められ、設置・区域・定員などは条例で定めることとなっている。
・火災の鎮圧だけでなく、地震、風水害など大規模災害時の救助・救出・避難誘導・警戒・防除等に関する業務や、
平常時における訓練や住民への啓発・広報活動・防火指導・救急指導などを行う。
・分団が行う月例訓練の他に、消防署との合同訓練、学校園や地域団体等が実施する地域における防災訓練、操法大会出場のための訓練がある。
・すべての災害・訓練に出動する消防団員を基本とするが、
必要な団員確保に苦慮する場合、特定の活動を実施する機能別分団を設置することができる。
消防組織法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000226
●消防団員の待遇
・地方公務員法に定められている非常勤特別職の地方公務員。
・自営や会社員等の仕事をしながら、災害発生時や訓練時には自宅や職場等から出動。
・報酬として、一般団員は年額36,500円、手当として、出勤1回あたり7,000円が地方交付税に算入されており、
これを基準として、各自治体が条例で金額を定めている。
・他に公務災害補償や退職報償金がある。
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消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律
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●東日本大震災における活動と課題
・東日本大震災では、消防活動だけでなく水門閉鎖や、救助・避難誘導などの活動事例がある。
https://www.fdma.go.jp/disaster/higashinihon/item/higashinihon001_29_04-04-01.pdf
(317ページ)
・一方で、消防署員の死亡者23人に対して消防団員は252人が亡くなっており、装備や情報の不足を指摘する専門家も。
https://toyokeizai.net/articles/-/9365
●消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律
・東日本大震災の教訓を踏まえ、消防団を将来にわたり欠くことのできない代替性のない存在として位置づける。
・装備の改善、団員確保等を進めるとともに、地域防災力の充実強化を図ることを目的とする。
・加入促進のための事業者・大学等の協力や地域における防災体制の強化も明記されている。
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自治体の取り組み事例
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●兵庫県神戸市
・LINEのチャットボット(自動対話プログラム)で災害情報を共有。
・団員はスマートフォンで撮影した写真など災害情報を、自分の位置情報と合わせてLINEで送信。
https://www.kobe-np.co.jp/news/bousai/201908/0012571893.shtml
●奈良県奈良市
・大規模災害を想定して医療専門チームDMAT・DPATと連携した訓練を実施。
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/torikumi-jirei/pdf/29_nara.pdf
●茨城県北茨城市
・市役所の勤務時間内だけ活動する「機能別消防団」として、市職員からなる市役所消防団を結成。
・24時間態勢で有事に備える「基本団員」と比較して、入団のハードルを下げ、団員確保と対応力の維持につなげる。
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15670889377056
●熊本県西原村
・災害が起きた後の対応を実践的に訓練する発災対応型防災訓練をしていたため、熊本地震で的確な初動対応。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fukuwanobuo/20160913-00062100/
●埼玉西部消防組合(所沢市、飯能市、狭山市、入間市、日高市)
・消防参集システムの運用を構成5市の消防団で共有、地震情報と連携して、5市の消防団員の携帯電話に参集指令を一斉自動配信。
・消防団員が送った被害状況のメールや写真も5市で一元化。
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/torikumi-jirei/pdf/11_saitama.pdf
(4ページ)
●その他の消防団充実強化取組事例(消防団オフィシャルサイト)
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/torikumi-jirei/
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今後の課題
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●定員の減少
・平成30年度は843,667人であり、平成22年883,698人から減少傾向。
・被雇用者団員(会社員等)の率が73.6%と増加傾向であり、災害発生時、所属する分団から離れた職場で勤務していることもある。
・女性団員数は25,981人で構成比3.1%
総務省消防局 女性消防団員コーナー
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/ladies/index.html
・学生団員数は10年で3倍に増えて4,562人。
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/welcome/student/index.html
●報酬の支給方法
・総務省は通知にて「報酬、出勤手当などはその性格上、本人に直接支給されるべきもの」としているが、
分団の口座に一括支給、個人口座に振り込まれた額を団員から回収するなど、個人に報酬が届かないという事例が報道される。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201804/0011195128.shtml
https://www.iga-younet.co.jp/2018/07/15/7902/
●大規模災害時等への対応を意識した訓練や装備
・大規模災害を想定した訓練に重点を置く自治体の割合は35%、訓練が新たに必要とする自治体の割合は51%
・実際の火災を想定した訓練と比べて低くなっており、今後、大規模災害を想定した訓練の比重を増やす必要あり。
消防庁大規模災害等における消防団の重要性(総務省消防庁)ページ下部
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/about/case/imp.html
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チェックポイント詳細
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●消防団員の確保
・条例で定める自治体全体の定員の充足率と、地域・分団毎の定員充足率はどうなっているか。
・充足していない場合、機能別消防団の編成を検討すべきでないか。
・学生消防団員を増やすために、就職を支援するための認証制度などを考えてはどうか。
学生消防団活動認証制度(愛知県)
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shobohoan/gakusei-ninsyo.html
・消防団員に特典やサービスを提供する「消防団協力事業所」の数および広報はどうなっているか。
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/welcome/company/about/index.html
●訓練と装備の充実
・大規模災害を具体的に想定した訓練や、医療との連携訓練の実施状況はどうか。
・国が定める装備基準に比べて、自治体における実際の装備は十分か。
消防団の装備の基準(消防庁通知)
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/assets/260207_1houdou_01_houdoushiryou.pdf
・消防ポンプ車を更新する際のAT化、普通免許で運転できる3.5トン未満車に切り替えてはどうか。
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2019/03/20/JD0057892984
・団に支給される備品購入等の運営補助費の額は適切か。
●報酬等の支給
・報酬や手当が個人口座に振り込まれているか。
・団が個人から回収をしていないか。
・地方交付税に参入される額に比べて、条例で定められている額は十分か。
・年間に一度も出動していないのも関わらず、報酬が支給されている団員がいないかどうか、出動実績を確認しているか。
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さらなる調査のためのリンク集
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消防団オフィシャルウェブサイト
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/
公益財団法人 日本消防協会
http://www.nissho.or.jp/
2017 地域防災力の充実強化と消防団(交易財団法人 日本消防協会)
http://www.nissho-jyouhou.jp/nisshohp_img/jirei/h29shobodanjirei_all.pdf
消防団等充実強化アドバイザー派遣制度
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/welcome/adviser/index.html
消防団の現状と課題 資料P82(武蔵野大学)
https://www.musashino-u.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00000860.pdf&n=消防団の現状と課題+―共助の要である消防団の衰退を食止めることは可能なのか―.pdf