<概要>
●教育ビッグデータは、学習する子どもたちの学習履歴や行動履歴などを示すデータ
●活用することで個々に応じた教育や教え方の改善などが可能
●長野県高森町と岡山大学、岐阜市とベネッセなどの検証事業で子どもの成績や学習意欲向上に成果
●文部科学省では教育ビッグデータ活用のための中長期的な課題について議論。自治体間や企業との連携とそのためのガイドライン、情報の取り扱い、ICT環境の整備などが課題
●埼玉県を中心とした自治体間連携の取り組みもすでに始まっている
<チェックポイント>
●自治体における教育データの現在の活用状況
●教育におけるデータ活用や根拠に基づいた教育の必要性
●教育ビッグデータの活用に向けたICT環境の整備とそのための課題
●他の自治体や企業、研究開発機関などとの連携体制について
<掲載事例>
●埼玉県
●長野県高森町と岡山大学、岐阜県岐阜市とベネッセ
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教育ビッグデータとその活用方法
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・教育ビッグデータは、学習する子どもたちの学習履歴(どんな問題を解いたか、正解・不正解)や行動履歴(学習時間の長さ、学習する時間帯)などを示すデータ。
・データを活用することで、学習履歴と成績との関係、得意・不得意分野、それに基づいてどのような問題を重点的に復習しなければならないのか、などを子どもに応じて把握し、練習問題を提案することが可能。
・教師も間違えた箇所について重点的にアドバイスしたり、苦手を克服するときに励ましたりすることができるようになるため、子どもと効果的に接することが可能。また、教師ごとの教え方の傾向とその効果も分析できる。
https://career-ed-lab.mycampus.jp/career-column/1212/
・子どもに、タブレットを使って、複数のパターンの教え方で問題の解き方を教え、どのパターンの教え方を使った子どもは理解が早いかや、子どもの特性によって教え方と理解の早さを分析することなどで効果的な学習方法を提案できる。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1818
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活用事例と実際の効果
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●長野県高森町と岡山大学の事例
・岡山大学は2016年度に長野県高森町と共同で教育ビッグデータの活用について検証事業を実施。
・岡山大学の寺澤教授は何十万という学習データを収集する技術を確立し、解析することで、子ども一人ひとりに対して、効果的な学習方法を提案(マイクロステップ・スケジューリング)
・学習するほど成績が上がっていくグラフを表示し、教師と保護者が指導に生かすことで、学習意欲がとても低かった子どもたちの意欲が劇的に向上。
・また、マイクロステップ・スケジューリングの検証では、2秒に満たない学習で語彙力は確実に伸びていく、同じ英単語は1日に5 回を超えて反復しても実力には効果を持たないなど、新たな事実の発見。
https://resemom.jp/article/2018/09/28/46970.html
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press30/press-180927-11.pdf
●岐阜市とベネッセの事例
・岐阜市とベネッセの共同研究では、デジタル教材の利用から得られる子どもや学級・学校単位のデータを全国の数値と比較して、学習上の課題を分析し、教員の指導改善に役立てる。
・以下の3つの取り組み
1. 1人1台の専用タブレットで、学校の進度に合った切れ目のない学習教材を提供(前後の学習も可)
2. 教員に分析結果を提供し、子どもを褒めたり、弱点指導につなげる
3. 学習結果を見える化して子ども自身が自分の努力や成長を確認できる
・その結果、子どもの学習量、学習の質、自己効力感が増加
https://berd.benesse.jp/special/bigdata/about_gifupj.php
https://berd.benesse.jp/up_images/textarea/bigdata/20181112_1.pdf
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教育ビッグデータ活用のための課題
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・文部科学省では教育ビッグデータ活用のための中長期的な課題について議論。
・学校・自治体と企業・研究機関が連携した研究開発やデータ利活用についての自治体間連携の推進が必要。
・教育委員会や学校が、企業・他の自治体・学校・研究開発機関とデータの共有や連携を行う際の契約モデルやガイドライン、
教育ビッグデータと定性的な情報の効果的な組み合わせ方法、ビッグデータ収集や活用の前提となるICT環境の整備などが今後の課題。
