【介護福祉】認知症の行方不明者の早期発見と保護(事例研究)

<概要>

●2018年の認知症の行方不明者数は1万7千人で行方不明者全体の2割を占める

●現在600万人程度と推定されている認知症患者は、2025年には700万人に達する

●多くの自治体で認知症サポーターやSOSネットワークに対するメール配信

●警察との連携や情報共有も進む

●GPSを活用する市町村は全体の3割

●認知症の方が起こした事故の損害賠償保険を全額公費で実現する自治体も

<チェックポイント>

●認知症患者の行方不明者数と今後の見通し

●行方不明となった認知症患者の早期発見、保護の方策について

●メール配信システムやGPSの効果的な活用法

●警察との連携や情報共有

●事故を起こした時の損害賠償保険

<掲載事例>

●群馬県、福井県、大阪府

●兵庫県神戸市

●北海道釧路市、青森県むつ市、兵庫県西宮市、群馬県高崎市、神奈川県大和市

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認知症の行方不明者
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●2018年の認知症の行方不明者数と今後

・2018年の1年間に警察に届け出があった認知症の行方不明者は延べ1万6927人で、前年より1064人多く、6年連続で増加。

https://www.asahi.com/articles/ASM6L5S9DM6LUTIL030.html

・行方不明者全体に占める割合は19.2%で過去最大。

・所在確認までの期間は捜索願提出の「当日」が1万1905人、「2~7日」が4205人で、99.3%が1週間以内に発見、死亡が確認されたのは508人。

・現在600万人程度と推定されている認知症患者は、2025年には700万人に達する。
それによって運転による交通事故や、徘徊による失踪・死亡事件の増加が想定されている。

https://jisin.jp/life/living/1751413/

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行方不明の認知症患者を早期発見する取り組み
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●認知症サポーターやSOSネットワーク

・認知症高齢者等が行方不明になった場合、認知症の理解者である「認知症サポーター」に行方不明情報を電子メールで配信。

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/ho-huku/17300014.html

・行方不明者の顔写真や所持品などの写真も添付する自治体もある。

https://www.sankei.com/region/news/160303/rgn1603030041-n1.html

・北海道釧路市では、周辺1市7町、3警察、460の協力団体が「SOSネットワーク」を作り、警察と家族以外の発見率が5割以上に。

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/gyousei/th28_yukuefumei_torikumijirei.pdf
(2ページ)

・青森県むつ市は、みちのく銀行との協定により、従業員の半数以上が認知症サポーター養成講座を受講した認知症サポート事業所に対して、
会社や従業員のローンの金利を0.2%〜0.5%優遇することでサポーターやサポート事業所を増やしている。

https://info.ninchisho.net/archives/16085

●警察との連携や情報共有

・群馬県警は、本人か家族の同意を得て手のひらの静脈や顔写真を登録しておき、保護した人の身元確認に活用。

https://www.asahi.com/articles/ASL6H5DX1L6HUBQU00X.html

・福井県警は県を通じて、全市町が把握する認知症の人の名前や特徴・顔写真の提供を受け、データベース化して全警察署で共有。

・大阪府警は保護した認知症の人かその家族から同意を得て、名前や住所、症状などを自治体に提供。
認知症の人がひとり歩きを繰り返すのを防ぎ、必要な介護や治療につなげるのが狙い。

・兵庫県西宮市では事前に登録されている認知症高齢者らの情報を地元警察署が閲覧可能。
夜間や土、日曜などでも警察署が認知症高齢者の情報を閲覧でき、速やかな捜索や保護につなげるのが狙い。

https://www.nishi.or.jp/shisei/koho/shashin-news/2019nenn/201905/20190521photonews.html

●GPS(衛星利用測位システム)機器の貸し出し

・群馬県高崎市では、靴やベルトに付けられるGPSの無料貸し出しを2015年10月から始め、2年弱で稼働件数268件・発見保護191件。

https://www.jomo-news.co.jp/ad/genkipluslife/data/vol016/thinkkaigo/

・GPSなど徘徊探知システムを活用している市町村は全体の3割。

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center1/307/03_kouseiroudousyo.pdf
(24ページ)

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認知症の方が起こした事故の損害賠償保険
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・神奈川県大和市は、全国で初めて認知症の方が起こした事故の損害賠償保険を、全額公費負担で実現。

https://headlines.joint-kaigo.com/article-8/pg1077.html

・兵庫県神戸市では、認知症の無料診断と賠償責任保険・見舞金・GPS補助金がセットになった「神戸モデル」を開始。

https://kobe-ninchisho.jp

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チェックポイント詳細
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●認知症患者の行方不明者数

・これまでの認知症患者と行方不明者数の推移はどのようになっているか。

・今後の認知症患者数と、それに比例した行方不明者数の見通しはどうか。

●行方不明となった認知症患者の早期発見

・認知症患者の行方不明者の所在確認は現状どのような仕組みで行なっているか。

・発見者の割合や、発見された時の行方不明者の状況はどうなっているか。

・認知症サポーターやSOSネットワークに加入しているサポート事業所の数や推移はどうか。

●メール配信システム等の効果的な運用

・メール配信システム等に登録されている認知症患者の数や情報の質(写真など)を増やすために、どのような方法が考えられるか。

・行方不明となった認知症患者を探してくれるメール配信先の登録数を増やすために、どのような方法が考えられるか。

●警察との連携や情報共有

・事前に登録されている認知症患者の情報を本人、家族の同意を前提に警察が閲覧できるようにしている自治体もあるが、どのように考えるか。

・警察が行っている認知機能検査の結果を地元自治体に提供する事例もある。
本人、家族の同意を前提に警察と自治体が相互に情報共有することで認知症患者やその家族に必要な支援が行き届くと考えるが、どうか。

●GPSの活用

・市町村の3割がGPSなど徘徊探知システムを活用しているが、どうか。

・GPSの無料貸し出しを行って成果を上げている自治体もあるが、検討してはどうか。

●事故を起こした時の損害賠償保険

・認知症の方が起こした事故の損害賠償保険について、保険料を全額公費負担している自治体があるが、検討してはどうか。

・無料の保険加入を呼びかけることで、認知症診断の促進や認知症患者の把握に繋げられないか。

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さらなる調査のためのリンク集
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行方不明を防ぐ・見つける市区町村・地域による取組事例
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/gyousei/th28_yukuefumei_torikumijirei.pdf

認知症による徘徊―その原因と対応方法
https://kaigo.homes.co.jp/manual/dementia/symptom/haikai/

認知症の人の行方不明や事故等の未然防止のための見守り体制構築に関する調査研究事業報告書
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center1/303/th29_mimarityosa_doc.pdf

身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000052978.html

認知症施策における官民連携の好事例(日本総研)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/20190410_kii_3.pdf

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