・高森町と岡山大学、岐阜市とベネッセが行っているような、学習データ等を活用した学習状況の「見える化」等による個に応じた指導(アダプティブ・ラーニング)の推進は、すぐにでも着手すべき課題として挙げられている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/002/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/06/20/1406021_18.pdf
・すでにICT環境導入に取り組んでいる自治体にも人員や予算など様々な課題。
https://ictmayors.jp/files/wagamachi161209.pdf
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自治体間連携の事例
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・埼玉県では平成27年4月から、独自の「埼玉県学力・学習状況調査」を実施。
・同一の子どもの状況を継続的に把握することで、子どもの学習上の変化を把握し、子供たち一人一人の力を伸ばす。
・埼玉県の学力・学習状況調査に関心のある他自治体や企業などによるコンソーシアムを平成29年12月に立ち上げ。
・参加自治体・企業等は、福島県、福島県郡山市、福島県西会津市、広島県、広島県福山市、島根県雲南市の各教育委員会、野村総合研究所、日本財団、理化学研究所など。
・会議では、埼玉県学力・学習状況調査の共同実施等の検討、調査結果を活用した学力向上策の意見交換、調査結果の共同分析などを行う。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/2017/1215-06.html
https://www.businessinsider.jp/post-181590
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チェックポイント詳細
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●自治体における教育データの現在の活用状況について
・文部科学省や自治体独自の学力学習状況調査の結果をどのように分析し、どのように活用しているのか。
・教育におけるデータ活用や根拠に基づいた教育の必要性について、どのように考えているか。
・教育ビッグデータの活用まで一足飛びに行わないまでも、埼玉県の取り組みのように学力学習状況調査の結果を個々の子ども・学級単位などで分析・追跡することで、
学力の変化の把握、子どもに応じた学習、教員の得意・不得意の把握と改善などに活用することが可能ではないか。
●教育ビッグデータ活用に向けた環境整備
・今後、教育ビッグデータの活用が進む可能性が高い。そのために自治体が今後、取り組むべきこととして、ICT環境の整備が不可欠。
所管しているすべての公立学校にICT環境を整備するためには、どの程度の予算が必要か。
・また、通信環境を整備し、情報機器を導入しただけでは、うまく機能しない。
指導する教員の技能向上や教員をサポートする人材の配置など、ICT環境を学校に導入する際の予算以外の課題とその解決策についてどう考えるか。
●他の自治体等との連携について
・教育ビッグデータの活用には他の自治体や企業、研究開発機関などとの連携が不可欠。
これまでに、他の自治体や企業、研究開発機関と協働して行った取り組みの実績はあるか。
・そういった経験がない場合は、協働にあたって、どのような課題が想定され、それをどのように解決していくのか。
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さらなる調査のためのリンク集
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教育ビッグデータではじまる エビデンスベースの教育
https://edu.okayama-u.ac.jp/~shinri/terasawa/files/e-learningAward2015.pdf
教育データ分析の現状と課題
http://www.media.hosei.ac.jp/wp35/wp-content/uploads/2017/03/symp2017_ogata.pdf
教育ビッグデータを用いた教育・学習支援のためのクラウド情報基盤
http://eds.let.media.kyoto-u.ac.jp/
「埼玉県学力・学習状況調査」を軸にした学力向上のためのコンソーシアム 配布資料
https://www.pref.saitama.lg.jp/f2214/gakutyou/documents/siryou1.pdf
https://www.pref.saitama.lg.jp/f2214/gakutyou/documents/300215_consortium2_ho.pdf
https://www.pref.saitama.lg.jp/f2214/gakutyou/documents/300713_g_consortium3_ho.pdf